第127話 第3位離脱
「かはっ……」
苦痛の声が響いた。
だが。
その声の主はクロノではない。
異形だった。
レイが目を見開く。
異形と入れ替えられた。
そう思った。
だが。
クロエの表情は違った。
悔しそうではない。
むしろ。
少しだけ笑っている。
「致命傷は与えられなかったけど」
肩で息をしながら言う。
そして。
クロノがいた場所を見る。
「ダメージは与えたわ」
その言葉に嘘はなかった。
クロエは確信していた。
手応えがあった。
能力ランキング第19位。
クロエ。
能力『影喰い』
その覚醒した一撃は。
確かに。
世界トップ3へ届いた。
◇
空中都市。
最上部の一室。
「これは……痛いのぉ」
クロノが苦笑する。
左腹部。
そこには大きな穴が開いていた。
血が流れている。
異形達が慌てて集まり。
治療を始める。
クロノは天井を見る。
そして思い返す。
クロエの攻撃。
あの瞬間。
注意はむしろスライムへ向いていた。
粘液。
執拗な攻撃。
しつこい足止め。
それを受ければ。
クロエの攻撃が届く。
だから。
気付けなかった。
もう一人に。
マッド。
能力『泥』
足元が歪んだ。
ほんの一瞬。
バランスを崩した。
たったそれだけ。
だがその一瞬が。
このダメージを与えた。
クロノが目を閉じる。
「やられたのぉ」
認める。
そして呟く。
「ワシはしばらく出れんな」
異形達はまだ戦える。
空中都市も健在。
だが。
クロノ自身は治療に入る。
能力ランキング第3位。
クロノ。
戦線離脱。
◇
中衛。
空気が変わっていた。
ガイアの死。
味方を襲った絶望。
だが。
クロノの撤退。
それが希望になった。
兵士達が叫ぶ。
異形を倒す。
押し返す。
崩れかけていた戦線は。
再び均衡状態へ戻っていた。
クロエが振り返る。
そして。
マッドを見る。
「ありがとう、マッド」
突然の言葉。
マッドが固まる。
「え?」
耳まで赤くなる。
クロエが笑う。
「あなたが足場を崩してくれなかったら」
「当たらなかったわ」
マッドの顔が真っ赤になる。
「い、いや!」
「僕は別に!」
慌てる。
レイが呆れた顔をする。
「いつ惚れたのよ」
「なっ!?」
マッドが飛び上がる。
「何言ってるんですか!?」
両手を振る。
必死だった。
だが。
レイは笑う。
本当にすごかった。
あの状況で。
冷静に能力を使う。
普通なら無理だ。
クロノ。
能力ランキング第3位。
そんな怪物を相手に。
最適な一手を選んだ。
マッドはもう。
能力ランキングの中位レベルなのかもしれない。
レイはそう思った。
◇
前線後方。
ボルトとブリザ。
二人の戦いは続いていた。
お互い満身創痍。
ブリザが舞う。
釣られて鎖が舞う。
美しい。
だが。
恐ろしい。
一本。
二本。
十本。
数えきれない。
ボルトは避ける。
だが。
全ては避けられない。
カキン。
また身体が凍る。
「ふしゅー」
「しんどいな」
だが。
ブリザも疲れていた。
すぐに氷が溶ける。
ボルトが動き出す。
そして突撃。
ブリザが飛び退く。
次の瞬間。
バゴォォォン!!
拳が空を砕く。
空気が爆発する。
衝撃だけで地面が抉れる。
ブリザの背中に冷や汗が流れる。
一発。
たった一発。
当たれば終わる。
「あなた」
ブリザが笑う。
「第39位なんて嘘ね」
本気だった。
称賛だった。
ボルトは黙る。
そして構える。
均衡。
互角。
どちらが勝ってもおかしくない。
だが。
その均衡を。
崩そうとする者がいた。
遠く。
戦場の後方。
一人の女が二人を見ている。
能力ランキング第34位。
ラギ。
能力。
『視界破壊』
ラギが微笑む。
「ファルス様のために」
静かに。
能力を発動した。




