昔の記憶と、鬼の奴隷
『こんな場所で本当に隠れられるの?』
『木を隠すなら森の中人を隠すなら人の中、だ。人が多い方がむしろ隠れ蓑になるんだよ。』
『それでも、不振な動きすれば捕まるでしょう?』
『それが意外と捕まらないものなのさ。ビクビクしてる方がよっぽど怪しまれる。早く慣れた方がいいぞ』
初めて暗殺者のアジトに行った時の記憶が蘇る。
アジトは各国にあるらしいが、人間国のアジトは、なんと王都の一軒家だったのだ
本当にこんなところで大丈夫なのか、と心配になったことをよく覚えている。
『もし、バレたら、それは仲間から裏切り者が出たってことだ。重々承知の上、慎重に行動しろよ』
『そんなこと言うと緊張しちまってダメだろ、平常心でいられる特訓も受けることになるから、それまでは緊張しすぎないように頑張れよ』
『わ、わかりました。』
仲間のわかりやすい脅しに脅されて、緊張すると、アジトに私を連れてきてくれたアルドが背中を叩いて緊張を解してくれた。
とてもホッとしたのを覚えている。
『そしたらまず、言葉遣いからだな。いい子ちゃんが出過ぎてるもっと荒い言葉でいいんだぞ』
『そ、そうなんですね、わかりました』
『わかった、だ。』
『わ、わかった。』
『そうだ、それでいい。』
新鮮な喋り方にドキドキしながら、私はこれから悪を撃つんだと信じて止まなかった
ーーーーーーーーーーーーーーーー
謁見で各自が望みの物を言うと、王様は、「望みのものを用意すると約束しよう。」と、断言してくれた。
その後、今後の行動を少し聞かれて謁見は終わった。
「お父様、吸血鬼である鋼牙君の為に、血を提供出来るメンバーが必要になります。ルナを連れて行っても大丈夫ですか?」
「大丈夫だが……トーマは連れていかないのか?」
「あまり大人数になってしまうと、百鬼の皆さんでは対処できなくなって迷惑になってしまいます。その点ルナなら自衛ができるので、迷惑にならないかと」
「ふむ……そうだな、本人に聞いてみて、着いてきてくれるならよしとしよう。」
「?分かりましたわ。」
私がよく分からないと思いながら、話を切り上げると、鋼牙君が耳打ちしてくれた。
「鬼の中には、食事である人間をイコールで奴隷だと思う奴もいる。
食事の跡は首元に着くから目立つし、隠しても同族には匂いでバレちまうから、多分その辺への配慮だ。」
「なるほど、つまり私は「自ら奴隷かもしれないと名乗る事になるけれどいいですか?」とルナに聞かなければならないのね?」
「そういうことだ」
鋼牙君の言葉に合点がいった私は、少し悩む。
(もし本人が良いと言っても、私が納得できなそうだ……)
……そう思い考えるが、いい策が浮かばない。
考え事をしている内に、ルナが待っている部屋まで着いてしまった。
思わずどうしようと扉の前でうろついてると、いずなさんが「何してるの、入らないの?」と、部屋の扉を開けてしまった
扉の向こうには、トーマに言葉を教えてる途中らしいルナの姿があった。
「……えっと、ルナ久しぶりね」
「久しぶりというほど日にちはたっておりませんが……お久しぶりです、リーシャ様」
「あのね、今回はルナにお願いがあって……」
「その前に、後ろの方々を教えていただけませんか?」
「あっ、私の護衛になった、冒険者パーティの百鬼の方々ですわ」
「はーい。リーダーのいずなで〜す。妖狐で〜す。よろしく」
「俺は鋼牙。鬼だ」
「えっと……ロア。エルフ」
「私はフェルレイン。レイさんって呼んで!妖精だよ!」
私が動揺してるとわかったのか、ルナが話を先に進めてくれる。それに合わせて百鬼のメンバーも自己紹介してくれた。
「いずなさんに鋼牙さんにロアさんにレイさん、ですね。初めまして。リーシャ様の専属従者の筆頭を努めさせていただいておりますルナと申します。」
ルナがエプロンの前に両手を組んで、軽くお辞儀をする。
「そして、お願いごととはなんでしょうか?リーシャ様」
「あのね、これは命令では無いから、それは先に了承しといてね?」
「かしこまりました」
前置きをしてから、本題の、鋼牙君の食事となるために着いてきて欲しい、という事を話すと、ルナは少し悩んだ後、「かしこまりました。私でよろしければ、喜んでついて行きましょう。」と、あっさりと了承されてしまった。
「本当にいいの?奴隷だと思われるかもしれないのよ?」
「その辺は気になりません。思うやつには思わせておけばいいのです。」
「そうだけれど、私が気になってしまうのよ」
「そうですね……では、言い方を変えましょう。私も素のお嬢様が見てみたいので連れてってくださいませ」
「え?素の私?」
思わず驚くと、真剣に「はい」と返された
「素の私にそんなに価値があるの?」
「ええ。専属の筆頭なのに、主の素の顔も知らないなんて、従者としてこれほど悔しいことはありません」
「でも、食事……」
「食事の痕なら、回復魔法で消してしまえばいいのでは無いですか?」
「そっか!それなら、血の匂いがしなくて済む!」
思わぬ所で解決策が出た事に、歓喜すると、何故か皆に微笑ましそうに眺められた
「ごほん、それじゃあ、ルナには旅に着いてきてもらうことになります。旅の準備をしていらっしゃい」
「かしこまりました」
そう言って、トーマを置いてルナは自室へと下がって行った
「ルナ先輩、連れてく……?」
ずっと様子を眺めてたトーマが、声を発する
「ええ、今回の旅に着いてきてもらうことになりました」
手話をしながら言葉で返すと、トーマは急に立ち上がり、「僕も着いてく!」と、声を上げた
「トーマ、貴方はまだここで学ぶことがいっぱいあるでしょう?」
「でも……」
「帰ってきた時に「おかえり」と言ってくれる方が居るのと居ないのとでは大違いです。トーマは、「おかえり」と言って下さらないの?」
「ぅぅ……」
トーマはしばらく葛藤した後、落ち込んだ犬のようにしょんぼりしながら、「わかった……待ってる……」と、諦めてくれた。
トーマにも百鬼のメンバーを紹介して、百鬼のメンバーとトーマが何気ない会話をしていると、
準備を終えたルナが荷物を持って戻ってきたので、荷物をアイテムボックスにしまって、いざ、以来報告に向かおう
と王城を出ようとしたら、執事さんに止められた
なんでも、今日は王城に泊まるようにと王様から言われているらしい
以来報告も変わりにやってくれるとか。
私はともかく、百鬼のメンバーは驚いて固まってしまった
「り、リーシャちゃん、私達は街の宿取るから大丈夫だよ?」
「護衛の方々と離れては意味ないと、陛下からのお言葉です。護衛の方々の部屋も用意しております。」
「俺は男だし流石に……」
「一人一部屋ご準備させていただいております」
「王城……緊張……寝れない……」
「湯船の準備も整っております。ささ。こちらへどうぞ」
「強制連行のパターンだこれ」
という感じで、百鬼のメンバーは執事さんに連れてかれてしまった
私は、少し用事があるので、と、場所だけ聞いて案内は断った。
因みにルナは私の隣の部屋を準備してもらっているらしい。用意周到だ
そんな感じで、その日は王城に泊まる事になった。




