第103話 鉄の国
城の中が騒がしかった。
兵士たちが走る。
大臣たちが叫ぶ。
ただ事ではない。
ブラッドとカイは王の間へ向かっていた。
扉が開く。
王は玉座に座っていた。
だが。
顔色が悪い。
震えている。
ブラッドが不機嫌そうに言う。
「どうした?」
王が慌てて答える。
「北の国々が次々に滅んでいるのだ!」
ブラッドが眉をひそめる。
王は続ける。
「このままでは!」
「次はこの国だ!」
王は地図を指さす。
そこには。
いくつもの国に大きな×印がついていた。
カイが聞く。
「誰がやった?」
王が答えた。
「能力ランキング第11位」
少し震えながら。
その名を口にする。
「ウィンドだ」
静寂。
王は説明する。
「能力『竜巻』」
「巨大な竜巻を生み出す能力」
「奴が通った後には何も残らん」
村。
街。
城。
人。
全て吹き飛ぶ。
王が下を向く。
「誰も止められなかった」
カイが聞く。
「何故そんなことを?」
すると。
ブラッドが笑った。
「俺と同じだろ」
「最上位を狙ってる」
カイは思った。
理不尽だ。
最上位になりたい。
ただそれだけで。
人を殺す。
国を滅ぼす。
許せない。
カイが言う。
「俺がやる」
王が驚く。
ブラッドも黙る。
本当なら。
自分が行きたい。
だが。
分かっていた。
相性が悪い。
ウィンドの風は異常だ。
黒炎は消えない。
だが。
飛ばされる。
攻撃が成立しない。
そして。
ブラッドは気付いていた。
いつの間にか。
カイは。
自分に並んでいる。
いや。
もしかしたら。
もう……
「好きにしろ」
ブラッドが言った。
◇
ウィンドは空を飛んでいた。
風が身体を持ち上げている。
能力ランキング第11位。
ウィンド。
能力『竜巻』
彼は空から地上を見下ろす。
笑う。
下には。
自分が壊した国々。
街。
城。
村。
全て消えた。
残ったのは瓦礫だけ。
「最高だな」
ウィンドが笑う。
「これが俺の強さだ」
「こりゃもう」
「俺が1位なんじゃねぇか?」
誰も止められない。
誰も追いつけない。
そう思っていた。
次の目的地を確認する。
能力ランキング第27位。
ブラッドの国。
そこを潰す。
そのはずだった。
だが。
ウィンドは固まる。
「……は?」
目を擦る。
見間違いかと思った。
もう一度見る。
だが。
変わらない。
前方にある国。
それは。
巨大な鉄の要塞だった。
国全体が。
無数の鉄壁で覆われている。
壁。
壁。
壁。
壁。
どこまでも壁。
まるで。
国そのものが一つの城になっていた。
「意味が分からない……」
ウィンドが呟く。
風が吹く。
ウィンドは生まれて初めて。
恐怖に近い感情を覚えた。
◇
国中の人々が空を見上げていた。
兵士も。
商人も。
子供も。
全員。
目の前の光景を理解できない。
国の外周。
国の天井。
高い鉄壁。
さらにその外側。
また鉄壁。
さらにその外側。
また鉄壁。
何重にも。
何十重にも。
鉄の壁が積み重なっていた。
もはや城ではない。
国そのものが。
巨大な要塞へ変わっていた。
「なんだよこれ……」
兵士が呟く。
「夢か?」
別の兵士が言う。
ブラッドも見上げていた。
そして。
理解していた。
犯人を。
「おい」
ブラッドが聞く。
「これは何だ?」
カイは真顔だった。
まるで当たり前のように答える。
「吹き飛ばされない城を作った」
静寂。
誰も言葉が出ない。
ブラッドも。
王も。
兵士も。
理解を拒否した。
カイは空を見る。
遠く。
ウィンドがいる。
能力ランキング第11位。
今までなら勝てなかっただろう。
だが。
今のカイは違う。
島で五年。
本土で一年。
誰よりも能力を鍛えた。
鉄壁。
その能力は。
もはや壁ではなかった。
国を守る盾。
国を閉じ込める牢獄。
ブラッドは思う。
もう認めるしかなかった。
カイは。
最上位クラスに到達していると。




