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Idea  作者: ひのきそら
第三章 defenders of railgun
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清廉なる狂信者

「本部より緊急の連絡です! 現在基地内部、及び外部からフォール軍による攻撃を受けていると!」


「本部まで後どれくらいかかるの?」


「五分後には本部へ到着します!」


「分かったわ。全速力で向かって、各自戦闘準備を怠らないように!」


 アリス達が迎えの空母に乗り込み本部へ帰投する最中、ノエルのいる本部から緊急の要請が送られていた。冷静を装ってはいるものの、オリヴィエは焦燥と不安に支配されていた。


「基地内部ってことは、もう本部まで侵攻されとるっちゅうことなんか?」


「分からないわ。けれど、本部には大勢の兵とノエル指揮官がいる。そう簡単に本部が陥落することはありえない」


「ふむ。あの襲撃者が機兵団を食い止めていなければ、基地を挟撃されていたということか……」


 黒いコートの少年がとった行動により、最悪の事態は免れたものの、バロール軍が危機的状況であることには変わり無い。各々戦える者は気を引き締めこれから起こる戦闘に備え始める。そんな中、アリスは一人呆然と俯き座り込んでいた。様子が変だと勘付いた花音はアリスの手を握り顔を覗き込む。


「アリス、大丈夫?」


「花音ちゃん……はい、問題ありません」


「アイツに言われたこと、気にしてるんでしょ?」


 図星を突かれアリスは戸惑い再び目を下に落とす。明らかに手を抜いていた少年に手も足も出ずあしらわれ、この先に相対するであろう敵と戦えるのか。自分の実力を突き付けられたアリスは不安と落胆に苛まれていた。

 そんなアリスに花音は出会った時と変わらない笑顔で語りかける。


「心配する事ないよ。確かに、アイツが言ってたようにアタシは紡やオリヴィエみたいに戦い慣れてるない。でも、アタシ達は一人じゃない。みんなで力を合わせれば、どれだけ高い壁だって超えられるんだよ!」


「花音ちゃん……」


「大丈夫、みんなが出来ることを精一杯やれば、必ず勝機はある。だからそんな暗い顔しないで、ね?」


「はい、ありがとうございます!」


 花音の言葉で少しだけ肩の荷が降りた様な気がしたアリスは笑みを溢した。直後、本部上空に到着した空母の外から強烈な爆発音と戦う兵達の声が聞こえた。外の様子を見るアリスの目には、苛烈な攻撃を行うフォール軍の機兵団と不死身のフォール兵、それを必死に迎え討つバロール兵の姿が見えた。本部の様子は視認出来なかったが、まともに連携が取れていないことから内部への侵攻もかなり進んでいるのだろう。オリヴィエは空母のハッチを開けさせると乗り込んでいた兵と共に空母を飛び降り交戦を開始する。


「アタシ達も行くよ、アリス!」


「はい!」


 アイドル衣装へ姿を変えながら、アリスは花音と共に空母を飛び降りノーツを撃ち出しながらフォール兵を蹴散らしていく。先に降りていたオリヴィエは混乱している兵に指示を出し、なんとか態勢を立て直し始めていた。


「アリス、この場は任せる。拙僧は本部内の手助けに向かう!」


「お願いします!」


 アリスと花音に続いて空母から飛び降りた紡は刀を抜きながらそう言い放ち、群がるフォール兵の首を斬り落としながら本部へと駆け抜けていった。


 機兵団、不死身のフォール兵とアリス達が交戦する最中、優雅な足取りでアリスの前に歩み寄る修道服に身を包んだ女が近づいてきた。修道服はバロール兵の血に塗れ白い肌に飛び散った血を愛おしそうに舐めとった。


「お初にお目にかかります、アリス様。私、カサブランカ・アトランティスがお迎えに上がりました」


 カサブランカと名乗った女は悠然と礼をすると、目の前の惨状を気に止めず屈託のない笑顔でアリスを見据える。軽快を解くことなく、アリスは刀を構え鋭い目付きで睨み返した。


「あなた、カサブランカと言ったわね。あなたが不死身のフォール兵を生み出している元凶ね」


「ええ。我らが神の為に、彼らにはその尊い命を捧げていただきました。皆様にとっても、神にとっても喜ばしいことですわ」


「なにが神だ! 人の命を道具としてしか見てないでしょ! アンタ、まともな神経してないっての!」


「なんと嘆かわしい。私の行いは全て神への奉仕、決して人々の命や尊厳を軽んじてはおりませんわ」


 悲しげな表情でそう呟くカスブランカ目掛け、花音は容赦なくノーツの弾幕を撃ち出した。しかし、カサブランカは迫るノーツの弾幕を躱す素振りを見せず、立ち尽くしたままそれら全てを全身で受け止めた。アリス達が驚く中、カサブランカは全身を駆け巡る痛みに悶えるが、笑顔のまま不気味な笑い声を上げた。


「良い、良いですわ! この痛み! 痛みこそ神に奉仕し神へと近づく為の大いなる手段! もっと、もっと私に痛みをお与え下さい!」


「……狂ってる」


 花音の頬を冷や汗が伝う。カサブランカの放つ狂気に動けずにいたアリスと花音を横目に、オリヴィエは光銃を構え引き金を引きレーザーを撃ち出す。レーザーは文字通り光の速さで進み笑い声を上げるカサブランカの脳天を撃ち抜いた。数歩後ずさると、歪んだ笑みのまま血を吹き出しながら仰向けに倒れこんだ。


「ちょっ!」


「ここは戦場よ、隙を見せれば命を奪われる。人の命を自分の欲のために利用したんだから、卑怯なんて言わせないわ」


「勿論ですわ。その様な事を口にする気はございません」


「ッ!」


 脳天を撃ち抜かれたはずのカサブランカは平然と口を開くと、何事もなかったかの様に立ち上がった。驚きを隠せないアリス達を他所に、カサブランカは先ほどまでと変わらない不気味な笑顔のまま吹き出す血を操り刃の形状へと変化させる。


「良い痛みです。ですが、この程度ではまだまだ足りませんわ。このくらいはして頂かないと……」


 そう言った瞬間、カサブランカは血の刃で自らの心臓を貫き噴水の様に血を撒き散らす。流れ出る血は蠢きカサブランカの全身に纏わりつく。


「信じる神を知らない皆々様のため、私がこの身をもって神の御業……その一部をご覧に入れましょう」


「来るわ! 二人とも、油断しないで!」


「はい!」


「分かってるっての!」


 大量の血によってカサブランカの姿が見えなくなり巨大な血の球体となったかと思うと、四対の蜘蛛のような脚を出現させ不気味な眼光を発する怪物へと変貌した。血の怪物となったカサブランカの声が辺りに響く。


「我が名はカサブランカ・アトランティス。主命により、この世界に狂乱を撒き散らす者」

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