第十一話 怪物
レイの息が上がる。
心臓が嫌な音を立てていた。
目の前の男。
能力ランキング51位。
ゼノ。
その姿を見た瞬間。
レイは思い出していた。
ブラッドと初めて会った日。
窓から外を覗き。
目が合った瞬間。
全身が凍り付いたあの感覚を。
復讐を決意した後は違った。
怒りが恐怖を上回っていた。
だが。
今は違う。
冷静だからこそ分かる。
こいつは怪物だ。
レイはマッドの腕を掴む。
「行くよ!!」
強引に引っ張る。
「レイさん!?」
マッドが驚く。
レイは振り返らない。
「だめ!!」
「勝てる相手じゃない!!」
地下牢を走る。
全力で。
レイは痛感していた。
能力ランキングを壊す。
簡単に言った。
だがそれは。
こういう怪物たちを相手にするということだった。
後ろから反乱軍の叫び声が聞こえる。
「うおおおお!!」
「殺せぇぇぇ!!」
ゼノへ向かっていく声。
だが。
次の瞬間。
ドォン!!
爆音が響いた。
それだけだった。
叫び声は全て消えた。
レイは振り返らない。
振り返れなかった。
◇
ペーパーはぺブルと対峙していた。
紙が舞う。
小石が飛ぶ。
王の間に無数の音が響く。
紙。
小石。
一見すれば弱そうな能力。
だが違う。
どちらも人を殺せる。
一撃で。
ペーパーは瞬き一つしなかった。
ぺブルの攻撃を読み。
防ぐ。
ぺブルが口を開いた。
「お前」
「ランキングに入っているな?」
ペーパーが鼻を鳴らす。
「あぁ」
「88位だ」
ぺブルは少し驚いたようだった。
「そうか」
「なら何故反乱など起こす?」
紙と小石がぶつかる。
火花が散る。
ぺブルは続けた。
「ランキングに入っていれば」
「こんなことをする必要はないだろう」
本気で理解できないようだった。
ペーパーは笑う。
怒りを含んだ笑みだった。
「俺がランキングに入ってても」
「俺の家族や友人が入ってるわけじゃねぇ」
ぺブルの眉が動く。
「俺の大切な人たちが虐げられる」
「それが許せねぇんだよ!!」
紙の刃が飛ぶ。
ぺブルへ迫る。
だが。
ぺブルは冷静だった。
「つまらんな」
その一言。
次の瞬間。
大量の小石が床へ向かった。
バシュッ!!
床が砕ける。
王の間全体が揺れた。
反乱軍が叫ぶ。
「なっ!?」
「まずい!!」
床が崩れていく。
ペーパーが目を見開く。
「何を……」
ぺブルが笑った。
「地下のゼノにくれてやる」
床が抜けた。
ペーパーたちの体が落下する。
暗闇へ。
地下牢へ。
◇
レイとマッドは走っていた。
逃げる。
ただ逃げる。
だが。
突然。
前の天井が砕けた。
轟音。
土煙。
二人が立ち止まる。
上から人影が降ってくる。
ドォォォン!!
地面に叩きつけられる。
反乱軍たちだった。
ペーパーもいた。
顔中血だらけだった。
地下牢の奥。
ゼノが笑う。
「ぺブルめ、王だからってこき使いやがって!」
ペーパーの顔が青ざめる。
レイも理解した。
最悪だ。
王殺害もきっと失敗した。
51位。
ゼノがゆっくり鞭を肩に担ぐ。
「反乱はもう終わりかぁ?」
不気味に笑っていた。




