漂着、次の世界
「アリスはん! アリスはん大丈夫か!?」
心配するお松の声が耳に入り、アリスは目を開けた。花音の世界で目を覚ました直後に襲ったノイズと頭痛に再び苛まれ、アリスは数分ほど意識を失っていた。流れ込んできた覚えの無い映像に困惑しながらも、アリスはもう大丈夫と言いながら外に目をやる。
「ここは……別の世界、ですか?」
「せや。なんとかみんな無事に切り抜けられたみたいやな」
隣に座る花音は目を覚ます様子は無い。体に目立った傷は見当たらないがあれだけ激しい戦闘の直後、精神的な疲労やダメージが残っているだろう。龍二は外に出て車のボンネット内のメンテナンスをしているようで工具を持ちながら悪戦苦闘していた。
「今のところバグズは見えへんけど、いつどこから現れるかも分からへん。早いとこ、この世界の住人に会えればええんやけどな」
お松を抱えて車を降り辺りを見回す。木漏れ日が差し込み柔らかい風が木々の隙間を吹き抜ける。穏やかで静かな時が流れる世界。絶えず死の危険に晒されていた花音の世界とは違い安心して気を休めることが出来た。いつの間にかアリスの着る服も花音に似た衣装から元の学生服に戻っている。
苦虫を噛み潰した様な顔でボンネットを閉じた龍二は煙草に火をつけ大きくため息を吐いて車にもたれかかる。
「どやった?」
「応急処置はしたが、いつ動かなくなってもおかしくねえ。ゆっくりメンテナンス出来りゃいいんだが、ずっとここに留まるのも危ねえしな」
考えあぐねる三人。ひとまずこの場を離れこの世界の住人に接触することを決め再び車に乗り込もうとした時、遠方から甲高い悲鳴が響き渡った。
「きゃあああああああ!」
「ッ! 今の!」
「おい待て、アリス!」
龍二の静止も聞かず、アリスは弾ける様に悲鳴の聞こえた方向へと駆け出していた。身体に光を纏い、一瞬でアイドル衣装を纏うと両足に光を集約し高速で木々の間を駆け抜ける。
「龍二さんは花音ちゃんの側にいてあげてください! 様子を見てきます!」
「あーもう! まだバグズが何処におるかも分からへんのに突っ走って! 花音はんに似てきとるで!」




