11P 彼は三度立つ
立ち上がれ!
その瞬間スローモーションにようにエスメラルダは床へと倒れ行く。
「エスメラルダっ!」
康治は駆け寄り、彼女を介抱する。
「・・・康治様」
「・・・今は喋るな」
「も・・・申し訳ありません・・・私はもう・・・」
「すまない。俺のせいで、こんな戦いに駆り出させてしまって」
「こんな、なんて・・・。そんな事言わないでください」
「・・・・・・すまない、でも、ありがとう」 「・・・ふふふ、やはり康治様は優しいお方ですね」
康治はエスメラルダを抱きかかえ、ちらりとヒルダを見た。
彼女はこくりと頷き、2人の後に続いた。
パーラーラッキー&ハッピー店から外に出て、喧騒のない近くの木陰に彼女を降ろす。
「ここなら騒音は聞こえない。エスメルダを頼む」
「心得たですう」
「すまない」
「なんのですう。年寄にはあの爆音はこたえるですう」
「だと思った」
「こらですう」
「頼んだ」
「合点ですう」
康治とヒルダは互いに頷きあった後、彼は踵を返しホールへと戻って行った。
「ダーリン」と、エルザ。
「康治さん」と、エマが彼に駆け寄ってくる。
「エスメラルダは外で休ませている。この爆音はアイツにとって毒だ。ヒルダに介抱をお願いした」 「・・・ええ」
「でも・・・」
二人の表情は曇っていた、天上よりジンがパーラーチームの勝利を宣言しようとしていたのだった。
「エスメラルダは棄権・・・よって康治軍は全滅。勝者は・・・」
康治は拳を震わせて、
「待てっ!」 と叫んだ。
「どうした負け犬、康治。なにか異議でもあるのか」
「大アリだっ!エスメラルダが出られないなら、俺たちの中から代役を立てるべきだろっ!」
「ふむ。敗者の中から・・・ね」
「ああ」
「・・・それは一考の余地ありかもしれんな」 「そうだろ」
「だが!それがゲームマスターにものを頼む姿かね。実に横柄で気に入らないぞ。康治」
「・・・俺にどうしろと」
「・・・土下座でもしてもら・・・」
「はいっ!」
彼はマッハで土下座した。
額を擦り付ける、あまりの速さに、
「ちょ」と、エマ。
「ダーリン、なにやってんのですか」と、エルザ。 「こんなのエスメラルダの頑張りに比べたら、大したことじゃない」
「くっくっくっ、英雄も地に落ちたものだ。よかろう復活を認めよう」
「本当か」
「ただし・・・」
「・・・ただし?」
「復活するのはお前だ。康治」
「俺?」
「そうだ。お前のパチ実力はもうたかが知れている。たとえお前が決勝にあがったとしても負け確定なので安牌という訳だ」
「そこまで言うか」
「ああ言うさ」
「じゃあ、やってやるよ。俺、やってやるよ!」 「ふふふ、決まりだな」
虎徹はマイクを握りしめ興奮する。
「おっとぉー!戦線離脱のエスメラルダ様に代わり、英雄康治様が三度の復活だぁっ!さぁどうなるパチンコ勝負はつぃーに、クライマックスをむかえるぅうう~!」
決勝開始前、エマとエリザは互いに不安気な顔を康治に見せていた。
彼は苦笑し、
「多分、大丈夫だ。ずっと俺、不調だっただろ。きっとこの時の為にツキをとっていたと思うんだ」
と、胸を張りサムアップした。
エリザとエマは顔を見合わせ、
「康治さん、失礼ですが、それが実力だとしたら」
「ぐっ」
「ダーリン、二度あることは三度ある・・・そしたら・・・」
「・・・ああ、もう、お前たち、縁起でもないこというなよ。とにかく俺はなんとしてでも勝つよ。勝つしかない、そうだろ」
「そうですね」と、エマ。
「それでこそ、勢いだけこそダーリン」と、ヒルダ。
「・・・なんだよ。その言い草、ま、いっか」
それから3人は円陣を組み、気合を入れる。
「俺たちが勝つぞっ!」
「おーっ!」
パーラーチームのジグマ加藤と店長岸はその時を集中し静かにその時を待っている。
虎徹は愛用マイクの手入れに余念がない。
舞はカウンターの椅子に座り頬杖をつき、
「これで本当に戻れるのかしら」 と呟いた。
ジンが玉座より身を乗り出すと・・・決勝戦を迎える。
天より声が聞こえ、
「諸君。待たせたな。これより決勝戦の開始としよう」
虎徹は静かに頷き、片手にマイクを握りしめると、いつものようにピンと小指を立てた。
「さぁ、泣いても笑ってもついに最終決着となります。勝つのは康治軍かそれともパーラー軍か。激戦を勝ち抜いたジグマ加藤氏、店長岸氏・・・それから何度も敗北の度に復活をした不死鳥の男、康治様。今よりはじまるのは互いのすべてを賭けたパチンコ勝負っ!今回もジャンジャンバリバリ、ジャンジャンバリバリ、お出しくださいませ、お取りくださいませっ!っと、要チェケラっ!・・・その前に舞さん決勝戦の説明どうぞ」
舞は静かにマイクをとると、カンペを読みはじめる。
「はい。勝負は当店において10時間の耐久出玉対決となります。台選びは勿論自由。とにかく最終的に多くの出玉を獲得した人が真の勝者となります。知力、体力、時の運、全ての力を結集し皆様ファイトですっ!」
康治、岸、加藤の3人の選手はカウンター前にて、その時を待っている。
「康治さん、がんばって〜!」
「ダーリンファイトっ!」
エマとエリザの黄色い声援が飛ぶ中、 虎徹の小指がピンと立った。
「さぁ、さぁ、ではっ、決勝戦スタートっ!」
虎徹の開始宣言と同時に選ばれし3人の選手はホール内を駆けだした。
そして挑めっ。




