第119話 覚醒への道
クロエはガイアと向き合っていた。
能力ランキング第28位。
ガイア。
能力『爆裂波動』
殴った対象を爆発させる能力。
ガイアが腕を鳴らす。
そして。
クロエを睨みつけた。
「俺はディバイドが嫌いだ!!」
「特訓で死んだなら!!」
「ディオンも何も言わねぇだろうな!!」
堂々とした殺害宣言だった。
クロエは笑う。
余裕そうに。
「あら」
「奇遇ね」
そして。
影が揺れる。
「私も全く同じことを考えていたわ」
その瞬間。
ガイアの影が動く。
『影喰い』
クロエの能力。
だが。
ガイアは笑った。
「殺す」
拳が落ちる。
クロエの顔色が変わる。
急いで影へ潜る。
ドゴォォォォン!!
地面が爆発した。
衝撃が周囲へ広がる。
土が吹き飛ぶ。
木々が折れる。
クロエが離れた場所の影から現れる。
汗が流れる。
ガイアが呟く。
「さすがは第19位か……」
クロエは黙る。
そして。
低く呟いた。
「あなた本当に第28位?」
ライゼンを思い出す。
第15位。
怪物だった。
だが。
目の前の男もおかしい。
威力。
速度。
そして。
何より。
硬い。
先ほど。
クロエは影でガイアの腕を折ろうとした。
だが。
全く折れなかった。
普通なら砕ける。
ライゼンですら避ける攻撃。
なのに。
ガイアは避けようともしない。
ガイアが笑う。
「俺たちはランキングに不満を持っている」
クロエが黙る。
ガイアは続けた。
「更新頻度が少ねぇからだ」
拳を握る。
「俺たちは毎日」
「地獄の特訓をしている」
目が本気だった。
「今ランキングを更新すれば」
「俺たちはお前より上になれる」
傲慢ではない。
事実だった。
クロエは理解している。
この国は異常だ。
ランキングに入ろうが。
地獄の特訓を続けている。
だから強い。
だからドルガンの国なのだ。
そして今。
自分もその地獄へ足を踏み入れる。
クロエが笑う。
「来なさい」
ガイアも笑う。
二人は再びぶつかった。
それは特訓ではない。
十日間の殺し合いだった。
◇
一方。
レイはディオンと向き合っていた。
ディオンが腕を組む。
「お前の弱点は能力の出所だ」
レイは頷く。
分かっている。
光線は右手からしか出ない。
威力。
速度。
それ自体は文句がない。
だが。
ランキング上位者には当たらない。
狙いが読まれる。
ディオンが続けた。
「だから」
レイを見る。
「お前を覚醒させる」
「え?」
レイが首を傾げる。
ディオンが笑う。
「右手で発動できるなら」
「左手でもできるさ」
レイは固まる。
そんな発想はなかった。
ディオンは離れる。
そして。
静かに言った。
「先に言っておく」
真剣な目。
「俺はレイを殺さない」
「王の命令だからな」
レイが頷く。
「だが」
ディオンが笑う。
「死なない程度に殺す」
「え?」
その瞬間。
ディオンが消えた。
レイの視界から。
完全に。
「え?」
次の瞬間。
「がはっ!!」
首を掴まれていた。
呼吸が止まる。
ディオンの手。
いつの間に。
全く見えなかった。
ディオンが首を締め上げる。
「ほら」
平然と言う。
「死ぬぞ?」
レイの顔が青くなる。
右手を動かす。
ディオンの足へ向ける。
これなら殺さない。
光線を放つ。
バシュッ!
光線がディオンの太ももを貫く。
穴が開く。
だが。
ディオンの手は緩まない。
全く。
変わらない。
「な……」
レイの意識が落ちる。
◇
バシャァッ!!
冷水が顔にかかる。
「かはっ!!」
レイが飛び起きる。
目の前にはディオン。
バケツを持っている。
「もう一回だ」
レイが息を荒げる。
「はぁ……」
「はぁ……」
身体が震える。
そして。
ディオンの左足を見る。
光線で貫いた場所。
確かに穴が開いている。
だが。
血が出ていない。
「なんで……?」
ディオンが答える。
「この程度は」
表情一つ変えない。
「かすり傷にもならん」
レイが目を見開く。
傷が塞がっていく。
筋肉が動く。
皮膚が閉じる。
まるで化け物だった。
能力ランキング第11位。
ディオン。
最強の無能力者。
能力は持たない。
だが。
その肉体は。
能力者すら超えていた。
ディオンが再び構える。
「さぁ」
「次だ」
レイの地獄も。
始まった。




