終わる世界
「なんで! なんでこのタイミングやねん!」
お松の怒声が車内に響く。必死に車のキーを回すが車は微動だにせず、なす術の無いアリス達を地割れが容赦なく飲み込んだ。空が急激に遠ざかり底が無い奈落へ落ちていく。
「こない死に方嫌やああああああ!」
それぞれが死を覚悟したその時、アリスのペンダントが再び光を放つ。奈落へ落ちていたはずの車は光に包まれ、時間が止まったかのようにその場に留まり全く動く気配が無かったエンジンが稼働した。ペンダントの光が真っ直ぐ前に伸びたかと思うと目の前に淡い光の輪を出現させた。
「こりゃどういうこった?」
「……龍二さん、このままあの光の輪に向かって進んで下さい!」
光の輪の先が何処なのか、どうなっているのか分からない。けれど、この窮地を脱することが出来るという確信がアリスにはあった。一か八かだ、と龍二はアクセルを限界まで踏み込み車を発進させる。落ちてくる瓦礫や建物を避け続け車は光の輪の中へと侵入した。
アリス達を乗せた車が光の輪に入った直後、世界を完全に闇が覆い例外無く奈落の底へ沈んだ。星の悲鳴のような地鳴りを最後に、音も光も無い無となった。
♢
「ここは……一体」
小鳥の囀りが聞こえる。風に煽られる木々のざわめきが聞こえる。空から差し込む、優しい木漏れ日が見えた。
どこかの山中なのだろう、青青しい竹林が空高く伸び、地面には様々な植物が自生している。周囲が静寂に包まれる中、車のエンジン音が木霊していた。




