第102話 共犯者
ブラッドに連れられ。
カイは本土へ戻ってきた。
五年ぶりだった。
港へ降り立つ。
兵士たちがざわつく。
囚人島から帰ってきた青年。
しかも。
連れているのはブラッド。
能力ランキング第27位。
誰もが知る怪物だった。
だから。
誰も口を出さない。
例え王ですら。
ブラッドを止めることはできなかった。
◇
二人は食堂にいた。
豪華な料理。
広い空間。
カイにとっては久しぶりのちゃんとした食事だった。
ブラッドが肉を頬張る。
「どうだ?」
カイは周囲を見渡す。
そして言った。
「大した権力だな」
ブラッドが笑う。
「あぁ」
偉そうに椅子へもたれる。
「この国は俺のおかげで成り立ってると言っても過言じゃねぇからな」
能力ランキング第27位。
それだけで国を支えられる。
そんな時代だった。
しばらく沈黙が続く。
そして。
カイが口を開く。
「俺を本土へ戻した理由はなんだ?」
鋭い視線。
ブラッドを見る。
ブラッドは不敵に笑った。
「そりゃ単純だ」
そして。
指を向ける。
「俺を最上位ランキング者にさせるためだ」
カイが眉をひそめる。
「最上位ランキング者?」
聞いたこともない言葉だった。
ブラッドが説明する。
「世の中の能力者の頂点」
「トップ十人だ」
カイは黙って聞く。
ブラッドが続ける。
「最上位ランキング者になれば」
「最上位会議に参加できる」
「そうなれば」
目が輝く。
野心に満ちていた。
「世界を操れる」
カイが聞く。
「操ってどうするんだ?」
ブラッドは即答した。
「全員を従える」
「俺は世界の頂点に立つ」
「俺が誰かの下は許さねぇ」
静かな声。
だが。
強い執念があった。
カイは思う。
こいつも同じだ。
理不尽を作る側。
強者。
支配者。
だが。
今は勝てない。
能力ランキング第27位。
だから。
利用する。
カイは聞く。
「それで」
「なぜ俺なんだ?」
ブラッドが肉を飲み込む。
そして言った。
「能力ランキング第27位になると」
「並ぶ奴が少なくなる」
カイは黙る。
ブラッドが続ける。
「並ぶ連中は皆」
「王だ」
「将軍だ」
「国の中心だ」
「簡単に会えねぇ」
そして。
少し真面目な顔になる。
「能力を一人で鍛えるには限界がある」
「それはお前も分かるだろ?」
カイは思い出した。
五年間。
島で過ごした日々。
鉄壁を出し続けた。
壊し続けた。
鍛え続けた。
だが。
どんどん成長が鈍くなっていた。
確かに。
限界だった。
ブラッドが笑う。
「俺と共に鍛えろ」
立ち上がる。
「そして」
「最上位を目指すぞ」
カイは頷く。
表情は変わらない。
だが。
心の中では決めていた。
こいつと共に強くなる。
そして。
最後には。
こいつを始末する。
◇
一年後。
カイは十六歳になっていた。
訓練場。
ブラッドが腕を組んでいた。
「カイ」
「随分強くなったな」
カイは何も答えない。
ただ前を向く。
この一年。
ひたすら鍛えた。
鉄壁。
大きさ。
強度。
速度。
射程。
全てを伸ばした。
最近では。
超遠距離へ鉄壁を出すこともできる。
ブラッドですら驚く成長速度だった。
だが。
カイは満足していない。
「鉄の壁じゃ」
ブラッドを見る。
「お前の黒炎は防げない」
事実だった。
ブラッドの黒炎は強い。
一枚程度の鉄壁なら。
簡単に溶ける。
しかし。
ブラッドは笑う。
「一瞬で焦がしてるわけじゃねぇんだ」
カイが眉をひそめる。
ブラッドは続ける。
「何枚も出せばいいだろ」
その言葉に。
カイが反応した。
何枚も。
今の俺は。
何枚出せる?
カイは右手を前へ出した。
能力発動。
鉄壁。
一枚。
二枚。
三枚。
積み重ねていく。
止まらない。
次々に出現する。
十。
百。
千。
「おいおい……」
ブラッドが引いた。
鉄壁は増え続ける。
もはや数えられない。
空まで。
鉄壁。
鉄壁。
鉄壁。
鉄壁。
塔のようになった。
ブラッドは初めて気付いた。
カイの覚醒は。
遠距離能力ではない。
強度でもない。
枚数だった。
圧倒的な物量。
ただそれだけ。
全てを押し潰すための能力。
ブラッドは少しだけ恐怖した。
目の前の青年が。
自分の想像以上の怪物へ。
変わり始めていることに。




