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推し活令嬢〜推しが死ぬ運命を変えるために、まずは婚約破棄!敵国の冷酷王子を溺愛して溺愛される幸せを手に入れます~  作者: 紅薔薇みらの


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再会

 門の格子越しに。

 いきなり至近距離で顔を合わせることになった。

 息のかかりそうな近さ、同じタイミングでドキリとしたのがわかった。


 何年振りに、こんな近くで、目があって――


 息が止まってしまっていると、


「……誰だ、あんた」


 クロスはぶっきらぼうに、兵士と同じことを聞いてきた。

 からかわれたから、迷惑そうな顔をしてる。


「私は……ローズと申します。お願いです、話を聞いてください!」


 咄嗟に浮かんだ名前を伝えて。

 必死な訴えに、兵士達がニヤつくのが見えた。

 笑い声に、クロスがちょっと後ろを振り向いてから、また顔を向けた。


「わかった、待ってろ。薔薇はいらない」


 ほっとして、とりあえず薔薇を持つ手は降ろして。

 クロスは素っ気なく背を向けて宿舎に入っていく。

 ニヤつく兵士の視線から、また逃れて城壁にくっつくように隠れて待って。


 薔薇は、おかしかったかしら……


 差し入れ選びは失敗、それに気を取られていたら。

 濃紺の軍服を着たクロスが出てきた。


「丁度、休みでよかった。こんなところじゃ、話せないからな」


 見惚れてしまって、返事ができなかった。

 軍服姿が似合ってる……

 フィル王子様の金で飾り立てられた完璧な軍服姿には恐れ多い気持ちも抱いたけど。

 クロスの兵士用の飾り気のない軍服を着慣れた様子は男らしくて、異性としてただただドキドキしてしまう……


「なにか、急用のようだしな。どうした、違う?」


 ハッとして必死にうなずいた。


「とりあえず、行こう」

「はい」


 二人で後ろの門を、見送る兵士の視線を気にしながら歩き出し。

 やっと、兵士達の姿が遠のいて二人でまたほっとした。

 それから歩調がゆっくりになって。

 クロスの視線が今度はこちらに向いた。


「オッドアイか。初めて見た、本当にいるんだな」


 瞳を見つめられて、また胸が高鳴っていく。

 昔と変わらない笑い顔を見れたのも嬉しくて。

 自然と笑顔を返せていた。


「それで、そんな珍しい人が俺に何の用?」

「あの、私は、実はっ……」


 ためらいに足も止まってしまい、クロスも立ち止まった。


「私、本当はフロンティアなんです!」


 目があって、すがりつく勢いで言っていた。


「……フロンティア? 本当の名前が、フロンティアってことか?」


 クロスは驚いて言った後、ちょっと考えるように視線をそらした。


 フロンティアという名前が引っかかって。

 私を思い出しているのだと、わかったから。


「はいっ、いえ、本当の名前というより、私がフロンティアなんです!」


 胸に両手を当てて懸命に言ったけれど。

 なんと言えば伝わるかわからなかった。

 案の定、クロスは不可解そうに片眉を上げてる。


「私がフロンティア? この町に、もうひとりフロンティアが居るのは知ってるみたいだな。貴族のお嬢さんの」

「はい! 私がそのフロンティアなんです!」


 クロスは えっ? と不可解そうに眉を寄せて、顎に指を当てて空を見上げた。


「赤ん坊の頃に、取り替えられた?」

「ち、違います! 赤ん坊ではなく、今です。目が覚めたら知らない人になっていたんです! ほんとうに、ほんとうに!」

「落ち着いて、わかった」


 なだめる声に、本当に落ち着いた。

 薔薇を握って振っていた手を止めて。静かにうなずくだけにして。


「落ち着いて――そうだな、お茶でも飲みながら話そう」

「お茶? はい」


 そういえば喉がカラカラだったし、歩き疲れていたし、なにより、初恋の人からのお茶の誘い――

 断る理由なんかない、嬉しい、手にしてる薔薇みたいに心がパッてなった。


「けど、あんたと居ると目立ちそうだな。俺の家でいいか? 母が居ると思うけど」

「はいっ、失礼のないように致します」

「ふぅん、あんたも良いところのお嬢さんか? あ、フロンティアだったな」


 クロスはまた困惑顔になって歩き出した。

 考えながら歩くクロスに、話すべきことがわからず、黙ったまま着いていく。

 何も話せないけど、こうして問題なく歩けてる……

 子供の頃と同じように、今の姿は別人だけどフロンティアのままでも歩けたかも。

 もっと早く会いにくればよかったかも……フィル様との婚約が決まる前に、諦めずにいれば……

 会談が終わったら正式に結婚の話になるはずだった。

 その会談が行われている、こんな時に、ローズという別人になってクロスに会えるなんて――何かの運命の悪戯?

 わからないけど、何かが起きてる。

 その不安と深刻さも戻ってきて、やっぱり黙ってしまったまま家についた。

 さっき歩いた表通りに面した、レンガ造りの家だった。

 玄関のすぐが居間で、木の温もりの中にテーブルと可愛いパッチワークキルトで飾ったソファがあった。


「ただいま」


 クロスが呼びかけるように言うと、エプロンワンピースを着た中年の女性が階段を降りてきた。

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