新人騎士団アレンの日常1
アレンside
アレン、17歳。今年、ラピスラズリ伯爵家の騎士団に入隊したばかりだ。
村では剣で一番強く、自信満々で騎士団の試験も突破した。
得意げな自分の顔もあったが――その自信は一瞬で崩れ去った。
圧倒的な強さを見せるセナ副団長。
さらに、自分より年下なのに副団長と肩を並べるほどの力を持つテオさん。
――でも、悲観したのは一瞬だった。
こんなすごい人たちと剣を交えられるなんて、貴重すぎる。
誇り高い騎士になれるよう、もっと精進しよう。
そう思う一方で、騎士団の訓練や職務は容赦なく厳しい。
早朝の走り込みや筋トレでの体力作り、素振りの繰り返し。
街の見回りや警備など、やることは盛りだくさんだ。
午後の訓練では、セナ副団長一人に数人で挑む。
軽くあしらわれ、気づけば青い空が目に入った――なんて清々しい天気だろう。
「ほら、いつまで寝てんだ」
木剣で軽く頭をつつかれる。
「すみません、ロベルト先輩」
むくっと起き上がると、そこには日に焼けた健康的な肌と高身長、筋肉質な体つきのロベルト先輩が立っていた。
正直羨ましい。俺はこんなに体つき良くないから、もっと食べて運動して筋肉つけないとな。
ロベルト先輩は俺の指導員で、サッパリした性格で面倒見も良い。
いつの間にか、セナ副団長とテオさんの一騎打ちになり、
テオさんの木剣が折れて勝負がついたようだ。
さすがセナ副団長だ。
他の団員と比べても圧倒的な実力の持ち主で、容赦なく団員たちを追い込み、鍛え上げようとする。
他人に対してとても厳しい印象があるが、実力がありながらも決しておごらず、努力する姿勢は尊敬に値する。
そして周囲のこともよく見ており、団員たちからの信頼は厚い。
普段はクールで感情を表に出さず、厳しいというイメージだった。
その場で、見慣れない人物の姿が目に入る。
シャツとズボン、ブーツといった動きやすい服装に、スミレ色と桃色が合わさった綺麗な髪色でポニーテールをした女性だ。
騎士団の見学に来る令嬢はたまにいるが、ドレスで着飾っている場合がほとんど。男性のような格好をした女性は珍しい。
色白の肌に碧い瞳、キラキラした艶やかな髪。
着飾っていないのにこれほど綺麗ということは、素材自体が素晴らしいのだろう。
ぼーっと見惚れていると、その女性がセナ副団長に声をかける。
普段は笑わないセナ副団長の口角がわずかに上がり、優しい瞳でその女性を見つめる。
ま、まさか――あのセナ副団長に、か、彼女!?
と思ったのも束の間、テオ先輩がその女性に抱きつく。
え!?どういうこと!?三角関係!?
それともテオ先輩の彼女!?
そしてセナ副団長も彼女のことが……!?」
頭がパニックになる。
セナ副団長のあの優しい表情にも驚いたが、テオ先輩にも驚く。
普段から気怠げで、のらりくらりとしていて、人に心を許さず、絶対的にガードが硬い人。
必要最低限の会話しかせず、誰も信用していないし、信用されなくても構わないと思っている人物。
そんなテオ先輩が、あんな笑顔で――
まるで猫がご主人にすり寄るように、しっぽを見せるかのような無防備さだ。
呆気に取られていると、ロベルト先輩が声をかけてきた。
「アレン、初めて見るのか?
テオのやつ、すごい変貌ぶりだろ?
お嬢様にしか懐いてないけどな」
「お嬢様?っていうことは、ティアナお嬢様ですか?」
「そっか、初めてお嬢様に会うのか」
ロベルト先輩と話していると、
「誰か、そこの木箱の横に置いてある木剣を持ってきて」
「はい!」
そう声をかけられ、新人である自分の出番だと思い、素早く木剣を手に取る。
他のものよりもきれいで丈夫そうなものが分けて置かれていた。
ロベルト先輩が背中を軽く押す。
「ちょうどいい。挨拶もしてこい!」
持っていった木剣をセナ副団長に渡し、ティアナお嬢様がそれを受け取る。
そして、その目線が木剣から俺に向けられた。
「君は、入ったばかりの新人のアレンくんかな」
「へっ!は、はい。アレンと申します。コナミ村出身です。よろしくお願い致します!」
声をかけられるとは思わず、さらに自分の名前を知っていたことに驚き、素っ頓狂な声を出してしまった。
慌てて、失礼のないように深く勢いよくお辞儀をする。
ティアナお嬢様は丁寧に自己紹介をしてくださり、俺の出身であるコナミ村も知っているようだった。
小さな村なので、まさか知っているとは思わなかった。
しかも、リンゴが盛んにとれることまでご存じで――賢い方なんだな、と正直驚く。
嬉しくて、つい食い気味に話してしまった。




