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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響
第五部

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終息 1

裏庭に出た私たちの前へ、甲冑の音を響かせながら王宮の騎士たちが駆けつけてきた。その先頭には――アラン殿下、ルーク団長、オリバー副団長、そしてエリック、アレン、ロベルトの姿があった。


「テオさん!! 大丈夫ですか!!」


エリックが大袈裟に駆け寄ってくる。


「まじでやめて。俺よりお嬢様優先」

テオが顔をしかめる。


「そ、そうですね……! お嬢様、大丈夫ですか?」

エリックが慌てて私の方へ向き直る。


「ええ、大丈夫」

私は微笑んで答えた。その直後、さらに2つの影が勢いよく飛び込んでくる。


「お嬢様!! 大丈夫じゃないですよね!!」


「ボロボロじゃないですか!!」


「ってか、髪どうしたんですか!?」


「み、短い!!」


アレンとロベルトが、ほぼ同時に叫びながら駆け寄ってきた。アレンは半泣きで私の肩をのぞき込み、ロベルトは心配のあまり手が震えている。


「平気よ。ちゃんと立てるから。

髪は……切られちゃって」


短くなった髪をつまみながら、私は微笑んだ。


「お嬢様の髪が!! 血が……!」

アレンが大騒ぎする。


「落ち着けアレン。お嬢様は強い」

ロベルトが言いながらも、声が震えていた。その様子に、テオが呆れたように肩をすくめる。


「だから言ったろ。俺よりお嬢様優先しろって」


「当たり前です!」

アレンが即答する。


「テオは……まあ、平気だろ。セナ副団長も生命力すごいから」

ロベルトが小声で付け足す。


「おい聞こえてるぞ」

セナが眉をひそめた。


そのやり取りに、周囲の空気が少しだけ和らいだ。


「そちらは、大丈夫でしたか?

魔宝獣が出ていたようですが」


ユウリが落ち着いた声で問いかける。


「ああ、こっちは大丈夫だ。

負傷者はいるが、死人は出ていない」


アラン殿下の言葉に、胸の奥がふっと軽くなる。


「よかった……」


思わず息が漏れた。緊張がほどけ、身体の力がゆっくり抜けていく。アラン殿下は、仲間たちの騒がしさを見守りながら、ふっと優しく笑った。


「……本当に、良い仲間に恵まれているな、ディラン」


「はい。……自慢の仲間です」

ディランが誇らしげに答える。


「ディラン」


「兄上」


2人の視線が静かに交わる。


「……終わったな」


「はい」


「よくやった」


その言葉に、ディランは目を丸くした。驚きと、どこか信じられないような表情。私はそっとアラン殿下に目配せする。殿下はふっと柔らかく笑った。


「ディラン。お前を誇りに思う」


「……ありがとうございます」


アラン殿下はゆっくりと歩み寄り、弟の肩をそっと掴んだ。そして――そのまま強く抱きしめる。


「……もう一人で背負わせない」


ディランの肩がわずかに震えた。


「……はい」


アラン殿下は弟の背を何度も叩きながら、押し殺した声で続ける。


「本当に……よかった。

生きててくれて……」


その言葉に、ディランは目を閉じ、静かに息を吐いた。そしてようやく、肩の力を抜き、柔らかく笑みを返す。アラン殿下は次に私へ向き直る。


「ティアナ嬢」


「はい」


「弟を……ありがとう」


その言葉は、静かで、まっすぐで、温かかった。


「……はい」


私は深く頷いた。崩れゆく迷宮からの脱出、激しい戦い、そして再会。すべてがようやく、ひとつの終わりを迎えたのだと実感した。次の瞬間、ディランの身体がふらりと揺れた。


「ディラン!」

私は慌てて支えに入る。


「……すまない」

ディランが弱く笑う。


「いえ、大丈夫です」

私は彼の腕をしっかりと掴んだ。


ディランは私を見つめ、少し照れたように、でも真剣な声で言う。


「君は……本当に強いな」


「ボロボロですけどね」

私は苦笑した。


「それは……本当にすまない」

ディランが眉を下げる。


私は首を振る。


「違うんです。

ジョルジュだとわかっていたのに……

見た目がディランだったから、まんまとやられました」


「……そうか」

ディランは少しだけ目を伏せた。


私は胸を張って言う。


「だから今度は、ディランの見た目でも

容赦なく叩きなおせるように強くなります!」


ディランは一瞬固まり――困ったように、でも優しく笑った。


「それは……ちょっと違う気がするよ」


その笑顔に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

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