疑念は晴れ
ガロン川での戦闘を終え、意識を失ったアリスはオリヴィエと共に基地へと帰投し緊急治療を施されていた。幸い深い傷も無く命に別状はないと診断され、あてがわれた部屋でアリスは丸二日眠っていた。
「ん……」
「アリスはん! 花音はん、目覚ましたで!」
「アリス!」
目を覚ましたアリスを見た途端、花音は安堵しながら抱きしめる。まだ呆然としているアリスにお松はゆっくりと意識を失ってからのことを説明した。オリヴィエやその他作戦に参加した多くの兵がアリス達の解放を訴え、程なくして牢から今いる豪勢な部屋へと案内されたらしい。
「あの、オリヴィエさんはどちらに?」
「オリヴィエ? ああ、アイツは顔見せてないよ。アリスを危険な目に合わせたんだ、会ったら一発ぶん殴ってやんないと気が済まない!」
「まあまあお嬢。アリスも無事なんだし、俺たちの疑いも晴れたんだ。そうピリピリすんな」
「なに呑気なこと言ってんの! 一歩間違えれば死んでたかもしれないでしょ!」
「せやけど、騒動起こしてまた牢にぶち込まれるかもしれへんやろ。ここは大人しくしとき」
「懸命な判断ね」
花音の怒声が部屋の外まで聞こえていたのか、オリヴィエはそう呟きながら部屋へと入ってきた。血相を変えて手を振り上げる花音を、紡が割って入り宥める。
「そこどいて! ぶっ飛ばしてやる!」
「落ち着くのだ花音殿。彼女を殴ったところで、拙僧らに利は無いぞ」
「いいわ、殴られる覚悟で来たんですもの」
そう言うと驚く紡を他所にオリヴィエは深々と頭を下げ続ける。
「あなた達の仲間を危険に晒したのは、一重に私の判断ミス。謝ってどうにかなるとは思ってないわ。気の済むまで殴ってもらって構わない。本当にごめんなさい」
「……こう言っておるのだ。もういいだろう?」
「ッッッ! 分かったっての!」
やるせない様子で花音は拳を下ろすと背を向け椅子に荒々しく腰掛けた。顔を上げたオリヴィエは横になるアリスに歩み寄ると傷の様子を見ながら口を開いた。
「ありがとう、アリス。あなたのおかげで命拾いした兵もいるわ。今までのことも、ごめんなさい」
「いえ、いいんです」
「目を覚ましたばかりで大変でしょうけど、もし歩けるなら一緒に来てもらいたいの。ノエル司令官があなた達に会いたがっているわ」
「はい、問題ありません」
「それと、もう一度あなた達が戦ってきた敵について話してほしい。こちらも得ている情報を全て教えるわ。あなた達の……いえ、この世界の敵、"侵食者"についての情報を」




