冒険者ギルド
ギルドに着くと、まず、ギルド長に謁見を申し出た。
私が貴族ということもあって、すんなりと会ってもらうことが出来たが、向こうはとても不機嫌そうである。
まぁ、そうだろう。権力にものを言わせて無理やりあっているのだから、良い気はしないだろう。
でも、そんな態度では困るのだ。
「私が今から語るのは、王令だと認識してくださいそして、他言無用だとも。」
父ではなく、私が話し始めたことで、ギルド長の度肝を抜くことに成功したようだ。
驚いたような顔で、「ああ。」と返事を貰えた。
「私は、予知能力を手に入れました。このまま行くと、この国は戦争に巻き込まれます。
その戦争を阻止するために、各国と協力関係を結ぶ使者として、私が行く事になりました。」
「嬢ちゃんがか?」
「はい。私がです」
「……そんで、何が必要なんだ?このギルドに来る用事は無いだろう?」
「いいえ、あるのです。
民衆に気づかれないように使者をこなさなければならない為、冒険者の方に護衛を頼みたいのです。出来れば、種族がバラバラのパーティが好ましいです。」
「それは、使者として行くのにあたって大事なことなのか?」
「はい。とても大事なことです。
冒険者の方には、1種の里帰りとでも思っていただければと思っておりますが、
私は何しろ、知らない所へ行くのです。
その場所を知っている方が着いていることがどんなに心強いか。」
「なるほどな……」
うーんと顎に手をやり、悩む素振りを見せる
「そうだな、一つだけその条件をクリアするパーティがいるが……」
「……何かあったのですか?」
「今、別の任務で外に出ているんだ。戻って来しだい、話をしてみるが」
「それなら、そのパーティの方々の場所を教えてください。私が自分でお願いしに参ります。」
真剣にそう言うと、ギルド長は、目を細めた
「そうか……よっぽど大事なことのようだな。わかった。冒険者の居場所を教えよう。」
そう言って、地図を取り出すと、王都から左に向かったところにある街に丸をした
「ここに、冒険者パーティ、『百鬼』がいる。パーティーメンバー全員の種族が違って、パーティリーダーは、妖狐の女性で、いずなという名前だ。」
「『百鬼』のいずなさんですね。分かりました」
希望を上げてみるものだ。理想のパーティが見つかった。
あとは、任務を受けてくれるかどうかと、相手の人となりが問題だが……
「いずなは、変わったことが大好きなヤツだから、きっと依頼に飛びつくだろう。鬼族の奴も、里帰りを進められてたはずだ。ちょうどいいだろう」
という言葉を聞いて、運命がこのパーティを選べと言っているのかもしれないと感じるほどには、好条件が重なった。
「それでは、この冒険者の方に依頼をしてみます。ありがとうございました」
「おう、……なんだ、その、無理だけはすんなよ。」
「……あら、私が無理しそうに見えますか?」
「そこは子供らしく素直にうなづいとけ。」
こそばゆい心配をされて、少し心が暖かくなりながら、私はギルドを後にした。
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さて、ここからは単独行動である。
……と言うのも、父は仕事が忙しく、兄はその手伝いをするようになったからだ。
まあ、護衛として、ルナとトーマは着いてくるんだけど。
トーマの怪我は、前世の猛烈な魔法特訓の時に取得した回復魔法を、思い出しながら使ったら、効果があったらしく、動けるぐらいには良くなった。
そして、名実共に私の従者な訳だし、指導者のルナと離れる訳にも行かないと言った理由から、今回着いてきている。
「まずは、馬車を用意しなければなりませんね。」
ルナはそう言うと、街の馬車乗り場まで案内してくれた。
何台も馬車が止まっており、運転手と思わしき人達が、それぞれ声を上げ、お客を募っている。
ルナは、「少々お待ちください」と言うと、1人の運転手に近づき、交渉を始めた。
私はトーマと一緒に、馬車乗り場から少し離れたところでルナを待つことにする。
「(トーマ、少しは言葉を覚えられましたか?)」
「(はい、寝る前に付きっきりで教えていただいてるので、直ぐに覚えられそうです。)リーシャ様」
「あら?シアでいいと言ったのに」
「(そういう訳には行きません。ご主人様なのですから。)」
「(それもそうね。)」
「お待たせしました。リーシャ様」
簡単な会話をしていると、ルナが交渉を終えて帰ってきた
「相乗りになるそうですが、よろしいでしょうか?」
「ええ。私は大丈夫よ。トーマは?」
「(大丈夫です)」
「大丈夫だそうよ。」
「それなら、こちらです」
ルナの案内で馬車に近づくと、綺麗な白馬が出迎えてくれた。
「馬車に白馬は珍しいわね」
「こいつぁ気性が荒くてね。馬乗りするのには向いてないんでさぁ。それに、こいつ自身は走るのが好きな馬でね力もありあまってるし馬車馬にもってこいな性格をしてるんでさぁ」
「なるほど、こんな綺麗な毛並みなら、貴族にでも与えることは出来たでしょうに……よろしいの?」
「それで馬が不幸になるよりは全然問題ないさぁ」
運転手の方と会話をすると、ルナの目利きがとても良いことが分かる。
ルナは、音で魂の善悪を判断しているらしいのだ
魔法の一種らしいが、私には仕組みが分からなかった。ルナ特有の特技だと思うことにしよう。
すっかり白馬が気に入った私は、顔に手を近づけると、白馬はスリスリと擦り寄ってくれた
「こりゃぁたまげた。1発で懐いちまうなんて、お嬢ちゃん聖女かなんかかい?」
運転手さんが驚いてそんなことを言うが、1番驚いているのは私である。
犬や猫には嫌われてるため、動物から嫌われてると思っていたからだ。
(思い返してみれば、動物に嫌われたのは前世の時か。野営も当たり前だったから、野生の動物の血の匂いでも着いていたせいかもしれない。そう考えると、今世のなんと幸せなことか)
甘えてくる白馬に、撫でる手を止めずにいると、
そろそろ出発すると運転手さんが声をかけてきた
白馬は少し不満そうに離れたが、私が客席に乗ったのを見ると、張り切るようにブルルルっと鳴いた
「また1匹虜に……」
ルナがなにか呟いてたが、聞いてもはぐらかされたので深くは聞かないでおくことにした。
運転手の言う「早い」は本当だったらしく、数時間で目的地の街まで着いた。
馬車に乗ってる間、トーマの言葉の勉強をしてたが、いつの間にか手話に興味を持ったらしい相乗りした子供に手話を教える事になっていた
聞けば、妹が耳の聞こえづらい病気らしい
お姉ちゃんになったんだからと張り切るその姿は、とても微笑ましかった。
……とまあ、街に着いたからには、まずは冒険者ギルドに向かう事になる。
子供とその母親にバイバイと手を振って、馬車乗り場からギルドへと歩いていった。




