第115話 最悪の出会い
アベル達グリッチは。
しばらく身を潜めていた。
別空間。
誰にも見つからない場所。
クリアが寝転びながら言う。
「だいぶ影薄くなったよなー」
ポールも笑う。
「そりゃな」
「今はノーランク一色だ」
その通りだった。
ノーランクの城災。
世界中の注目はそこへ向いている。
アベルは苛立つ。
本来なら。
世界を混乱させるのは自分達だった。
ランキング者を集め。
まとめて殺す。
その計画が。
全部。
第7位に持っていかれた。
アベルが拳を握る。
こんなはずじゃなかった。
ポールが言う。
「なぁ」
アベルを見る。
「いっそもう少し上を狙わねぇか?」
ネロも頷く。
「ここで巻き返すにはそれしかない」
アベルは黙る。
本音を言えば。
まだ隠れていたかった。
だが。
皆限界だった。
何もしない時間が長すぎる。
アベルはため息を吐いた。
「分かった」
そして。
能力を発動する。
ブワァン
空間が裂けた。
◇
空。
雲の上。
一枚の絨毯が飛んでいる。
その上で。
男が気持ち良さそうに寝ていた。
能力ランキング第38位。
ハウル。
能力『物体移動』
物を自在に動かす能力。
絨毯もその一つだった。
ハウルは寝返りを打つ。
幸せそうだった。
地面。
ブワァン
空間が裂ける。
アベル。
ポール。
ネロ。
クリア。
四人が現れる。
クリアが上を見る。
「おいおい」
笑う。
「空じゃねぇか」
ポールも笑った。
「空だからいいんだろ」
ネロが冷たく言う。
「早く終わらせるぞ」
能力発動。
『音支配』
周囲の音が消える。
風の音も。
空気の音も。
全て消えた。
そして。
ポールが拳を合わせる。
火花が飛ぶ。
『超爆撃』
空中に大量のミサイルが現れる。
音はない。
完全な奇襲。
ミサイルはハウルへ向かう。
だが。
次の瞬間。
「なに?」
ポールが固まる。
ミサイルが曲がった。
全て。
別方向へ飛ぶ。
そして。
遥か下へ落下した。
「なんだ?」
ハウルが目を開ける。
体を起こす。
下を覗く。
その瞬間。
ブワァン
上空に空間が裂けた。
クリアが飛び出す。
剣を突き出す。
「かはっ」
剣が胸を貫いた。
能力ランキング第38位。
ハウル。
死亡。
一瞬だった。
◇
四人は死体を見下ろす。
能力を解除する。
ポールが笑う。
「やっぱ俺達つえぇじゃん」
ネロも頷く。
「クリアの能力が割れていないのが大きいな」
アベルも少し笑った。
まだやれる。
グリッチは終わっていない。
その時だった。
「あれ?」
声が聞こえた。
全員が振り返る。
そこにいたのは。
一人の男だった。
青いジーパン。
白いTシャツ。
買い物袋。
四十代くらい。
どこにでもいるおじさん。
ポールが舌打ちする。
「見られたな」
クリアが笑う。
「殺す?」
透明になる。
ネロも能力を使おうとする。
だが。
アベルだけは動かなかった。
違和感。
圧倒的な違和感。
何かがおかしい。
普通の人間なら。
こんな状況を見たら。
逃げる。
四人の男。
死体。
声なんてかけない。
だが。
この男は違った。
まるで。
散歩中に知り合いを見つけたみたいな顔をしている。
アベルの背中を冷たい汗が流れる。
そして。
アベルはすぐに気づく。
最悪な出会いをしてしまったことに。




