お見合い3
ユウリがセッティングしたお見合いの場に座る。
「はじめまして、よろしくお願い致します」
「いや、はじめましてじゃないですよね」
目の前の人物は、接点は少ないが知っている。
「そうでした、緊張してしまって……。
自己紹介します。第2騎士団 団長、オリバーです。
この前の孤児院のボランティアでは大変お世話になりました。お礼が遅くなり申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ。
マルクの無茶振りに、いつも付き合わされてご苦労様です」
「ええ、それは……はい」
特に否定もせず、少し苦笑する様子から、相当苦労しているのだろうと察する。
目の前の彼は、がっしりとした体格で健康的な小麦色の肌に短髪。
見た目からは頼もしさが漂うが、意外にも柔らかく、丁寧な口調で話す。
この前のボランティアには遠征で不在だったようだが、内容は大方把握しているのだろう。
「オリバー団長は、子爵家でしたね。
ご実家は武器の製作に携わっているとか」
私の後ろに立つユウリが資料を見ながら話す。
珍しくメガネをかけて、クイッと持ち上げる。……あれ、ダテ眼鏡だよな?
「ええ。うちは騎士団の新人には、家で製作した剣を安くを提供しています。
初めのうちはお金がないですから」
「それは、第3騎士団に対してもですか?」
直接聞いてみたかったことだ。
調べた内容では知っていたが、本人の口から聞くのは別だ。
「もちろんです。平民や市民の出身だからといって、区別はしません。
同じ騎士団員であることに変わりはありませんから。
ただ、まだうちの団員は貴族出身が多いので、それを快く思わない者もいます。
ですが、この前のボランティアで第3騎士団の方々が手伝ってくれたことで、だいぶ見方が変わってきており、私はそれを良い傾向だと思っています」
オリバー団長の言葉には、きちんと理屈と信念がある。
見た目のがたいと優しい口調からは想像できないほど、誠実で現実的な人物のようだ。
「そう。一部といったけど、第3騎士団騎士団をあまりよく思っていないのは、エリック副団長が一番かしら?」
エリック副団長は子爵家の出で、ラピスラズリ家とも根強い繋がりがある。
そして、結構な貴族主義者だ。
「そうですね。多額の支援金を騎士団に提供しているのも、彼の家ですからね」
「オリバー団長から見て、エリック副団長はどんな人物ですか?」
「そうですね。第3騎士団への偏見や多少偏った考え方はありますが、根は真面目で、任務や訓練にも一生懸命です。
自分にも厳しいですが、他人にも厳しいところがあって、少し揉めることはありますけどね」
「そっか……なるほど。ありがとう」
このエリック副団長をうまく動かせれば、第2騎士団と第3騎士団のわだかまりも少しは解消できるかもしれない。
頭の片隅で、具体的な策を考え始める。
「あの、これって面接ですか?」
オリバー団長が少し身を縮こませ、こちらを見つめる。
「あ、ごめんなさい。一応お見合いということで」
「結婚相手をお探しというのは本当なんですか?」
「急いではいないけど、一応形だけね」
すると、目の前のオリバー団長の表情があからさまにほっとしたものに変わる。
「なんだ、そうでしたか。
てっきり本気で探しているのかと思ってました。
俺には荷が重いので、その言葉を聞いて安心しました」
「なんかわからないけど、私フラれたのかな?」
「そのようですね」
「いや、そういう意味じゃないです!!」
慌てて弁解する。
「そうだ、お見合いだしさ。
一応、趣味とか聞いておいたほうがいいかな?」
仕事の話ばかりしてしまった。
ユウリをチラッと見ると、メガネをわざとらしくクイッと上げている。
――楽しんでるなー。
「そうですね。オリバー団長、ご趣味はありますか?」
「筋肥大です!」
――私と話し始めて、今日1番の笑顔で答えた。
つ、疲れたー。
この1週間で、ユウリが選んだお見合い候補者10人ほどと一応会ってみたけれど、
どの人も自慢話や興味のない話ばかりで、退屈極まりない時間だった。
あのリチャード・ファイアオパールともお見合いした。
確かに褒めてはくれたのだろうけど、心に響くものは一つもなく、うっすぺらい印象だけが残った。
多分、彼は私のことを本当に好きなわけじゃない。
となると……伯爵家当主の座を狙っているのかもしれない。
でも、結婚する気はないし、それは相手にも失礼だよな。
父にも言われているから、形だけでも探しているフリはしないと。
それより、蝶の会での断片的な記憶にでできたアイリス…
その真相についてもまだ調べられていない。
ユウリも少し手間取っているようだし、やっぱり父が何かを隠しているのだろうか。
もし誰か知っているとすれば……ナタリーさんくらいだろうか。
でもナタリーさんはもう高齢で、物忘れもひどく、施設に入っていると聞いた。
何か知っていたらいいけれど……。
しばらく会いに行けていないし、一度会いに行ってみよう。




