出立
次の日、とってもぐっすりと寝てしまったらしい私達は、予定よりも少し遅れて王城を後にした。
馬車乗り場に着いたところで、ルナが今回乗る馬車を決めてくれることになったので、
4人と待つことにする。
「人の善悪……分かる、魔法……って言ってた?」
「そう、魔法って言ってた。どんな魔法なのか全然検討もつかないの」
「私も……わかんない……」
「私もお手上げー!どこをどう見ればわかるのか全然わかんない」
「2人もわかんないかぁ。やっぱり、ルナ特有の魔法だと思うのが正解かなー。」
「獣人特有の優れた五感がいい感じに噛み合ってる可能性もあるな。」
「なるほど興味深い!今度教えを乞うてみようかなぁ〜」
ルナの得意魔法の話をして待っていると、しばらくしてルナが戻ってくる。
「ルナ、どうだった?」
「今回は良さげな馬車がありません……歩いて行ける距離に街がひとつあるようです。そちらの街で馬車を探すのはいかがでしょうか?」
「ルナちゃんがそういうなら、私は全然歩くよ!」
「歩くというか飛んでるだろ、お前は」
「私……歩く……頑張る!」
「変な馬車に当たることを考えたら、歩いて街に向かう方が良い策に感じるねぇ。うん、今回はみんな歩いていこーか!」
というわけで、徒歩で移動になった。
さすがに、歩幅が違いすぎる私は、ルナに抱き抱えられての移動になる。
「重くない?」と心配になったが、「普段から鍛えてるので」と返された。重いには重いんだな、やっぱり。
王都を出て次の街までは舗装された道が続いていた。
やはり王都に近い所は人の手が行き届いてる。
歩くのにそんなに支障は無いだろうけれど、早く自分の足で歩けるようになりたいものだ……
「最初はどこの国に向かう予定なの〜?リーシャちゃん」
皆の後ろを歩いてたルナに近づいてきて、いずなさんが私に声をかける。
「いずなさんの故郷の妖狐の国へ行こうかと……」
「えー。えっと……妖狐の国より鬼の国の方が近いよ?鬼の国にしない?」
「……なんかあるんですか?」
「あー。いや、私事で申し訳ないんだけどね、大人になる旅に出た妖狐が、大人になる前に戻ってくるのは大人になるのを諦めたって判断されちゃうの」
「それは大変じゃないですか」
「そうなのー。だから、鬼の国から行くことにしない??あわよくば、しっぽ揃うまでは後回しに……」
「後回しに……は、あまりしたくないですけど、そうですね……いずなさんの事情もありますし、鬼の国に先に行きましょうか……」
「おい待て、鬼の国は鬼の国でちょっと行きづらい事情が……」
鋼牙君がいずなさんと私の会話を聞いて言葉を挟んできた
「……みんな事情持ちですか?もしかして……」
「俺ん所は……ちょっとややこしい事情が……」
「私は……無い、けど……」
「私は多分迷子って思われてるかな!捜索されてるかも?」
ちょっと頭が痛くなるのを感じて、とりあえず鋼牙君の事情を聞くことにする
「俺の問題というか、種族の問題なんだがな、男が出来にくい種族で、子供を作るってなると、男が必要だろう?小さい頃から周りを女で囲まれてて、時が来たら食われちまうって状態から逃げてきたんだよ」
「……要するに、家出ってこと?」
「まぁ、そういうことになる。だから、帰ったら多分俺はパーティを抜けなきゃ行けなくなるんだが……」
「そういうことなら、何とかなるよ?」
「……は?」
私は、アイテムボックスから1つの毒薬を取り出す
「これは、薬。」
「は?」
「これを、鬼の国では献上する予定なの。」
「なんで薬を?」
