冒険者パーティ
ロアさんが落ち着くのを待ってから、正式に依頼をだす。
と言っても、支払いを王様宛にした指名依頼を渡すだけなのだが、
これが受付嬢の間で密やかに大騒ぎになってしまった
それを見て、「しめしめ」と顔をニヤケさせるレイさんは、恐らくまた捕らぬ狸の皮算用をしているのだろう。
とったタヌキの皮算用になるように是非とも積極的に協力して欲しい。
「では、ルナとトーマはここから屋敷に帰ってください。ここから、護衛は百鬼の皆様にお願いいたします。」
「それは……いえ、分かりました……」
出来ないと言おうとしたであろうルナは、しぶしぶ、といったように承諾した。
そうだろう、ここで護衛として残るなんて言ったら、百鬼のメンバーの力を信じていないことになる。それはとても失礼なことだ。
「分かりました……」
トーマも、ルナがそういうなら、という感じでしぶしぶ承諾する。
護衛が必要ない……と言ったところで、実際に射抜かれそうになったところを1回助けられてるので、信頼が薄いのかもしれないが、
私自身が死ぬことは何も問題視しなくていいのだ
タイムループの力があるのだから。
(1度子供の頃まで戻ったことで、消えたように感じたが、ステータス的にはタイムループの力は残っている。先日まで使える感覚がしなかったが、今は何となく使えるのがわかる。大きく使いすぎた力が戻ってきたのだろうか。)
ルナとトーマが大人しく(と言いつつも後ろを何度も振り返りながら)帰って行ったのを確認して、パーティメンバーに声をかける。
「仕事上は私の護衛ですが、戦闘においては私も参戦します。私への攻撃を庇おうとかは考えなくて大丈夫です」
「ふぅーん?それなら私たちは何を守ればいいの?」
「約束、ですかね。それぞれの国に着いたら、できる限りの助力をしてくれると約束していただきたいです。」
「約束ねぇ……?」
「正直、護衛というのは肩書きだけで、私自身が勝手に動くのを邪魔さえしないでいただければ自由にしてくださって構いません。」
「そんな、可哀想なこと……できないよ……」
だよね、そう言われると思ってた。でも、普通に行っても死ぬかもしれない場所に行くのだから、死ぬ可能性はちゃんと知っていて欲しい。
仕方ない、とばかりに、全部うちあけることにする。
「おそらく、使者の仕事をこなすためには私は何回か死なないといけないようなのです。」
「死ぬ?って、何回もできることじゃないでしょう?」
鋼牙の発言にうんうんと3人が賛同する
「それが、私は予知能力っていうのは納得してもらうための手段で、実際は違うスキルを持ってまして。
その効果を最大に発揮するには、場合によっては死ぬ必要があるのです。」
「だから、死んだら終わりで……。
死ぬ必要がある……って事は、生き返るすべがある……の?」
「はい。私はこの力をタイムループと呼んでます。
死んだら、死ぬ前の時間帯に移動することが出来るのです」
「ひゅー。そんなの伝説級のスキルじゃん。え、なになに、もしかして予知で見たって言った過去も、タイムループしなかった場合の未来だったりする?」
「鋭いですね。その通りです。
私が暗殺者になってしまった予知は、タイムループをしてくる前の私自身。分かりやすく言い替えるなら、前世です」
その話をすると、合点がいったと言う感じで鋼牙君が
「だから、前世の話をした時、何回か死んだかのような場面があったのですね。」
と納得してくれた
「あ、鋼牙君も皆様も、タメ口で結構ですよ。使者である内は、私はただの一人の人間なので」
「そんなこと言っても……貴族……でしょう?」
「使者という仕事には、貴族かどうかなんて関係ないんですよ。
現に私、暗殺者なのに使者やりましたから」
そう、自傷気味に言うと、確かに、と納得して貰えた
