第114話 戦争準備
ディオンは幹部とレイ達を集めた。
大広間。
重い空気が流れている。
先ほどの会談。
ヴェルナの宣戦布告。
全てを説明し終えた後だった。
沈黙。
最初に口を開いたのはレイだった。
「そんなことなら」
「出て行った方が良くない?」
当然の意見だった。
ノーランク。
クロエ。
その二人が原因で戦争になる。
ならば。
出て行けばいい。
だが。
「だめだ」
ディオンが即答する。
そして。
レイを真っ直ぐ見る。
「レイ」
「お前だけは絶対にだめだ」
「王の命令だ」
それだけだった。
レイは納得できない。
当然だった。
「じゃあ」
少し苛立ちながら聞く。
「その王様はいつ帰ってくるの?」
ディオンは黙る。
そして。
小さく首を振った。
分からない。
それが答えだった。
レイは舌打ちしそうになる。
その時。
クロエが口を開く。
「私は出て行かないわよ」
全員が見る。
ガイアが睨む。
クロエは気にしない。
そして続ける。
「だって」
肩をすくめる。
「この国にいるのが一番安全だもの」
その言葉に。
ボルトが苦笑する。
確かにそうだった。
能力ランキング第2位。
ドルガンの国。
幹部たちはどう見ても強者。
だが、クロエの表情は。
少しだけ暗い。
クロエが小さく呟く。
「かなり分が悪いけどね」
弱気な発言だった。
珍しい。
マッドが言う。
「僕には」
「このメンバーなら勝てるように思えるんですけど」
ガイア。
ボルト。
スライム。
ディオン。
さらにクロエ。
十分強い。
だが。
クロエは首を振った。
「甘いわ」
静かな声。
そして。
ヴェルナを思い浮かべる。
「第16位ヴェルナは本当に厄介なのよ」
フォーサが首を傾げる。
「そんなに?」
クロエは頷く。
「彼女の能力は」
「『直感』」
レイ達が固まる。
直感?
それだけ?
マッドも。
ミントも。
同じ顔をした。
フォーサが思わず呟く。
「弱そうだね」
だが。
ディオンが口を開いた。
「奴の直感は」
腕を組む。
「お前達が思っているものとは違う」
全員が見る。
ディオンは続ける。
「罠はもちろん」
「こちらの攻撃先」
「行動」
「全部読んでくる」
マッドの顔色が変わる。
ディオンが言い切る。
「もはや未来予知に近い」
沈黙。
フォーサも黙る。
レイも理解した。
なるほど。
だから第16位。
だから女王。
だからクロエより上。
クロエが頷く。
「それだけじゃない」
今度は別の名前を出した。
「第12位フィオナがいるでしょ?」
その瞬間。
ミントが立ち上がる。
「フィオナ!?」
全員が驚く。
ミント自身も驚く。
「あ……」
慌てて座る。
「ご、ごめんなさい」
レイが聞く。
「知ってるの?」
ミントが頷く。
そして。
真面目な顔で言った。
「回復能力者としては世界最高峰」
全員が黙る。
ミントは続ける。
「彼女の右に出る者はいない」
そして。
決定的な言葉を口にした。
「死ぬ以外なら」
「即治せる」
レイ達が固まる。
は?
それしか感想が出ない。
どんな怪我でも。
即。
それはもう。
反則だった。
ディオンが口を開く。
「だが」
「奴らだけなら何とかなる」
ガイアが笑う。
ボルトも頷く。
スライムも余裕そうだった。
ディオンは続ける。
「敵の攻撃手段が少ないからな」
確かに。
ヴェルナは補助型。
フィオナも回復型。
ディオンの表情が険しくなる。
「恐らくだが」
「他のランキング者も攻めてくる」
当たり前だった。
ノーランク。
ディバイド。
今や世界中の敵。
ヴェルナだけでは終わらない。
もっと強い敵。
もっと危険な敵。
必ず集まる。
レイは拳を握る。
世界中が敵。
そんな状況だった。
ディオンが立ち上がる。
椅子が音を立てる。
全員の視線が集まる。
ディオンは言った。
「戦うなら」
「残り少ないが」
「全員鍛えるとしよう」
マッドが顔を上げる。
フォーサも。
ミントも。
レイも。
ディオンは笑った。
自信に満ちた笑み。
無能力でランキング第11位。
怪物達の中に立つ男。
「お前達を強くしてやる」
拳を握る。
そして。
言い切った。
「必ず勝つぞ」
その目は強かった。
揺るがなかった。
世界が相手でも。
負ける気などない。
レイ達は顔を見合わせる。
そして。
決心した。
戦争への参加を。
生き残るために強くなることを。
こうして。
戦争まで残り十日。
最後の準備が始まった。




