第122話 大戦争開戦
大戦争当日。
レイ達はそれぞれ持ち場についていた。
空は曇っている。
まるで。
これから起きる戦いを象徴するように。
最前線。
そこには。
ディオン。
ガイア。
ボルト。
国の主力が並ぶ。
その後ろ。
中衛。
クロエ。
レイ。
マッド。
スライム。
そして最後列。
フォーサ。
ミント。
支援役の二人が立っていた。
レイは周囲を見渡す。
そして。
思わず言葉を失った。
「ねぇ……」
クロエを見る。
「この兵士達……」
クロエも苦笑する。
目の前に並ぶ兵士達。
全員が異常だった。
身体が大きい。
目が鋭い。
立っているだけで圧がある。
兵士というより。
能力者に近い。
クロエが答える。
「えぇ」
少し呆れたように。
「どうやらこの国の兵士は全員」
「地獄の特訓を受けているみたいね」
レイが固まる。
あの特訓。
ディオン達の。
地獄。
それを毎日。
兵士全員が。
だから数が少ない。
逃げ出した者。
死んだ者。
きっと山ほどいた。
その結果が。
今ここにいる千人だった。
そして。
全員が空を見る。
遠く。
巨大な影。
見えてきた。
『空中都市』
能力ランキング第3位。
クロノの城。
さらに。
前方。
七人。
ランキング者達。
敵主力。
レイが聞く。
「兵士は?」
クロエが答える。
「空中都市から出てくるわよ」
少し目を細める。
「異形がね」
レイは思い出す。
第85位の国。
空中都市から現れた怪物達。
あの悪夢。
数では。
圧倒的に不利だった。
レイは拳を握る。
覚悟を決める。
そして。
両軍の境目に。
二人が進み出た。
能力ランキング第11位。
ディオン。
能力ランキング第16位。
ヴェルナ。
静寂。
誰も喋らない。
戦いの直前。
最も静かな時間。
ヴェルナが口を開く。
「クロエは死んだ?」
ディオンは首を振った。
ヴェルナが少し残念そうに笑う。
「そう……」
そして。
真っ直ぐディオンを見る。
「覚悟はできてるのね?」
ディオンが笑う。
「お前達こそ」
「分かってるだろうな?」
ヴェルナが黙る。
次の瞬間。
ディオンが叫んだ。
「俺達に戦いを挑むということが!!」
「死を意味することを!!!!」
大地が揺れた。
「うおおおおおおおおおお!!!!」
兵士たちの歓声。
咆哮。
怒号。
全てが混ざる。
鼓膜が震える。
レイが思わず振り返る。
クロエもマッドも同じだった。
そして。
三人は絶句する。
そこにいたのは。
兵士ではない。
猛獣。
怪物。
恐竜。
そんな言葉の方が似合う。
千人しかいない。
これが。
能力ランキング第2位。
ドルガンの国。
そして。
これが。
ディオンへの絶対的信頼だった。
クロエが思わず呟く。
「なによこれ……」
さすがのクロエも焦っていた。
ヴェルナは笑う。
そして。
静かに言った。
「私の直感が言ってるわ」
「この戦いは」
「死者がたくさん出るって」
そう言って。
後ろへ下がっていく。
ディオンがヴェルナの背中に一言だけ残した。
「ヴェルナ、お前もその一人じゃないといいな」
ヴェルナは振り返らない。
ただ。
片手を上げた。
忠告ありがとう。
そういう意味だった。
そして。
元の位置へ戻る。
ディオンも自軍へ戻る。
そして。
ヴェルナが叫んだ。
「お前達に最大の敬意を払うとともに!!」
「その罪に死を与える!!」
次の瞬間。
七人のランキング者が動いた。
同時に。
空中都市の下部が開く。
黒い影。
一つ。
二つ。
十。
百。
千。
無数。
異形。
怪物。
化け物。
それらが雨のように降り始める。
レイの瞳が揺れる。
その数は。
遠くから見れば。
まるで。
無数の蟻だった。
大戦争、開戦。




