襲撃の顛末
翌日、王城に呼ばれた。
内容は分かりきっている。襲撃があったか否か、阻止できたかどうかの結果発表だ
と言っても、新聞に何も乗ってない時点で、襲撃が行われたとしても、被害は出ていないようである。
となると、問題は、襲撃があったか否かの問題だが……
「襲撃はあっただろう。私の家に」
と父が言う。
確かに襲撃は来たが、王に話した者では無いので予知の証明にはならない。残念ながら。
「父上なりの冗談だろう。流してやるといい」
「あ、なるほど……そういたしますわ」
「息子と娘が冷たい……」
一緒に乗ってた兄がフォロー?してくれたおかげで、気分が少し落ち着く。
……なるほど、私は緊張していたのか。
「ごほん、実を言うとだな、襲撃にあうことになっていた者の中に旧知の仲の者がいてな。昨日の時点で魔法を飛ばして連絡をとってある。
こちらと同じように、弓での襲撃だったようだ。
……それも、妖狐の国の矢だ。リーシャ達を襲った矢と同じ、な。」
「妖狐の国の国の矢……目的は、戦争を起こさせるためでしょうね。問題は、どうやって矢を手に入れたのか……」
「ふむ、本当に妖狐の国の者が手配したとは思わないのだな?」
「襲撃自体は建前で、戦争を起こさせるのが本音だと思われますそうでないと、私が予知した、戦争を起こさないように国を回るという行動が矛盾してしまいます」
戦争を起こさせようとした依頼人と、戦争を阻止しようとした依頼人は別人であった。
となると、今回の襲撃は前者のものの仕業で間違いない。
妖狐の国に意識を持って行かせて、後ろから国を支配してしまえば戦争を起こすのも国を自身の好きに動かすのも簡単なことだ
(こんなことを考えそうな貴族はおおよそ当たりが着く。王族が余程馬鹿でなければ近いうちにつかまるだろう)
襲撃が起こっているのが確定なら、私がやるのは、妖狐の国への疑いを消すことだ。
そこから、各国への協力願いを……休戦を願う使者として、各国へ向かうことが私のやるべき事だろう
疑いを晴らしさえすれば戦争は起きないのではいないのかって?
前世では、妖狐の国だけでなくその他の国もいつ戦争が起こってもおかしくない状態だった。
恐らく、各国でも戦争を起こしたいものが動いている可能性が高い。
各国を巡り、事件を解決して、協力関係を築く。
それが前世で仕事をしきれなかった自身への慰めになるだろう
(問題は、正規の使者として各国に行ったことがない、という点か。)
暗殺者だった頃は武力行使で話し合いの場を作ったので、何回も死に戻りした。
正規の使者として向かう今回は、死ぬことはそうそうないだろうが、事件を解決するという点で考えると、好きに動けないのは少し困るかもしれない。
だからと言って、敵国になるかもしれない国の使者をなんの囲いもなく放っておく国などいないだろう。
(ある程度自由が奪われるのを選んで信頼を取るか。
自由をとって、信頼を減らすか……)
取るべきは前者なのだろうが、何が起こるかわからない以上、ある程度の自由は欲しい……
そこは、相手への相談次第だろうか……?
