奥方様
街を出る前に馬屋に寄ると、他のメンバー用の馬を借りた。
流石に私たちだけ馬に乗っててもスピードも上がらないし意味が無いからだ。
街を出ると、私とルナはお絹ちゃんに乗った
「ここからよろしくね、お絹ちゃん」
ヒヒーン
首元を撫でると嬉しそうにお絹ちゃんが鳴く
「それにしても一見貴族の護衛って感じだよなー。」
「貴族は……馬車、乗る」
「急ぎの時は馬に乗るだろ?」
「確かに、じゃあ、私達貴族の雇われ冒険者って状態?!」
「まぁ、実際に……そうだから……」
「目立たないようにした方が良かったらしいのにこれでいいのー?リーシャちゃん?」
「目立つ云々気にしてまでスピードを抑えるつもりは無いですし、そもそも歩いていく距離では無かったので、馬車を使おうかとも考えていたので大丈夫ですよ」
「そーう?それならいいんだけど」
馬をカポカポ歩かせながら会話してるが、走らせながら会話するとしたら通話器具でも必要になるかもしれない
まあ、それより魔法で通話すればいいだろうって感じだろうけれど、下手に魔力を消耗させる訳にも行かない。
暫くはお馬さんには、会話が必要なら歩いて、他は走って貰う感じになるだろう
「しばらく道なりに走りますね、会話が必要だったら止まってください」
そう伝えて、徐々にスピードをあげるとみんなも着いてきた
とりあえずの目的地は鬼の国だ。いずなさんの成長次第で途中の妖狐の国にも寄れるが、ひとまずは鬼の国が目的地でいいだろう
「ルナ、使者として行くから、ルナと離れることもあると思うけれど、いざと言う時の修行はしてるから、すぐに後ろに下がってくれていいからね。」
「……かしこまりました」
何か言いたげに言葉を詰まらせたが、了承してくれた
これで、単独行動も多分できるはずだ
死に戻るのならば、単独行動してる時の方が集中しやすい。他の人に意識を向けなくてもいいからだ
少々過保護な、家の人達には悪いが、私は死に戻る覚悟は出来ている
道中魔物を倒したり盗賊を倒したり様々な街や村に泊まったりしながら、何とか鬼の国へと着いた。
「誰だ!」
門番の女性に止められて、私達は馬から下りる。
「人間の国から使者を連れてきた!交渉の場を設けて欲しい」
「貴方……鋼牙?!よく無事だったわね!」
「ああそうだ、知恵。すまない、手伝ってくれたって言うのに戻ってきてしまって」
「ううん。貴方がそれを選んだならそれでいいの。で、後ろの方々は?」
「俺の冒険者仲間と依頼主だ。」
「依頼主?まさかと思うけど、鋼牙の事情知りながら強制したりなんてしてないわよね?」
ジロリと知恵さんから睨まれるが、一切後ろめたいこともないのでじっと見つめ返す
すると、驚いたように目をぱちぱちさせた
「あれ、てっきりその女性が依頼主だと思ったんだけど、もしかして依頼主ってその少女?」
「ああ。でも、ただの少女だと思わない方がいいぞ。なんせ、こんな歳で人間の国からの使者をしてるんだからな。」
「そうだ、その使者?ってなんなの?奥方様からも旦那様からもそんな話は聞いてないけれど……」
怪訝そうな知恵さんに、内緒話のように耳元へ口を持っていく鋼牙くん。
「それもそのはずだ、この少女……リーシャって言うんだが、リーシャは未来を見ることができるんだ。そして、その未来で戦争になることを知ったらしい」
「戦争?!」
「大きい声出さないでくれ、
人間の国は、その戦争を起こさないようにする為、未来を見たリーシャ本人を使者にして、協力関係を築きに来たんだ。」
「なるほど……それでなんで鋼牙が戻ってくるの?」
「戻りはしない。案内として選ばれただけだ。」
「でも、奥方様達は……」
そこまで話したところで、知恵さんの後ろに唐突に気配がした
「私抜きで相談ですかぇ?」
「奥方様!」
一斉に知恵さんと鋼牙くんが頭を下げる
それに伴って私たちも頭を下げると、
奥方様は満足気にふんっ、と鼻を鳴らした
「鋼牙が帰ってきたのかぇ、本日は宴やなぁ」
「いえ、私は帰ってきたわけでは……」
「ならなんのつもりで来なさったん?」
「人間の国からの使者です」
ジロリと睨まれて縮小してしまった鋼牙間の代わりに私が口を開くと、ゴミを見るような目をこちらに向けてきた
「最近のネズミはチューチュー五月蝿くてかなわんわぁ。使者がなんだって?」
「貴方方が求めているものを持ってまいりました。交渉の場を設けてください」
言葉を続けると、さらに睨まれる。
「黙れ言うたのがわからんのか?うちらは鋼牙さえいればなんの問題もないんよ」
「ですが、鋼牙がいなくなったら何も出来ないのでしょう?」
「……それがお前になんの関係があるっちゅうん?」
「それが解消されるものをお持ちしました」
「ふんっ、解消なぁ……」
「奥方様……」
「知恵お前は独房行きや。鋼牙のいなくなった原因はお前やったんやな?」
「なっ!待ってください!知恵は関係ありません!俺が勝手に逃げただけで……」
「でも、どこかで罰を与えんと釣り合いがとれんもんそれとも、使者様がどうにかしてくれるっちゃうんか?」
「ええ。良いですよ。それで交渉の場を設けてくださるのであれば。」
「それは結果次第やなぁ。」
「リーシャ、罰というのは実質公開処刑だ、流石にリーシャに変わってもらう訳には……」
「むしろこの中で私以外に適任は居ないと思わない?私のスキルを知っているでしょう?」
鋼牙君に、本当のスキルの方を匂わせると、「でも……」とどもったけれど、沈黙で返してくれた
「私がその罰とやらを受けます。」
「ほな、罰を受ける時は鋼牙以外には地下牢に入っててもらうで。余計な手を出されたら困るからな」
「ごめん、みんな、私なら乗り切れるから」
「信じてます」
「まぁ、こうなる気はしてたからねー大丈夫だよ」
「私たち……役たたず」
「まぁ、1番の手だって言うなら仕方ないわよね。なるべく死ぬんじゃないわよ!」
レイさんの言葉に、少し笑いそうになる
私が今からしようとしてる事がわかっているようだ。
処刑には準備が必要だから、と仮宿を用意してもらった。対応に相応しく、古ぼけてすきま風の入るちょっとで壊れそうな宿だった
それでも、野宿よりはマシだと、皆で泊まる事にした
鋼牙君は奥方様に連れてかれてしまった。
もう1回会えるだろうか……それだけが不安だ。
布団の支給も無かった為、野宿用の毛布を下と上にかけて、皆で集まって暖を取り合いながらその日は寝た




