朝練
ループしてからの私の朝は早い。
まだ日が登らないうちに起きて、外に出て、手頃な的(大体大岩とか)を見つけ、魔術の特訓、記憶力の特訓、状態異常耐性の限界の確認等、色々なことをする必要があるからだ。
今日は麻痺毒の持った草を食べて、耐性を確認してると、途中までピリピリと麻痺してたのに効かなくなって、なんでだろうと思ったら、状態異常耐性が状態異常無効に進化していた
(状態異常なんて複数あるのに、ひとつを極めただけで無効になるなんて、世の中簡単に出来てるなぁ)
無効になったのは嬉しいが、暗殺者時代は状態異常の効果は獲物を仕留めるのに重宝してたし、状態異常の状態で魔法を使う訓練とかもしていたから、素直に喜べない
まぁ、今後役に立つだろうから、ありがたく使わせていただこう。
因みに、毒を飲んで血を吐いた時は、恐らく耐性があってやっと生き延びられるほどの毒だった、という解釈をしている。
よほど本気で殺す気だったようだ。今でも、両親が飲んだらと思うとゾッとする。
また使われることは無いと確信できるのは、暗殺者時代の経歴からだろう。要らぬ心配をしないで済むのは本当に助かる。
「朝……早い、ね。」
状態異常の特訓が無意味になってしまったので、魔術の特訓を長めにとる事にして、的扱いの大きな岩に魔法を放っていると、ロアさんが起きてきていた
「少しでも訓練して強くならないと、思ったように動けないから必要事項だと思ってやってるんだ」
「それでも……訓練するの、偉い……と思う」
「訓練はしただけ自分に返ってくるから。と言っても自己流だけどね」
「アドバイス……いる?」
「いいの?」
「依頼を受けてる間だけで……良ければ……だけど」
「全然!むしろありがたいよ!」
「お礼は……知らない魔法を、教え合う……で。」
「そんなことで良ければ喜んで。」
握手しようと手を差し出すと、ロアちゃんは少し慌てたあと、「依頼……成立……」と手をぎゅっと握り返してくれた。
「まずは……魔力の練り方から……」
「練るって、こう、体内を動かす感じでしょう?」
「それだけじゃなくて……もっと細かいところ……全身に……指先や、足先にも行き渡らせるように……」
「こう……あっ」
指示通りに、指先に巡らせてみると、指先から魔力が漏れ出てしまった
「漏らさないように……する事で、不必要な魔力の消費を……抑えられる」
「なるほど……」
そのご、何回も挑戦するが、動かすと指先から漏れてしまって、指先に維持してると今度は動かすことが出来なくて、とてももどかしい気持ちになった
知らなかった訓練方法を教えてもらったお礼にと、暗殺者時代に使ってた隠密魔法を教えると、ロアちゃんはとても目を輝かせて練習していた。
あーでもないこーでもないとてんやわんやしてるうちに、日が昇ってきて、朝になってしまった
「今日は……ここまで。ご飯……食べに、行こ?」
「そうだね、食べに行こうか。お腹ぺこぺこだー!」
いつもと違う訓練をしたからかお腹が鳴りそうなぐらい空腹感を訴えている
久しぶりに訓練したなーって充実感を味わいながら、2人で宿に戻った。
宿では既にほかの3人が起きていて、ご飯を食べていた。
「あれ、どこ行ってたの?ベットにも宿にもいないから心配したんだよー?」
「その割にはご飯がっついてるけどな。」
「さては私達に内緒で小遣い稼ぎとか?!」
「レイじゃないんだからそれは無いだろ」
「すみません、朝練してました」
「私も……朝練っ」
「ほえー。朝からご苦労さまだね。お腹すいたでしょ、早く食べよ食べよ!」
そう言われて席に誘導される
大人しく座ると、朝のメニューらしい、パンと卵焼きが目の前に置かれた
「リーシャはともかく、ロアが朝から練習するなんて珍しいな」
「私……リーシャちゃんと、教え合う。……約束、した」
