水龍神の巫女
「あっはははははははは! いいねえいいねえ! グランのおっさんに聞いてた通り中々やるじゃない!」
「ったく、こっちは病み上がりで身体が訛ってるんだから、少しは休ませろっての!」
里中に悲鳴が木霊する中、目を覚ましたばかりの花音と純白の刀を携えたミノリが激闘を繰り広げていた。
♢
アリスと紡が黒い妖魔と激突していた頃まで時間は遡る。門を破壊したミノリは頬を赤らめ嬉しそうに里を蹂躙する妖魔を見つめていた。
「その調子! 老若男女関係無く、残らず皆殺しにするんだよー!」
「団子娘! あんた、なんちゅうことをしてくれたんや!」
「そう怒んないでよお人形さん。せっかくの可愛いお顔が台無しだよ?」
「やかましいわ! このタイミングで里を襲ったってことはや、あんたも妖魔の仲間なんか!?」
「やだなあ、あんなむさ苦しい生き物と一緒にしないでよ」
笑みを崩すことなく陽気に踊りながらミノリは上機嫌で水を操ると龍の姿に変え里を守る竹垣を破壊する。喰い止めようと放った龍二の弾丸を難なく刀で弾き飛ばし無邪気に笑いながら口を開いた。
「でも効率的でしょ? この世界の化け物を利用するんだから、ローリスクハイリターンってやつだよ!」
「前にもお前さんと同じ様に世界を滅ぼした輩がいた。お前さんの目的もそいつと同じなのか?」
「ああ、グランのおっさんのこと? 情けないよねえ、返り討ちにされた挙句に取り逃してるんだもん」
「質問に答え!」
せっかちだなあ、と呟いたミノリから今までの笑みが消えた。足元から闇が溢れ出し、大量のバグズを出現させると黒い粘膜へと姿を変え、操っていた水と融合し漆黒の龍となり従える。
「そうだよ、私たちの目的はこの世界、Ideaを壊すこと。まあ、私はあの女が作ったこの里を滅茶苦茶に出来ればそれで良いんだけどね」
「あんたらの目的はなんなんや!? Ideaが消えて無くなれば、あんたらも消えてまうやろ!」
「正確にはIdeaを新しく作り替える、かな。その為に、私たち"侵食者"は世界を破壊して回ってる」
ミノリが言い終えると、漆黒の龍は大口を開け龍二とお松に迫る。弾丸を放ち迎撃するが流体の身体を持つ漆黒の龍には意味を為さない。
龍が二人を飲み込もうとした直後、上空から大量のノーツが降り注ぎ口を開けていた龍を爆散させた。
「花音はん! 良かった、目ぇ覚めたんやな!」
「おまたせ! なんかヤバい状況みたいだね。アリスはどこ?」
「今はここにはおらん。紡はんっちゅう虚無僧と黒い妖魔を倒しに向かったんや!」
「虚無僧……? 妖魔……? よく分かんないけど、とにかくアリスに知らせた方がいいってことね、なら!」
すんでのところで駆けつけた花音はノーツを展開してミノリと相対する。ノーツを集約させ、淡い光の粒となった光球を空へ撃ち出し里全体が照らされるほどの光を放つ。再び飛び散った水を操り漆黒の龍を復活させたミノリは邪悪に顔を歪ませながら語りかけた。
「貴女のことも聞いてるよ。たった一人で無意味に戦ってた女の子がいたってね」
「初対面でこんなに苛ついたのは初めてかも。アンタ、無事でいられると思わない方がいいよ」
「いいねえ! その威勢、どこまで持つかなあ!」
龍を傍に侍らせ、ミノリは花音に接敵する。ノーツを撃ち出し応戦し振るわれる刀を身を翻してなんとか躱していく。
「龍二、お松と一緒に他の人たちと逃げて!」
「アリスが戻るまで持ち堪えられるか!?」
「任せて、トップアイドルを甘く見ないでよ!」
花音は全身に光を纏わせ、龍の背に乗り迫るミノリをノーツと共に流星の如き勢いで衝突した。




