第十二話 一閃
「レイ……」
ペーパーが言う。
血を流しながら。
「他のみんなは?」
レイは答えられなかった。
逃げた。
自分だけ。
マッドだけ連れて。
沈黙する。
だが。
ペーパーは責めなかった。
「レイたちは逃げろ」
ペーパーが前へ出る。
「お前の相手は俺たちだ!!」
反乱軍たちも武器を構える。
その姿を見た瞬間。
レイの脳裏に母の姿が浮かぶ。
「娘には手を出さないで」
「私はどうなってもいいから」
胸が痛む。
まただ。
また誰かが自分を守ろうとしている。
あの時は何もできなかった。
力がなかった。
でも今は。
力がある。
なのに。
レイは右手を見る。
震えていた。
「うおおおおおおお!!」
反乱軍が突撃する。
ゼノは笑った。
「つまんねぇんだよ!!」
鞭が振られる。
ドォン!!
轟音。
壁が吹き飛ぶ。
反乱軍が消し飛ぶ。
悲鳴。
絶叫。
地獄だった。
ペーパーが紙を何重にも重ねる。
「止まれぇぇぇ!!」
だが。
バキバキバキッ!!
紙が破れる。
ペーパーが吹き飛ばされた。
壁へ叩きつけられる。
「ぐぁっ……!」
反乱軍も次々倒れる。
誰も止められない。
能力ランキング51位。
それが現実だった。
ゼノが笑う。
「これで終わりか?」
「もっと楽しませてくれると思ったんだけどなぁ」
倒れた反乱軍を見下ろす。
そして。
一人の男の頭を踏み潰した。
グシャッ。
「あ……」
マッドの顔が青ざめる。
ゼノは楽しそうだった。
まるで虫でも踏み潰したかのように。
「弱すぎる」
「こんなんで王を倒そうとしてたのか?」
誰も反論できない。
事実だったからだ。
そして。
ゼノの視線が止まる。
レイだった。
「お前だけ少し面白そうだ」
ゼノの鞭がうねる。
無数の棘が生える。
「死ね」
ゼノが鞭を振る。
一瞬で距離を詰めてくる。
速い。
マッドが叫ぶ。
「レイさん!!」
レイは動かなかった。
殺される。
力を得ても何も変わらない。
あの頃のまま。
そのとき、脳内に声が聞こえる。
「俺を殺したんだ」
「今更あんな奴におびえてんじゃねぇ」
ブラッド?
そうだ、私は22位を殺した。
今更怖いことなんてあるか。
覚悟を決めろ!
右手を上げる。
ゼノへ向ける。
「ん?」
ゼノが首を傾げる。
次の瞬間。
光が走った。
ボシュ。
あまりにも速かった。
誰も見えなかった。
ゼノの鞭。
腕。
胸。
全てを貫く。
ゼノが止まる。
「あ?」
自分の胸を見る。
心臓があった場所。
そこに穴が開いていた。
血が流れる。
「か……は……」
ゼノが膝をつく。
ゼノは理解できなかった。
能力ランキング51位。
ゼノ。
その怪物が。
ゆっくりと倒れた。
ドサリ。
静寂。
誰も動かない。
誰も理解できない。
何が起きたのか。
ペーパーも。
マッドも。
ただ呆然とレイを見る。
そして。
レイだけが知っていた。
自分の能力が。
また怪物を殺したことを。




