9P クライマックスとサドンデス
サドンデスで勝ちあがる英雄。
残り10分を切り、各チームに動きがあった。
パーラー軍の田中と鈴木の常連コンビに、ついにさかな群から初当たりが訪れたのだった。
思わず手を叩いて喜ぶ鈴木おばあだったが、まさか当たらないだろうと玉を打ち尽くしてしまい、愕然途方にくれてしまう。
このままでは強制パンク(大当たりの権利が消える)してしまうのを待つのみだった。
虚しく玉を飛ばすことが出来ない発射台の音だけがカシャーン、カシャーンと響いている。
「どうしよう」 今にも泣きそうな鈴木。
「ほらよ」
田中は自分の全ての残り玉を彼女の台の上皿へと移す。
「・・・アンタ」
ぱっと表情を輝かせる鈴木に、
「ま、しょうがない。頼んだぞ」
田中は笑ってサムアップをした。 「・・・・・・」
「・・・・・・」
ふたりは固く抱き合い、友情を確かめ合った。 「それは果たして友情か・・・愛かっ!」
虎徹のツッコミが入るが二人の熱い抱擁は止まらない。
さて他のパーラー軍たちの戦況は、ジグマ加藤は羽根物で順調に出玉を伸ばし続け、スロプロガリけんはすでに敗退、店長岸も指定台でそれなりに当たりを稼ぎ着実に玉を増やしていた。
そして康治達は・・・。
「・・・・・・」
カシャーン、カシャーン。
発射台の音が鳴り、出玉をすべて失った康治は天を仰いだ。
「まさかこの俺が不覚をとるとは・・・」
と呟いた。
カシャーン、カシャーン。
「あ・・・終わりましたわ」
エリザは右打ち全開の無駄打ちで、戦いの土俵にも立たず玉をロストしていた。
カシャーン、カシャーン。
「・・・私も」
エマはエリザに倣い同様の打ち方をしたため、ほぼ同時にすべての玉を打ち切ってしまう。
「ほほほほですう」
そんな3人をよそに、年の功かヒルダは確変5連チャンを達成させ、足元にドル箱を並べていた。 「・・・・・・」
エスメラルダは結局、あまりのホールの爆音で耳栓では事足りず、両手で耳を抑えていたため結局一発も打つことなく、終了時間を迎えてしまうのであった。
「そこまでっ!」
天上のジンの声か響く。
「おっとぉ!ここで終了の合図だっ!それでは衝撃の結果発表っ!勝ち抜け一位ヒルダ様7200発、二位ジグマ加藤5555発っ!三位店長岸5026発、四位たばこ屋鈴木さん3212発、五位エスメラルダ様2000発・・・以下、康治様、エリザ様、エマ様、肉屋田中さん、スロプロガリけんの0玉・・・なんとっ!これは・・・6番手全員出玉ナシ・・・どうする主催者っ!」
虎徹は天に向かって叫んだ。
「・・・延長戦だ」
苦渋の声が聞こえる。
負け犬たちの顔が綻ぶ。
天上よりジンの声が響く。
「このヘタクソどもめ。しょうがない、それでは延長戦はサドンデスの早がけ勝負とする。ホール内にある機種で一番早く当たりを引いた者が二回戦への進出となるのだ」
マスタージンはそう宣言する。
「さあ、急遽サドンデス延長戦となりました。この戦いこのホールにあるすべての台の中から選び誰よりも早く当たりを引くことで次への扉が開かれるのです。果たして6人目は誰となるのかっ。そしてこの戦いはどの台を選ぶか、その選択戦略が重要となるっ!よーい、スターティン!」
虎徹の開始とともに康治たちLoserはWinnerを目指し駆けだす。
「こっちだ!」
康治はエリザとエマを手招きしてスロットコーナーへと誘い向かう。
そしてスロプロガリけんも続き、4人はほぼ同じ台に座った。
その台は「GO GO・ジャグリング」である。
盤面の左隅にあるGO GOランプが光ったら大当たりとなるシンプルな台であった。
ちなみに肉屋の田中は引き続き「うみ物語」で勝負挑んでいる。
康治はみんなに着座を促し、
「とにかく回せ」 と言った。
「どうやって」 と困惑するエマに、
「見てろ。コインを入れてレバーを叩いてボタンを3つぽんぽんぽんと押す。これの繰り返しだ」
康治は実践してみせる。
「わかりましたわ」 エリザは頷き、康治に倣う。
そんな様子をガリけんはちらりと一瞥し、
「この機種を選ぶとは流石といったところか。初当たりを早目に得ようとするならば、パチンコより回せるスロットだ。そして中でもAタイプ、とにかくブン回して光らせればいいのだから・・・だが、ふふふ、俺に勝てるかな、自称スロプロは伊達じゃないぜ。俺はもうすでに唯一の高設定台に座っている。そして俺は今ひたすら最速で最短で回している・・・勝っ・・・」
ガリけんはリールの出目を見て、次にヘイヘイランプが光るのを確信した。
第三ボタンを親指でグリグリとねじり勝利のボタンを外そうとする。
が、 「ペカった!」 と康治がコンマ数秒の差にて先ペカで当たりを引いたのだった。
「だにぃ!」
ぺかっ。
ガリけんはランプを光らせ、先陣を切れなかったことを悔やみ天を仰いだ。
「くわ~っ!一度ならず二度までもっ!」
ちなみに「うみ物語」の田中は、同時にさかな群が二度も走ったがハズレてしまった。
彼はその後台パン(外れた腹いせに台にパンチをお見舞いする)してしまい、副店長に羽交い締めされたのち、裏の事務所へ連行されてしまったのだった。
「勝者!康治様っ!」
虎徹は高らかに勝者の名を叫ぶ。
「よっしゃあああ!」
彼は高々と右拳を掲げた。
渋いぜ。