「自己流な私を見て、ロアちゃんが教えてくれることになって、そのお返しにって、私の知ってる魔法も教えることになったの。ちゃんと依頼として成立させるから大丈夫だよ」
お行儀悪いと思いながらも、パンを頬張りながら補足すると、レイさんが良いなー!と声を上げた
「実質追加依頼じゃん!そんなら私も混ざるー!」
「混ざるのは良いとしても、レイは朝起きられるのか?」
「なによ、惰眠を貪ってるだけで、朝早くには起きてるわよ!」
「いい大人が惰眠貪ってるなよ」
「良いじゃん、惰眠。大人だって貪りたい時ぐらいあるよ〜」
鋼牙君の言葉に、いずなさんがルンルンと返す。
「っ、子供扱いすんなよ」
「私からしたら十分子供だから!」
「うっ……それはそうだけど……鬼の中では大きい方なんだからな!俺!」
「そうなんだ……」
「感心すんなそこ!」
鋼牙君がプンプンとしてるのに関心の声を漏らすと、怒られてしまった
「ちなみに、私は……見た目通り、ちゃんと、子供。……ブイっ」
「エルフ的には、な。」
「人間で言うと?」
「おばあちゃん」
「おばあちゃん……」
「……おばあ……ちゃん……?!」
とてもショックを受けたというふうにロアちゃんが膝を崩れさせる
頭を撫でてあげると、少し元気になったみたいで、「えへへ……」と微笑んだ。
この可愛さならおばあちゃんでもいい気がする……
「可愛ければ問題ない。いやむしろ、そこがいい!」……的なことをいずなさんが言ってるが、まぁ、無視でいいだろう
朝食を取り終わると、宿に置いてある荷物を片付け、早速移動のための馬車を借りに行った。
すると、こちらに来る時に乗ってきた馬車がまだ残っていて、白馬とおじさんとまた会うことが出来た
「おお、嬢ちゃんか。目的の人には会えたのかい?」
「はい、無事に会うことが出来ました!またおじさん達に会えて嬉しいです」
「ほほほ、それはわしもじゃ。おぉ、そうじゃな、お絹も喜んでおるわい」
白馬が私も!というかのようにヒヒンと鳴いたので、おじさんが体を撫でてあげる。
「お絹って名前なんですか?」
「ああ。生まれた妖狐の国でよく子供につけられた名前だそうなんだがな、響きが気に入ってこの子に付けたんだよ」
「妖狐の国の名前は一見読めない名前が多いからねぇ。多分、お絹ってのもこういう字を書くよ」
と、いずなさんが地面に「絹」の文字を書いてくれた。
妖狐の国には前世で一度行ったことがあるので、「漢字」と呼ばれる文字が使われるのは知っていたが、実際に勉強したのは短期間で、「絹」の字も読めなかった
「糸に月だから、月毛の馬のお絹ちゃんにはお似合いのお名前だねー」
「月毛の馬って?」
「この子みたいに、月の光を含んで反射するような白い毛の馬の事を、月毛の駒って言うんだよ〜。あっ、駒は、馬の事ね。」
「そうなんだ……」
「漢字のことは私に聞いて〜一応、生活で使ってた字なら教えてあげれるから」
いずなさんのその言葉に、やはり現地の人を連れてきてよかったとほっとした。
国が違えば言葉や文字が違うことなんて普通にある。
それが知れるだけでどんだけ情報が集まるか。
情報が大事だった暗殺者時代には嫌という程教え込まれた。
(……その割に私は、依頼内容鵜呑みにして、冤罪を捌いてたようだけれど……)
必要な情報は1個とは限らない。あの頃にそれがわかっていれば、依頼内容の事実の裏付けまで意識が回ったのだろうか……?
いや、恩人の言うことだからと聞いていた節もある。
(その結果が裏切りじゃあ、笑えないよね)
今世では盲目的に信じることはやめようと、密かに決意していた。できているかは分からないが。
と、意識がズレたが、おじさんにお願いして、馬車に乗せてもらう。
今回は、ほかの冒険者パーティが1組相席するようだ。
快く承諾し、その日の昼前には街を出て、王都へと向かった。




