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イケメン上司とボク  作者: 夏目 碧央


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20/26

別れの日

 仁さんは酒を持ってやってきた。コンビニで買ったと思われる缶ビールと、スルメなどのつまみも持って来てくれた。

「グラスもないだろうと思って、ビールにしたよ。これなら缶のままでいいだろ?」

仁さんは言った。プシュッと缶を開け、乾杯した。何もない壁に寄りかかって座る。

「なんでこんな事になっちゃったんでしょうね。」

つい、呟く。

「……うん。」

仁さんが相槌を打つ。そして、二人黙って飲む。

「成海、俺……福岡行くよ。毎週とは行かないと思うけど、1ヶ月に1回は行くから。」

仁さんが言った。

「じゃあ俺も、1ヶ月に1回は東京に来ます。そうしたら、2週間に1回くらい会えるって事ですよね?」

俺がそう言うと、仁さんは俺の顔を見て頷いた。

 どちらからともなく、キスをする。大丈夫、そんなに遠くない。それでも、毎日会っていた今までと比べたら、寂しくて、心配で、心が折れそうになる。

「成海、浮気するなよ……」

「仁さんこそ……」

そんな事を言いながら、キスを繰り返す二人。そして、やっぱり吉沢さんにメッセージを送るのは辞めようと思った俺。そんな事から浮気が疑われるのだ。仁さんが他の人にプライベートな連絡をしたら、俺は嫌だから。

「今日は、最後までしていいよ。」

仁さんが囁いた。

「え、大丈夫ですか?」

「うん。大丈夫。覚悟出来たから。」

少しずつ練習をしてきた俺たちのセックスも、とうとう本番を迎える。ベッドではなく、床にタオルケットを敷いた上で。

「成海、来い!」

「は、はい!」

「う、うう……」

「仁さん、大丈夫ですか?」

「だいじょう……ぶ……」

お互いにまだ不慣れだけれど、一つになれた。


 「それじゃあ、気を付けて。」

「はい。仁さん、お元気で。あ、着いたら電話します。」

空港まで送ってくれた仁さんに別れを告げた。手を握っても変に思われないように、俺は握手を求めた。仁さんが俺の手を握る。握手をして、その手を静かに放す。指先が離れるその瞬間まで、仁さんの手の感触を味わった。仁さんがニッコリ笑う。俺も笑う。そして仁さんに背を向けた。


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