決戦#1
巨大———。見上げる程に巨大な体躯が目の前に聳え立つ。周囲の建物とほぼ同程度の増産バグズに比べると、バグズ達や花音とアリスなど蟻ほどの大きさに見えているだろう。想像以上のスケールのデカさにアリスは言葉が出なかった。バグズ達とは違い手足に鉤爪は無く人の手足と同様の形状をしている。一見すると漆黒の巨人にしか見えないが、体中至る所から続々とバグズが量産されている。不気味な眼光を放つ目を眼下に下ろし、花音とアリスを視認した増産バグズが巨大な口を目一杯開き大気を震わせるほどの咆哮を上げると、バグズ達は狂ったように声を荒げ一斉に襲いかかる。
「上等ッ!」
秋葉駅前のバグズとは明らかに様相が違う。数もそうだが一体一体の勢いが凄まじく、殺意も狂気も苛烈になっていた。花音は冷静に津波の如く押し寄せるバグズを無数のノーツで迎え討つ。あくまでも狙いはアリスであるらしく、バグズ達は花音に目もくれず一直線にアリス目掛けて突進している。
「アンタ達がアリスを狙う理由は知らないけど、アタシを無視するとか良い度胸してんじゃない!」
花音が手を掲げるとノーツは一点に集中して巨大な光球へと変化する。アリスを助けた日に見せた大技を増産バグズは察したのか、咆哮を上げてアリスを狙っていたバグズを呼び戻し分厚い肉の壁とした。
「Splash Shooting Star!」
光球がミサイルの如く撃ち出されバグズの壁を一瞬で粉砕する。だが、湯水のように湧き出るバグズにとっては擦り傷にもならない。バグズ達は標的を花音に変え、螺旋を描くように花音を取り囲むと突風が巻き起こり花音の視界と聴覚を奪う。
「かの…………え……!」
微かに取り囲むバグズ達の外からアリスの叫ぶ声が聞こえるが、けたたましい奇声と雑音で上手く聞き取ることが出来ない。花音がアリスがいる方向にノーツを擊ち出しバグズを蹴散らすと、必死に上を指差しながら叫ぶ姿が見えた。
「花音ちゃん、上!」
花音がアリスの指差す先を見ると、今まで動かなかった増産バグズが両腕を振り上げ取り囲んでいるバグズごと花音を押し潰さんとしている様子が見えた。




