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Idea  作者: ひのきそら
第三章 defenders of railgun
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不可視の悪魔

「甘いわね、視界を遮った程度で私から逃げられると思わない方がいいわよ」


「そこまでです!」


 車の移動速度、撃ち出されるレーザーの弾道速度、進路の予測。それら全てを緻密に計算し、オリヴィエは迷うことなく引き金を引き続ける。しかし、舞い上がる雪に姿を隠しアリスに気づくことが出来ず接近を許してしまう。


 咄嗟に飛び退き振り下ろされた刀を紙一重で躱すと、透明化が解除されアリスの前に姿を現した。


「私たちに敵意はありません、どうかその銃を下ろしてください!」


「そちらに敵意が無いなんて私には関係無いわ。我が領土に許可無く踏み入った以上、私はあなた達を撃ち抜くだけよ」


「お願いです、先ずは話を聞いて下さい!」


「問答は必要無いわ、可愛らしい侍さん!」


 再び透明化したオリヴィエは銃を構えアリス目掛けて引き金を引く。レーザーが撃ち出される直前、蛍光色の光が銃口に灯る瞬間を見逃さずアリスは身を翻しながらレーザーを避け刀を振るう。姿が見えない敵との戦い、加えて極度の氷点下という状況が、アリスを劣勢に追い込んでいた。


 寒さで手は悴み身体が思う様に動かない。過酷な環境下での戦いに慣れているオリヴィエは常に移動し続け自身の居場所を把握させずアリスを錯乱させる。


「くっ!」


「足元がお留守よ」


「なっ!」


 足元に投げ込まれていた白いキューブが発光した瞬間、機械音と共に電流の檻が形成されアリスを隔離した。身動きが取れないアリスは脱出を図るものの、高圧の電流がそれを許さない。


「フォール軍に雇われた傭兵ってとこかしらね。まあ、私の敵ではないけれど」


「待って下さい! 私たちは別の世界からこちらに辿り着いたばかりなんです!」


「命乞いするならもっとマシな言い訳をすることね……ん?」


 説得を試みるアリスに構うことなく銃を向けたオリヴィエだったが、無線から聞こえた指示を受け動きを止める。しばらくの口論の後、舌打ちしながらオリヴィエは銃を下ろし透明化を解除した。


「あなた、運が良いわね」


「え?」


 困惑するアリスを突風が襲う。何事かと上を見上げると、そこには巨大な宇宙船の様な物体が浮遊していた。よく見ると、アリスを捉えているものと同じ、電流の檻に囚われた花音達の姿が見える。宇宙船の側面からは無数の銃口がアリスに向けられていた。


「あなたのお仲間さんは私の仲間が捕まえたわ。無駄な抵抗はしないで大人しくしていなさい」


「花音ちゃん達を解放して下さい!」


「口を閉じなさい」


 オリヴィエは冷たい目付きのまま、電流の檻越しにアリスに銃口を向ける。


「状況を理解しなさい。あなたの一挙手一投足で、あなたの命も仲間の命も失うことになるのよ」


「……っ」


 唇を噛み締めたまま、アリスは刀を鞘に納め元の学生服へと姿を変え両手を上げた。


 それでいいわ、と呟きオリヴィエは銃を下ろすと宇宙船へ指示を出し電流の檻に入れられたアリスを浮遊させ内部へと収監する。


「あなたたちの尋問は基地についてから行う。それまで、くれぐれも妙な気を起こさないことね」


 遅れて宇宙船へ入ってきたオリヴィエはそう言い残し、アリスの前から姿を消した。

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