第101話 流刑島
カイは拘束された。
仲間殺し。
その罪だった。
十歳の少年に与えられた判決は重かった。
流刑。
重罪人だけが送られる島。
そこへの追放だった。
手錠をかけられ。
船へ乗せられる。
周囲には囚人たち。
殺人。
強盗。
誘拐。
様々な罪人が乗っていた。
カイは黙って海を見ていた。
何時間も。
何時間も。
そして。
島が見えた。
◇
船が岸へ着く。
兵士が叫んだ。
「降りろ」
囚人たちがぞろぞろと降りていく。
カイも続いた。
兵士が説明する。
「ここでは自由だ」
囚人たちがざわつく。
だが。
兵士は続けた。
「ただし」
「この島から出ることはできない」
海を指差す。
「外の海流が激しい」
「泳いでも死ぬだけだ」
そう言って。
囚人の手錠を外し。
兵士たちは船へ戻る。
やがて。
船は離れていった。
その瞬間だった。
「死ねぇ!!」
一人の囚人が別の囚人へ襲い掛かった。
殴る。
蹴る。
笑う。
それを見て。
別の囚人も暴れ出した。
島は一瞬で地獄になる。
カイだけは動かなかった。
ただ。
遠くの本土を見ていた。
レイ。
最愛の妹を思い出していた。
その時。
「おらぁ!!」
男が殴りかかってきた。
カイは振り向く。
能力発動。
目の前に鉄の壁が現れる。
ドゴッ。
男の拳が激突した。
「いてぇぇぇぇ!!」
拳が砕ける。
男が地面を転げ回った。
カイは聞く。
「お前」
男を見る。
「何をしてここへ来た?」
男は拳を押さえながら笑った。
「はぁ?」
そして。
誇らしげに言う。
「俺は強盗だ!!」
「だが」
「目撃者も殺したから」
「殺人もかな?」
大笑いする。
カイは黙った。
その被害者は。
何をした?
何が悪かった?
ただ。
運が悪かっただけ。
理不尽だった。
また。
理不尽だ。
この世界は。
どこまでも。
理不尽だ。
なら。
俺が代わりに。
無念を晴らそう。
俺は。
理不尽を許さない。
その瞬間。
能力を発動する。
囚人たちの周囲。
前後左右。
巨大な鉄壁が現れた。
「なんだこれ!?」
「おい!?」
「逃げろ!!」
囚人たちが騒ぐ。
だが。
遅い。
四枚の鉄壁が。
内側へ倒れる。
グシャァァァッ!!
悲鳴。
骨が砕ける音。
肉が潰れる音。
そして。
静寂。
積み重なる鉄壁。
カイは歩き出した。
島の奥へ。
その日。
島の囚人は全員死んだ。
◇
カイは一人生き続けた。
鉄壁を出す。
壊す。
出す。
壊す。
何度も。
何度も。
能力を使う。
島の木々が消える。
岩が砕ける。
地面が抉れる。
島は少しずつ姿を変えていった。
そして。
能力も変わっていく。
大きく。
強く。
速く。
カイは知らない。
それが覚醒への道だということを。
ただ。
理不尽を壊す力を求めていた。
ひたすらに。
◇
五年後。
一隻の船が島へ向かっていた。
船の上。
全身黒ずくめの男が立っている。
長い黒髪。
鋭い目。
当時。
能力ランキング第27位。
ブラッドだった。
ブラッドが面倒そうに言う。
「ちっ」
「なんで俺がこんな島まで来なきゃなんねぇんだ」
兵士が怯えながら答える。
「王命でして……」
「なんでも」
「送られる囚人が」
「即全滅しているらしく……」
ブラッドが笑った。
「へぇ」
「あいつらを殺した奴は気になるな」
船が島へ到着する。
ブラッドは降り立った。
そして。
目を細める。
兵士が青ざめる。
「なんですかこれは……」
島が崩壊していた。
木々は折れ。
岩は砕け。
地面には巨大な傷跡。
まるで戦争の跡だった。
ブラッドが言う。
「お前」
兵士を見る。
「俺の近くにいろ」
兵士は必死に頷く。
ブラッドは周囲を見渡した。
そして。
呟く。
「違うな」
兵士が聞く。
「違う……?」
ブラッドは笑う。
「これは戦いの跡じゃねぇ」
周囲を指差す。
「能力の練習跡だ」
その瞬間。
ゴゴゴゴゴ。
鉄壁が現れた。
ブラッドの正面。
巨大な鉄壁。
そして。
高速で迫る。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
兵士が絶叫する。
ブラッドが睨んだ。
「黙れ」
兵士が固まる。
次の瞬間。
黒い炎が現れた。
ブラッドの能力。
黒炎。
鉄壁が燃える。
鉄が溶ける。
焼け落ちる。
ブラッドはその穴へ飛び。
回避する。
だが。
次の瞬間。
四方に鉄壁。
倒れてくる。
「ちっ」
ブラッドが舌打ちする。
「大した遠距離攻撃だ」
黒炎の壁が現れる。
ドゴォォン!!
鉄壁が衝突する。
しかし。
止まる。
鉄壁は押し切れない。
やがて。
黒炎によって灰になる。
静寂。
ブラッドが言う。
「出てこい」
その声に。
一人の青年が姿を現した。
カイだった。
ブラッドは笑う。
面白い。
明らかに強い。
しかも若い。
ブラッドが聞く。
「お前」
「何位だ?」
カイは首を傾げた。
「何位?」
そして。
真顔で返す。
「なんのことだ」
ブラッドが固まる。
次の瞬間。
最高の笑みを浮かべた。
「ははっ」
「そうか」
面白い。
こいつは。
何も知らない。
だからこそ。
面白い。
ブラッドはカイを指差した。
「気に入った」
「お前を」
「兵士に戻してやる」