「え……というか待って……前世ってことは、あの話してくれた内容は予知で見た辛い記憶ではなくて実際に体験した辛い記憶ってこと?そんなの可哀想でもそうかそれで魔法の取得が早いのなら納得出来るでもそんな理由で早く取得しなきゃいけないだなんて苦痛でしかないでしょう?よく頑張ったね偉いねこれからは私が魔法を見てあげるからね無理はさせないから安心してね可哀想可愛い守ってあげる……」
……と、ロアさんが少し?暴走したが、
こちらの事情も話せたし、これで動きやすくなった。
両親より早く話したのは、そうした方が理解も深まるし話しやすくなるからだ。
事が終わったら、両親にも兄にも話そうと思う。
(……たぶん、なんで黙ってたって怒られるだろうな)
そりゃそうだ。娘が、妹が、何回も死ぬ思いをしているだなんて検討もつかないだろう
もし知ったら、私だって怒る自信がある。
でも、今回の襲撃に使われた妖狐の矢。
これが人国だけならいいが、他の国でも同じようなことが行われた場合、戦争の準備が始まっててもおかしくない。
死ぬかもしれない前提で行くのが最善手なのだ。
「それでは、ご迷惑とご心配をおかけするかと思いますが、何卒、護衛の方よろしくお願いします」
音声遮断魔法を解いてそう言うと、
「依頼主が敬語だとこちらも敬語をつかわざるを得なくなりますよ?」
という鋼牙の言葉に、
それもそっか、と敬語をとっぱらって、よろしく。
と握手を求める
百鬼のメンバー全員がその手に触れて、「よろしく(ぅ〜)(……)(!)」と返してくれた
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さて、それでは旅に出るにあたって必要な道具だが、
これも王様がお金を出してくれると言ったら、今の自身にあってる1番の装備を付けたいと希望してくれたため、武器や装備を売っているお店にやってきた。
「本当にたくさんの装備がある……」
「まぁ、魔物とか動物とかを狩って直接素材を売りに来るやつもいるから、色んな種類の装備があるよ」
「動物も?」
「うん。……内側の、肌触りの良い素材として……使われるね。あとは、防寒とか……かな」
「なるほど……」
意外と知らないことが多くてびっくりする。暗殺者時代は、死ぬのは前提な職業だったのでとにかく軽装軽装って感じだったから、新鮮だ。
「私これにするー!」
と言って、いずなさんが手にしたのは、真っ赤な二対の剣。セット商品のようで、炎をイメージした柄が特徴的な逸品だった
いずなさんは前衛のアタッカーらしい。
「じゃあ、俺はこれ。」
そういって鋼牙君が取ったのは、深淵のような濃い青の盾だった。これもセットで、短刀が着いている。
どうやら、鋼牙君はタンクのようだ。
「じゃあ……私たちはこれ……かな?」
「ちょうど色もあるし良いね!」
ロアちゃんとレイちゃんが選んだのは水色のロットと紫の杖。
ロアちゃんがロットで、レイちゃんが杖だが、体の大きさ的に杖がロット位の大きさがある。
2人は後衛、それぞれ、魔法と補助を担当しているらしい。
「私は……どうしよう」
ここで、迷ってしまった。暗殺者時代はひとりで行動が多かった為、前衛だった。他の者と任務をこなす時も、双方前衛であることが多く、それ以外の経験が薄い。
百鬼のパーティ的には中衛が欲しいところだろうと思うため、余計に悩んだが……
結局、草木に紛れる緑の、短剣と杖、という単独完結型の装備にすることにした。
これで接近戦も後衛魔法も出来るからだ。ある意味中衛っぽくはある。良いんじゃないだろうか。
そんな武器の選び方をしたら後日、
前衛の2人からは、護身術を、後衛の2人からは魔法を教わることになっていた。
……あれ、私、死ぬの前提で動きますって宣言したよね??
思ったより、この冒険者パーティは過保護なようである。
死ぬ前には「死にます」って宣言した方がいいかと思ってたけど、やめた方がいいかもしれないな
ポツリとそんなことを考えながら、今度は装備品を見に行った。




