第112話 最強の国
レイは一人だった。
部屋の窓から外を見ている。
遠くに見える城。
広い空。
だが。
心は全く落ち着かなかった。
カイ。
兄。
十二年前に離れ離れになった存在。
正直。
顔もあまり覚えていない。
声も。
姿も。
記憶は曖昧だった。
それでも。
一つだけ覚えていることがある。
誰よりも優しかった。
それだけだった。
レイは目を閉じる。
幼い頃。
一緒に遊んだ記憶。
能力を見せてくれた記憶。
笑っていた記憶。
断片的な思い出だけが浮かぶ。
だが。
今の兄は。
国を滅ぼした。
大勢を殺した。
強者が弱者を蹂躙した。
それは。
レイが最も許せない行為だった。
拳を握る。
すると。
クロエの言葉が蘇る。
「また例外?」
「笑わせてくれるわね」
レイは顔をしかめる。
例外。
兄だから。
家族だから。
許すのか。
違う。
誰であろうと。
やったことは間違っている。
レイは強く拳を握った。
「絶対に……違う」
自分に言い聞かせるように呟いた。
◇
一方。
大広間。
ディオン。
クロエ。
マッド。
ミント。
フォーサ。
そして三人の幹部が集まっていた。
険悪な空気だった。
筋骨隆々の男が机を叩く。
「クロエだけでも匿ってるのがバレればまずいのによ!!」
「ノーランクまで匿ったとなりゃ!!」
声を荒げる。
「俺たちは世界中から敵視されちまうんだぞ!!」
クロエはため息を吐く。
そして冷静に言った。
「あなた」
男を見る。
「第28位でしょ?」
男の眉が動く。
クロエは続ける。
「そんなにビビって恥ずかしくないの?」
沈黙。
そして。
「なんだとぉ!?」
男が立ち上がる。
椅子が吹き飛ぶ。
マッドが慌てて間に入った。
「待ってください!!」
全員がマッドを見る。
マッドは男を指差した。
「あなた第28位なんですか!?」
空気が止まる。
クロエが額を押さえる。
そこじゃない。
だが。
マッドは本気だった。
第28位。
ギルより上。
それだけで十分衝撃だった。
男は胸を張る。
「そうだ」
誇らしげに言う。
「俺は能力ランキング第28位」
「ガイアだ!!」
「能力『爆裂波動』!!」
マッド達が驚く。
すると。
電気を纏う男が口を開く。
「ふしゅー」
いつもの変な息。
そして。
「俺は能力ランキング第39位」
「ボルト」
「能力『電磁支配』」
さらに。
最後の男が手を挙げる。
「僕はぁぁ」
相変わらず語尾がおかしい。
「能力ランキング第60位ぃぃ」
「スライムぅぅ」
「能力『粘液』ぃぃ」
マッド達は固まった。
全員ランキング者。
第11位、第28位、第39位、第60位。
強い。
ミントが呟く。
「すごい……」
フォーサも頷く。
「強そう……」
だが。
クロエは逆に首を傾げた。
不思議そうに。
「あなた達」
「もしかして」
少し間を置く。
「この国のこと知らないの?」
マッド達は顔を見合わせる。
そして。
全員首を振った。
クロエが深いため息を吐く。
「なるほどね」
納得したように言う。
そして。
とんでもない事実を口にした。
「ここは」
「第2位ドルガンの国よ」
沈黙。
マッド達が固まる。
「え……?」
マッドの口から間抜けな声が漏れた。
ドルガン。
能力ランキング第2位。
世界最強格。
最上位の中でも別格。
化け物。
その男の国。
マッドの額から汗が流れる。
ミントも青ざめる。
フォーサは言葉を失っていた。
とんでもない場所だった。
自分達は。
そんな国に来ていたのだ。
クロエが腕を組む。
「ようやく理解した?」
マッドたちはただ黙っていた。
ディオンが静かに窓の外を見る。
まだ帰ってこない王。
第2位ドルガン。
ノーランクの城災によって。
世界は大きく動き始めている。
だから。
王の帰還を。
ディオンはまだかと待っていた。
ディバイド。
グリッチ。
ノーランク。
最上位。
大きな戦いが。
確実に近づいていた。