傷の治りが凄く早い吸血鬼は、回復薬なんて使う必要が無い。当然の質問に、私はちょっとからかうように人差し指を唇に当てる。
「それは、内緒。こんなとこじゃ誰が聞いてるかわかんないし、詳しい話は鬼の国に着いたらしてあげる。」
「はぁ……まぁ、それで何とかなるんなら良いけど……」
「そこは私を信じて!」
「まだ信頼関係できるほどすごしてねぇよ」
「え、無いの?!」
「レイはあんのかよ!チョロすぎだろ!」
とまあ、鋼牙君のツッコミが冴え渡ったところで、目的地を鬼の国に行くことにする。
今向かってる街から、各国に分かれる道が出ているので、一先ずの目的地は変わってないが、どこに行くかわかってる方が動きやすいだろう。
「ところで、鋼牙君はどうやって家出してきたの?数少ない男の子なら、十分に監視されてたんじゃ……」
「ああ。だから、トイレから逃げた。」
「なんでトイレから?」
「トイレぐらいしか1人になれなかったんだよ。
コツコツと旅に必要なものをトイレの傍に隠して、一色揃い次第すぐに出てきたんだ。」
「じゃあ、同じ手は使えないね」
「……帰れなくなる前提の話なのか?」
「んーん。私の薬で満足しなかったら、鋼牙君誘拐しなきゃいけないじゃん?そのために聞いた」
「誘拐って……」
鋼牙君がクスリと笑った。
良かった、少しは緊張が解けたみたいだ
「……んで、その薬ってなんの薬なの?」
いずなさんが鋼牙君の頭の上に乗っかるようにして会話に混ざってくる
あっ、お胸が……とても重そうです。
「そんなに知りたい?」
「んーそう言われるとそうでも無いけど知りたいと思っちゃうなぁ〜」
「気に……なる!」
「はいはいはい!私も気になる!」
「ちょ、鬼の国着くまでは内緒って話じゃないのか?」
「じゃあ鋼牙だけ聞かなきゃいいじゃん〜!」
「1番聞きたいのは俺だっての!」
「そうだなぁーじゃあ、ヒントだけ」
「「「「ヒント?」」」」
「このお薬は、吸血鬼さんの願いを叶える薬だよ」
「余計意味わかんねぇ」
「私は何となく察したかなぁ〜」
「私も……たぶん、わかった」
「え、わかんないの私と鋼牙だけ?マジか〜」
「そのマジってやつ、世代遅れだから使うの控えろよな?」
「ぶぅー」
鋼牙君の指摘にレイさんが膨れたところで、会話が一段落した。
この隙にと道を見回すと、同じように歩いてる人が数名。あと馬車が数台通り過ぎる
……と、進行方向から見覚えのある馬車が走ってきた
「あっ、おじさーん!お絹ちゃーん!」
私が呼びかけると馬車はゆったり止まった
「ほほぅ、嬢ちゃんか。奇遇だのぉ」
ヒヒィーン!
お絹ちゃんが私に頭を擦り付ける。撫でてあげると、嬉しそうに鳴いた
「ほっほっほっ、お絹もお嬢ちゃんの事が好きなようじゃのう。どれ、あちらの街に向かうなら、連れて行ってやろうか?」
「えっ、でもお客さんがいるんじゃ……」
「それが、今回のお客さんはそのまま街に移住するとかで帰りは使わないというもんで王都に戻るところだったんじゃよ」
「それじゃあ……」
「ご乗車いたしますか?お嬢様」
「うん!」
「じゃあしゅっぱつしんこーう!」
「レイ……乗るの……早い……」
「まぁ、レイの気が早いのはいつもの事だとして、どうする、リーダー。」
「そりゃ、依頼人が乗るんだから乗るでしょ〜」
「……だそうだ、俺らも乗るぞー。」
「はぁーい」
レイさんの次に乗り込むと、ほかのメンバーも乗り込んでくれた。
ヒヒーン!
という、お絹の大きないななきと共に、馬車は街へと向かっていった




