脳ある鷹は己を隠す
「なんなのこのフォルム可愛すぎる! ぷっくりした輪郭に真っ白肌につぶらな瞳! 来ている服も確か……極東の島国の伝統衣装よね!? ここまで服に似合う造形は生半可な腕じゃあ出せないわね! そして極め付けは……」
「あ、あの……」
「きゃあああああああ!!!! そうそれ! 喋って動くこと! その愛らしい姿でちょこまか動いて可愛いお口でお話するとか信じられない! 可愛いの権化よあなたは! いけない、あなたの可愛らしさはこんなところで燻っちゃいけないわ! そうだ、今すぐあなたを軍の広告塔として起用出来るか上に掛け合ってみましょう!」
「そ、そない褒められてもなんも出えへんよ……」
早口で褒めちぎられ気をよくしたお松は頬を赤らめながら照れ笑いする。その姿を見たオリヴィエは堪らず悶絶しながらソファのクッションを掴み取り顔を埋めて叫び出した。
今この場に、理性のある者は誰一人としていない。
「オリヴィエ様、大きな声が聞こえましたが大丈夫ですか?」
扉の外から心配する兵の声が聞こえる。正気を取り戻したオリヴィエは慌てた様子で立ち上がると姿勢を正し凛とした表情で答える。
「ありがとう、問題無いわ。業務に戻ってちょうだい」
「はっ!」
「あんさん、情緒大丈夫か?」
「も、ももも問題無いわ! それよりも、発信機が無いかどうか調べさせてもらう」
「別に構へんけど、なんやあんさんに身体弄られるのは気ぃ引けるわぁ」
「な!? ま、ままま弄るだなんて! 私はそんなはしたないことはしないわよ!」
「わーかったから早よしい。そんで早うアリスはんに会わせてくれえな」
♢
「ちゅうことがあってな……」
「はぁ。それでそんな感じなんですね」
尋問室のアリスはお松を大事そうに抱きかかえたオリヴィエを拍子抜けした様子で見つめる。雪原で戦った時とは全く違うオリヴィエに少しだけ警戒心を解いたアリスは気を取り直し、自分達の経緯を話し始めた。アリスの説明が終わる頃には、オリヴィエは元の冷たい表情に戻っていた。
「概ね把握は出来たわ。あなたの言葉が本当なら、私の世界にもいずれ危機が訪れるということね」
「はい。ですから、私たちは一刻も早くIdeaを侵食した元凶、侵食者を倒さなきゃいけないんです」
「侵食者……思い当たる節があるわね」
「ッ!? それ、詳しくお聞かせください!」
「まだ私はあなた達を信用していないわ。信用が無い以上、軍にとって不利益になる可能性がある情報は与えられない」
「……じゃあ、どうすれば?」
そうね、と呟きしばらく考え込むオリヴィエだったが、何かを思いついた様にニヤリと口角を上げ口を開く。
「あなた達がフォール軍側の人間ではないということを証明してもらいましょうか。そうすれば、私達の信頼も得られるしバロール軍にも利益がある」
「証明って言っても、どうすれば……」
「あなた、私と一緒に戦場へ出なさい。そこで十分な戦果を上げることが出来れば、あなた達を信用してあげる」




