第110話 崩壊
「寿命か」
一人の老婆が静かに呟いた。
能力ランキング第13位。
イザベル。
能力『精神侵食』
精神へ干渉し。
洗脳する。
恐るべき能力。
レイ達は気付かぬまま操られた。
グリッチですら精神を削られた。
だが。
弱点は存在した。
精神を持たない相手。
そして。
超遠距離からの攻撃。
カイはそこを突いた。
国の周囲。
何千もの鉄壁。
圧倒的な物量。
圧倒的な射程。
イザベルは玉座へ座る。
逃げない。
戦わない。
ただ。
目を閉じた。
鉄壁が迫る。
轟音が響く。
そして。
全てが消えた。
◇
「どうにかしてくれぇぇぇぇぇ!!!」
王の叫びが響く。
能力ランキング第42位。
エア。
能力『大気圧縮』
空気を圧縮し。
一気に解放する。
その範囲は国全体に及ぶほどの威力。
鉄壁がわずかに止まる。
だが、吹き飛ばない。
また動き出す。
エアは何度も能力を使った。
何度も。
何度も。
何度も。
だが。
結果は同じだった。
威力が足りない。
鉄壁は迫る。
近づく。
近づく。
近づく。
「なぜだ!!」
エアが叫ぶ。
涙を流しながら。
「第7位!!」
「俺が!!」
「この国が何をしたって言うんだ!!」
誰も答えない。
国民たちは泣いている。
逃げ惑う。
叫ぶ。
だが。
意味はない。
エアは膝から崩れ落ちた。
「……こんなの理不尽だ」
その言葉だけを残し。
最期の時を待った。
◇
能力ランキング第8位。
ノクリアの国。
城の最上階。
ノクリアは窓の外を見ていた。
巨大な鉄壁。
周囲を埋め尽くしている。
静かに呟く。
「何故だ……第7位……」
理解できなかった。
カイ。
能力ランキング第7位。
最上位。
世界を守る側の人間。
そのはずだった。
だが。
今は。
壊している。
その時。
扉が開いた。
「ノクリア様!!」
一人の男が駆け込む。
能力ランキング第29位。
フウ。
能力『風神化』
風を纏う鬼へ変貌する能力。
ノクリアの国の二番手だった。
ノクリアは振り返る。
「フウか」
静かな声。
「ちょうど良かった」
鉄壁を指差す。
「あれに穴を開けられるか?」
フウは黙る。
しばらくして。
俯いた。
「数十枚なら可能です」
拳を握る。
悔しそうに。
「ですが……」
「さすがにあの枚数は……」
言葉が続かない。
ノクリアも黙る。
沈黙。
長い沈黙。
やがて。
目を閉じる。
そして。
ゆっくり開いた。
決断した顔だった。
「民を残して逃げることは」
「本来やってはならん」
フウが顔を上げる。
何か言おうとする。
だが。
ノクリアは続けた。
「だが」
拳を握る。
「今の私達に」
「ここで出来ることは何もない」
フウは俯く。
『風神化』
確かに強い。
自分は鬼になれば。
風に乗って鉄壁の高さを超えられる。
だが。
民にその風を当てると。
民は飛び越える前に死んでしまう。
ノクリアも同じだった。
自分一人なら壁を簡単に駆け上がれる。
だが。
民を担いで行った場合。
民がノクリアの速さに。
耐えきれない。
反作用で即潰れる。
ノクリアの速さは本人以外にとっては死の世界。
ノクリアがフウを見る。
真っ直ぐ。
真っ直ぐに。
そして言った。
「第7位を殺す」
「必ずな!!」
その顔には。
怒り。
憎しみ。
殺意。
全てが込められていた。
二人は鉄壁を越える。
国を捨て。
生き延びるために。
そして。
復讐するために。
その直後。
鉄壁が国を飲み込んだ。
ノクリアの国は。
消滅した。
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