第108話 安心
カイのいる国。
穏やかな風が吹いていた。
青空。
暖かい日差し。
一人の女性が木陰で涼んでいる。
能力ランキング第83位。
ブリーズ。
能力『小風』
小さな風を操る能力。
彼女は目を閉じながら言う。
「平和ねぇ」
そこへ声が飛んできた。
「相変わらず暇そうだな」
ブリーズが振り向く。
能力ランキング第80位。
シャイン。
能力『発光』
光を放つ能力。
ブリーズが笑う。
「いいじゃない」
「命の危機もだいぶ去ったことだし」
シャインも頷く。
ディバイド。
世界を騒がせた連中。
だが。
正体は暴かれた。
しかも。
能力ランキング第7位。
最高防御が守ってくれる。
世界でも最も安全な場所だった。
少なくとも。
皆はそう思っていた。
その時。
ドス。
ドス。
重い足音。
大柄な男が近づいてくる。
能力ランキング第56位。
バレル。
能力『火薬生成』
爆発を生む能力。
バレルが笑う。
「攻めてきたら俺がぶっ飛ばしてやるよ」
ブリーズが呆れる。
「そんなこと言いながら」
「結局亡命してるじゃない」
バレルが顔をしかめた。
「ちっ」
「うるせぇよ」
頭をかく。
「第70位台が死んだからな」
「ちょっと様子見だ」
完全な言い訳だった。
ブリーズとシャインが笑う。
緊張感はない。
誰もが安心していた。
第7位の国だから。
大丈夫だと。
信じていた。
◇
一方。
カイのいる国の外れにある村。
銀髪の青年が木の上から周囲を見回していた。
能力ランキング第76位。
スカイ。
能力『空中浮遊』
空へ浮ける能力。
彼は常に警戒していた。
ディバイドはまだ生きている。
油断はできない。
そう考えていた。
その時。
ポン。
肩を叩かれる。
スカイが飛び退く。
振り返る。
そこには。
一人の男。
能力ランキング第59位。
スエルテ。
ライゼンとアクアの息子。
無能力者。
さらに太っていた。
片手にはお菓子の袋。
口の周りには食べかす。
スカイが額を押さえる。
「お前なぁ……」
「どうしてそんなに弱そうなんだよ……」
スエルテがポテト菓子を食べる。
「だって弱いし」
「でも、僕の勝ちー」
スカイがため息を吐く。
二人は訓練中だった。
スカイが一方的に。
「警戒を続けろ」
「周囲を見ろ」
「敵は突然来る」
何度も言う。
だが。
スエルテはやる気がない。
「こんな訓練意味ないってー」
スカイが眉をひそめる。
「いいか」
「備えあれば患いなしという言葉が……」
その瞬間だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
地面が震える。
スエルテが首を傾げた。
「んー?」
スカイが顔を上げる。
そして。
固まった。
国の外周。
遥か遠方。
巨大な鉄の壁。
一枚。
二枚。
三枚。
いや。
違う。
何百。
何千。
視界を埋め尽くすほどの鉄壁。
それが。
国を囲むように出現していた。
「な……」
スカイの顔から血の気が引く。
「敵襲か!?」
村人たちも辺りを見る。
ざわめきが広がる。
誰も意味が分からない。
だが。
一つだけ確かなことがある。
異常事態だ。
スエルテもお菓子を食べる手を止める。
この時。
誰も疑っていなかった。
第7位を。
この国の守護者カイを。
あの鉄壁は敵襲に対する防御のためだと。
無意識に信じ切っていた。
だが。
あの鉄壁は。
ランキング者たちを。
国ごとまとめて殺すための。
攻撃だった。




