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『妹だけが俺の強さを知っている』  作者: ミキ


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昼休みと一通のメール

キーンコーン――


 終了のチャイムが鳴り終わる。


「つっかれたぁ……」


「頭使った……」


「戦う方が楽じゃない?」


 張り詰めていた空気が一気に緩んだ。


 椅子を引く音。


 伸びをする音。


 さっきまで静かだった教室が、一気に昼休みの空気へ変わっていく。


「昼だー!」


「腹減った!」


「食堂行こうぜ!」


 あちこちで声が上がる。


 深樹も小さく息を吐いた。


(……思ったより疲れたな)


 頭を使う授業は、戦闘とは違う疲れ方だった。


 席を立つ。


 今日は購買で何か買おう。


 そう思って鞄を閉じ、そのまま教室を出た。


 昼休みの廊下は賑やかだった。


 食堂へ向かう生徒。


 友達同士で話しながら歩く生徒。


 あちこちから笑い声が聞こえる。


(購買、混んでそうだな……)


 そんなことを考えながら歩いていると。


「お兄ちゃーん!」


 後ろから聞き慣れた声。


 振り向く。


 紅音だった。


 少し小走りでこちらへ来る。


「……何だよ」


「待ってよ」


 追いついた紅音は、そのまま隣へ並ぶ。


「購買?」


「ああ」


「ふーん」


 数歩歩く。


 そして。


「あ、そうだった」


 紅音が思い出したように声を上げた。


「?」


 持っていた小さな包みを差し出してくる。


「はい」


「……何これ」


「ルナから」


 一瞬。


「……ルナ?」


 紅音は小さく頷いた。


「家出る前に渡された」


 そして少しだけ声色を変える。


『深樹、お昼ちゃんと食べなさそうだから』


『お願い』


 真似を終えると肩をすくめる。


「……だって」


 深樹は手元を見る。


 綺麗に包まれた弁当。


「開けてみれば?」


 言われるまま包みを開く。


 中には綺麗に詰められた弁当。


「……ルナ特製」


 数秒。


「……マジか」


 その横から紅音がひょこっと覗き込む。


「おぉ……」


 一瞬。


「美味しそう」


「お前な……」


 その時だった。


「あっ、紅音いたー!」


「探した!」


 前から女子生徒二人がこちらへ駆けてくる。


「購買行くって言ったのに全然来ないじゃん!」


「置いてくよー?」


「あ」


 紅音が小さく声を漏らした。


「忘れてた」


「忘れてたの!?」


 二人がツッコむ。


 紅音は少し笑ってから深樹へ向き直る。


「じゃ、お兄ちゃん」


「ん?」


「用事終わったし」


 一瞬。


「また後でね」


 そう言って手をひらひら振る。


 数歩歩いてから止まる。


「あと」


 振り返る。


「ちゃんと食べてよ?」


「……分かってる」


 返事を聞いて満足したのか、紅音は頷いた。


「よし」


「紅音早くー!」


「今行くー!」


 友達二人に腕を引かれ、そのまま去っていく。


 騒がしい背中を見送りながら。


 深樹は手元の弁当を見る。


 購買へ行く必要はなくなった。


(……あそこにするか)


 思い浮かんだのは校舎裏の中庭だった。


 前にも来た、人の少ない場所。


 静かな風が吹く中、深樹はいつものベンチへ座る。


 そして弁当を開く。


「……すげぇな」


 卵焼き。


 小さめのハンバーグ。


 彩りの野菜。


 見た目までしっかり考えられていた。


 一口食べる。


「……うま」


 思わず漏れる。


(……すごいな)


 その時。


 ピコン。


 携帯端末が小さく鳴った。


 差出人――探索者協会。


(……あ)


 昨夜の任務招集。


 深樹は画面を開く。



【探索者協会:任務通知】


特別合同任務の参加予定人数が規定人数へ到達しました。


参加者の最終確認及び、当日のチーム編成情報を送信します。


【合同任務概要】


内容:ダンジョン第七区域・異常反応調査


集合日時:土曜日 午前七時


集合場所:探索者協会東支部


参加人数:二十四名


編成:六パーティ


【現場指揮担当】


パーティ名――《白銀の軌跡》


リーダー:


橘 総司


ランク:A級探索者


役職:指揮官兼前衛


【追加情報:今回の任務には注目探索者が数名参加予定】


参加予定探索者:


・天音 蒼真

若手探索者ランキング急上昇中

単独踏破記録多数


・七瀬 玲華

B級探索者

超広域支援魔法の使い手


・黒鉄 剛牙

B級探索者

近接戦特化型探索者



「……は?」


 深樹の指が止まる。


「天音……蒼真?」


 今日転校してきたクラスメイト。


 授業中の反応。


 映像を見る目。


(……マジかよ)


 さらに通知が届く。



【備考】


参加者には当日まで仮チーム情報を非公開とします。


なお現場判断により臨時編成を行う場合があります。



「……臨時編成?」


 一瞬考えて。


(学生の俺が関わることはないか)


 そう思って――止まる。


 探索者協会に登録しているのは本名じゃない。


 探索者登録名。


 そっちなら。


「……ありえるのか?」


 静かな中庭。


 だけど深樹だけは、少し落ち着かない気分になっていた――。

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