12P 決勝戦からの急転直下
なんという。
康治が真っ先に座ったのは、一回戦でジグマ加藤が打っていた、羽根物の台だった。
確実に勝てる台を彼は選んだのだった。
同じくその台を狙っていた加藤は舌打ちをしてその場を離れた。
康治はハンドルを捻り打ち始める。
元よりジグマプロが狙っていた台が悪いはずもなく、3時間が経過した時点で、10R当たりにも恵まれ出玉は5000発を越えていた。
「よし」 康治は意を決して「うみ物語」のコーナーへと移る。
それを見逃さないのが、ジグマ加藤、即座に彼が離れた台をゲットする。
「おい英雄」
ジグマ加藤は去り際の後ろ姿に言う。
「なんだよ」 康治は振り返りもせず言った。
「この台は良台だせ」
「知っている。だが、それじゃ勝てない」
そうなのである。
店長岸が「ホク卜の拳」で大連チャンをかまし、すでにメダル3000枚を超え、バトルボーナスはなおも継続中だったのである。
康治は羽根物では勝機は薄いとみたのであった。
彼は銀玉の入った3箱を軽々と抱え
「うみ物語」のコーナーへと向かったのだった。
「・・・これだな」
先程ヒルダが打っていた台に座り打ち始める。
「この台は波が来ている。30の倍数がチャンスで、あと100回転以内に狸群がキットクル・・・そう谷〇御大も言っていた」
「〇村さんって誰?」 というエマに、
「・・・なんとなくだけど、ツッコまない方が安全だと思いますの」 と、エリザはなにかを察し言った。
果たして、打ち始めて30回転目、見事にさかな群から確変をゲットし、あれよと7連チャンを達成し、康治の出玉は15000発に到達した。
5時間を経過、彼はその出玉をメダルへと交換し、肉薄する店長岸の隣へと座った。
その差はメダルにすると300枚ほど岸がリードしている。
「・・・康治さん。私の隣に来るとは」
「圧をかけにきたぜ」
康治は不敵な笑みを浮かべる。
店長は首をすくめ、
「ふふふ、それはどうでしょう?私どものパチンコ屋は弱小・・・自分で言うのもなんですが、隣同士で高設定が入っているとは考えづらいでしょう」
「そうだろうな」
「では、何故」
「気合で出すからだよ」
「面白い。その気合いとやら見せてもらいましょう」
「ああ」
とは言ったものの、康治の台はいきなり天井まで直行し、単発を食らってしまう。
「くっ!しくった」
唇を噛みしめる彼。
一方、岸の台はコンスタントに初当たりを重ね、再び差は開くばかリだった。 その差はメダル1000枚ほどに膨れあがる。
すでに7時間を切って残りは3時間ほど。
「・・・・・」
康治は下皿のメダルを箱に入れ、無言で立ち上がった。
「おや、どうするのです?」
「もう。正攻法で行く」
彼は箱を持って、ガリけんが打っていた高設定の「GO GO・ジャグリング」に座り、ひたすらブン回しはじめた。
「ほほう。それでいい」
ガリけんは頬に手をあて頷く。
高設定の台に、この日最大のツキも重なり、本領を発揮した彼のレバーオンは凄まじかった。
ペカるGO GOランプ、100ゲーム以内のジャグリング連を引き続ける。
だが、岸も譲らない。
一進一退の戦い。
そして、ついに制限時間を迎え、
「そこまでっ!タイムアップです!」
虎徹の終了宣言とともに10時間の死闘は幕を閉じたのだった。
康治は打つ手を止め、ふうと一息をついた。 「さあ、ついに長きに渡るぱちんこの戦いに終止符が打たれる。よくぞ戦った3人の選手に拍手と喝采を!」
虎徹は決勝を戦い抜いた康治、ジグマ加藤、店長岸へ惜しみない拍手を送ると、嫁たち、パーラー軍からも拍手があがった。
「それでは・・・運命の計量っ!」
3人は獲得した銀玉とメダルを店員に預け、彼らがジェットカウンターへと流す。
銀玉とメダルが吸い込まれると、計数機のデジタルの数字があがっていく。
・・・そして。
「ジグマ加藤15000発(※等価で6まんえん相当)、店長岸5500枚(11まんえん相当)、そして康治様・・・」
虎徹は編み出した必殺の虎徹溜めをこの場面で披露する。 ごくり唾を飲み込む康治に、彼は顔を近づけ渋い顔を見せふるふると首を振る。
「・・・負けたのか」
そう呟く康治に虎徹は背を見せ、右人差し指をチッチッチッとやってみせる。
「康治様は自身を信じなさい」
「じゃあ!」
「ですの!」 エマとヒルダは目を輝かせる。
「やったのかっ!」
虎徹は高らかに勝者を宣言する。
「康治様っ!77777枚獲得っ!堂々の優勝っ!」
康治は高々と右拳を突き上げる。
「やってやったぜいっ!・・・ぜい・・・ぜい・・・ぜ」
ぐにゃあ~。
「へ」
舞は驚く。
異世界メンバーたちいる場所が歪み身体が歪むと突如、夜に店の電源を落としたかのようにその場が暗転した。
ずぅーん。
轟音がバチ屋を包み、
「どうなったんだ!」
岸は慌て叫び、
「みんなは?戻れる話はどうなったのでしょうか?」
舞は天上人に問うが、返事は一切返って来ない。
「・・・これは反故にされましたな」
顎に右手をあて思案する虎徹はそう呟いた。
「・・・それって、どういうことですか?」
「それは・・・」
「ギイヤァ〜」
「ドンドンドンドンッ!」
奇声に扉を叩く音、
入り口を守っていたエルフの女王が叫ぶ。
「すまない。もうもたないっ!くるぞっ!」
「へ?くるぞって」
あまりの急転直下の出来事に頭が混乱する舞。
ざわっ・・・ざわっ・・・・ざわっ・・・。 ざわっ・・・ざわっ・・・・ざわっ・・・。
皆の心がザワつき。
「奴らだっ!」
ついにゾンビたちがわらわらと店へと潜入しはじめた。
展開っ(汗)。