どちらにせよ、今決めれることではなかった。
「王城に着いたぞ」
父のその声に、思考を一旦止めると、王との謁見へと向かった。
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襲撃があった旨を聞き、
馬車の中で考えていた内容を話すと、
王も私の意見に賛同してくれた。
そして、正式に使者として各国に行くことが決まった。
「我としては、城に残ってくれてもいいのだがな。魔法も相当な使い手なようだ」
「お言葉ですが、そのような希望は、戦争を止めた後にお考え下さい」
前世なら、相当な使い手と言われれば納得出来ただろうが、今世はまだ全然だ。
前世ですら、追ってに負けるような腕だったのだから、今世ではあの追ってをも抜かす勢いで修行をしなければならない。
魔力を練る訓練は前世の記憶で1発だったので魔力を増幅させてコントロールすることが今やるべき事だ。
正直、前世で得意だった拘束魔法も、短時間で解けてしまうほどまで腕が落ちていることに苛立ちを感じているほどだ。
……年齢からしたら、相当腕がたつ方なのだろうが。
(前世よりは効率的に増幅もコントロールもできている。前世と同じレベルまであげるにはまだ時間はかかりそうだが……。)
使者として行く先は、まずは妖狐の国と決めてある。
理由は、交渉材料の「情報」を既に手に入れてるからだ。
……と言うのも、妖狐の国への交渉材料は、「薬の情報」。エリクサーなどと呼ばれる類の幻の薬だ
実は、研究施設でエリクサーの作り方の情報を得て、前世ではそれで交渉が上手くいった。
後遺症が残ってしまったものの、薬で病気が治ったのだ。
今からなら、後遺症も残らないで済むだろう。病気自体は生まれつきだと言っていたから、病気にかかる予知をしましたと嘘をつく必要も無い。
(問題は、その情報をどこで手に入れたのか、だけれど……)
研究施設はまだ建ってない。先に教えることで、施設が建たなくなると、私の知っている未来に矛盾が生まれてしまう可能性がある
矛盾だけなら、まだ対応ができる。だけど、情報を手に入れた場所を誤魔化せたとしても、研究施設が建たない事で救えなくなる者も出てきてしまうはずだ……
(私は聖女でも神でもない。なんなら神にそむいてる存在なのかもしれない。それでも、国の平和のためにはやらなければならない……)
1を救う事で大を救うか、数字の分からない数のものを救う事で大を失うか。
選択肢としては前者が最もらしい回答である
(神よ。いらっしゃるのだとしたら、私は傲慢な選択肢をします)
大も小も救いたい。そのためには……
「陛下。事が済んだら、お願いしたいことがございます」
「む……それはなんだ?」
「研究施設を建ててください。難病に苦しむ者たちのための研究施設です。」
「ほぅ……?それをして、そなたに何の得がある?」
「得は……あるともないとも言えます。ですが、一つだけ言えるのは……私の予知で、救えないものを出したくないのです」
まんまの本心をぶつけると、陛下は面白そうに笑った
「随分と大きく出たな。全てが全て、救えるとは限らないのだぞ?」
「それでも、少しでも減らすことが出来るのなら、私は……私の心的には得をするのです」
「そうか、心的に、か。それならば、今すぐにでも建ててやろう。襲撃を予知したご褒美だ。」
「良いのですか……?」
「襲撃を受けたものによっては、警戒をしていなければ命がなかったであろう者もいた。そのものたちの命を救った褒美と、これからいくつもの命を救う褒美だと思えば、安いものよ。」
「ありがとうございます!」
これで、私が動くことでの矛盾が少しは減るといいのだが……
とにかく、動きやすくなったのは確かなことだ。
「それでは、正式な使者として、そなたを他国へ送る。準備が整い次第、出発するように。」
「兄上、護衛はつけて下さらないのですか?」
「護衛などいなくとも大丈夫だと思えたが……そうだな、冒険者ギルドで護衛を募るといい。その金額を含めて、旅で必要になるもののお金はこちらで出そう。」
「兄上!」
「お父様、いいの。いつ戦争になるか分からない状態で、信頼出来る護衛を手放すのは自殺行為だもの。
正式な使者だと分かるものさえあれば、それで何とかできるはずですわ」
「しかし……」
「大々的に動いて、市民たちが下手に不安がらないようにするのも王の務めです。私は冒険者とともに動く事で、普通の依頼とのカモフラージュになるとおもってますわ。」
「ふむ……」
お父様を黙らせると、王様は「では、行くが良い」と、帰城の合図をした
お辞儀をして後ろへと下がる。
そのまま部屋を出ると、善は急げと、冒険者ギルドに向かうことにした。




