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Idea  作者: ひのきそら
第二章 妖魔剣聖譚
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新たな仲間

「話は聞かせてもらった。里の守護は我ら一族が命を掛けて果たそう」


「しかし……」


「世界の危機なのだろう? この世界だけを守ったとしても意味が無い。それを理解出来ぬ訳ではあるまい?」


 銀狼に諭され紡は目を瞑る。しばらくの静寂の後、目を開け決心がついた瞳でアリスに向き直り口を開いた。


「あい分かった。世界を守る為、其方らの旅路に付き添おう」


「っ! ありがとうございます!」


「だがまあ、今日のところは里の皆と共に休まれよ。出立は明日一番ということでどうか?」


「はい!」


 アリスは差し出された紡の手を握る。新たな仲間を迎え入れたアリスは、賑わう群衆の真ん中で歌い踊る花音の元へ駆け出して行った。





 翌朝。アリス達と共に旅立つ紡を見送る為、里の住人全員が門の前に集まった。車の修理が完了した様で、上機嫌な龍二はけたたましいエンジン音を轟かせる。


「そういえばお松さん。別の世界に行く方法ってどうするんですか? この世界に来た時は、このペンダントに助けてもらいましたけど」


「そうやった。話とらんかったな、実はな……」


 思い出したかの様にお松は話し始める。龍二とお松の世界が崩壊する直前、二人の前に突然現れた白髪の少女が手を貸してくれたらしい。強く念じることで、世界を渡るための扉が開くと伝えいつの間にか消えていたという。


「な、なるほど……あの、本当にそれだけで世界を渡れるんでしょうか?」


「まあものは試しや、ウチが念じてみるさかい。なあに心配せんでもええ、ウチは齢千を超える付喪神やからな!」


 得意げにそう言ってお松は目を閉じ唸る。が、待てども待てども世界を渡るための扉は現れない。しばらくそうしていると、お松は顔を真っ赤にして怒りを爆発させる。


「全っ然出てこうへんやんか! なんやあの娘! ウチらにホラ吹いたんか!?」


「ちょっと、大丈夫なの? アタシ達、この世界に閉じ込められたなんてオチ絶対許せないんだけど!」


「分かっとる! でも、出てこうへんやからしょうがないやろ!」


 お松と花音が口論する間、アリスは目を閉じペンダントを握りしめて念じる。すると、ペンダントに光が灯り前方に飛び出し空間が歪み光の輪が現れた。


「あ、あの……」


「アリスはん、ちょっと待っとってな! ウチが絶対扉開けるさかい!」


「あ、いえ、多分扉、開きましたよ」


「はえ!?」


 間抜けな声を上げたお松は光の輪を見るや否や、恥ずかしそうに顔を赤らめアリスの胸に飛び込んだ。悶絶するお松を他所に、一行は車に乗り込む。別れを済ませた紡が乗り込もうとした直前、駆け寄って来た梅が抱きつき涙を流す。


「紡兄、遠くに行っちゃうの?」


「梅……ああ、だがすぐ戻る」


「本当に? 絶対だよ?」


「約束しよう、必ず無事に帰ると。母君のこと、里のことを頼んだぞ」


「うん!」


 紡は頭を撫で車に乗り込む。銀狼の遠吠えが響く。彼等なりの激励であるのか、遠吠えは途切れることなく木霊していた。


「んじゃ、行くか! 次の世界によ!」


「お願いします!」


「龍二、安全運転で頼むよ」


 銀狼の遠吠えを背に、車は勢いよく発進して光の輪へと入り込み新たな世界へと旅立って行った。










 極寒の白銀世界。粉雪がチラつく雪原の中、少女の声だけが聞こえてくる。


「こちらオリヴィエ、応答願います」


「こちらノエル、どうした?」


 無線機越しと思われるノイズ混じりの声が響く。オリヴィエと名乗った無機質な声の主は、姿を現すことなく答える。


「一キロ前方に正体不明の車両を発見しました。射撃許可を」


「正体不明の車両? フォール軍の物か?」


「分かりません。見たところかなり昔の自家用車の様です。こちらの油断を誘うための罠かと」


「分かった、射撃を許可する。何人たりとも、我が領土に踏み入らせるな」


「了解」


 風が雪を巻き上げる。通信を終えた声の主は、透明化していたのか、足元から徐々にその姿を露わにする。分厚い防寒ブーツを履き羽毛のコートを羽織る軍服姿の少女がいた。腰まで伸びる艶やかな金髪が美しく風に靡く。雪の様に白い肌、宝石の様な紫色の瞳、人形と見紛うほどの整った顔立ちの彼女は、前方で爆走する車を見据えていた。

 手に持つ大型のライフルを構え、スコープ越しに車を確認する。


「誰かは知らないけど、私の国に土足で入る者は一人残らず撃ち殺す」

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