↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響
第五部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
318/354

それぞれの役割 1

テオside

さて、と。俺は人目を避けながら、城の内部を改めて確認していく。お嬢様が王妃教育を受けていた頃、このあたりの構造はだいたい頭に入っている。

警備の巡回ルート。時間ごとの交代。そして――例の北側の部屋への出入り。

(なるほどな)

警備の数が、妙に多い。しかも、理由を説明できる配置じゃない。

確かに……北の部屋は、あやしい。だが問題はそこじゃない。正面から入るのは論外だ。目も多ければ、記録も残る。


「……さて」


壁に手を当て、裏側の構造を思い出す。この部屋の裏はどうなっている?通路か。それとも行き止まりか。

あるいは――誰にも知られていない、もうひとつの通路があるのか。視線が、静かに鋭くなる。


「……テオ」


背後から、ほとんど息だけの声が落ちてきた。


「ユウリ……ウェイター様になってるね」


「それはどうも」


ユウリは軽く肩をすくめる。その自然さは、役に溶け込むことに慣れた者の動きだ。


「そちらは、どうです?」


「北側の部屋は、やっぱり怪しい。正面から入るのは厳しいな」


視線を逸らしつつ、周囲の気配を探る。


「裏側も、もう少し探ってみる」


「分かりました」


一拍置いて、ユウリが問い返す。


「そっちは? 何か進展は?」


「特には。……ただ、少し気になることが」


声がわずかに低くなる。


「ディラン殿下の両親が亡くなっているのは、知っていますか?」


「……ああ。まあ」


「その死亡事故について、妙な噂を少し耳にしまして」


「へぇ」


思わず、口の端が上がる。ユウリが“妙な噂”と言うときは、だいたい本当に妙なやつだ。


「調べているところです」


「なるほどね」


一瞬だけ、互いの視線が交わる。短いが、十分な確認。


「じゃあ、お互い気をつけよう」


「そうですね」


ユウリは、何事もなかったように一礼した。


「では」


そのまま、雑踏へと自然に溶けていく。気配が消えるのが早い。相変わらずだ。小さく息を吐き、再び壁へ視線を向けた。

(……さて。こっちも急がないとな)

静かに足音を消し、再び動き出す。



レオ side

庭師レオ、参上!

それにしても――アレキサンドライト王国の城、広すぎ!庭もまた、とんでもない広さだ。王国創立記念式典を控えているせいで、庭師たちは総出で大忙し。

花を植えて、枝を払って、木の形を整えて――

(これ、何日かかるんだろ……)

でも、そのおかげで。


「……意外と、紛れ込めるもんだなぁ」


作業着に帽子、道具を持っていれば、誰も気にしない。まあ、その辺は殿下がうまく手を回してくれてるんだろうけど。ありがたい話だ…とはいえ。


「外から見て、何か分かるもんかな……」


首を傾げつつ、手を日よけみたいにして城を眺める。……ん?


「……あれ?」


裏手のほう。王国騎士団が、誰かを連れて裏口から入っていくのが見えた。護送ってほど物々しくはないけど、雰囲気が、ちょっと違う。


「……気になるなぁ」


俺は何食わぬ顔で剪定ばさみを動かしながら、しれっと、その後を追った。


「あれ……?」


視界の端で、違和感が引っかかった。


「……罪人?」


王国騎士団に挟まれ、手を拘束された人物が裏手へ連れていかれている。

(式典前に、こんな動き?)

気づけば、体が勝手に動いていた。音を立てないよう距離を保ちつつ、すっと後を追う。近くの木に飛びつき、枝を伝って上へ。葉の隙間から、下を覗き込む。


「……え」


見えたのは――


「殿下じゃん」


ディラン殿下。それに、側近のレイさん。そして。


「あの女の人……?」


どこかで見た顔だ。

(えっと、えっと……)

記憶をたどる。


「……あ! ローゼ、だっけ?」


ユウリが持ってた資料に載っていた、婚約者候補のひとり。

その瞬間。――ローゼが、殿下に抱きついた。


「えっ!ちょ、近っ!殿下、それ浮気じゃない!?」


全力ツッコミ。顔、近い近い近い!


「お嬢さんが悲しむやつー!」


……と思ったのも束の間。殿下の表情は、甘くない。あれ?空気が、思ってたのと違う。


「……真実、確かめないと」


そう決めた時には、3人はすでに部屋の中へ消えていた。


「うわー……外からじゃ聞こえない」


扉は閉まり、声も漏れない。中、入れないかな。周囲を見回し――


「……あ」


すぐ上。


「ベランダ、あるじゃん」


木の枝から身を翻し、音もなくベランダへ移動する。息を潜め、そっと中の様子を探った。ここなら中の様子見えるし、声も聞こえる。

やっぱりだ。殿下たちだけじゃない――。


「まず――」


ディラン殿下の声が響く。低く、抑え込んだ怒気を含んだ声だ。


「君が、ティアナを殺そうとした刺客だな」


「――っ!?」


思わず息が止まる。

(お嬢さんを狙った刺客!?そいつがここに!?)


「ち、違う……!」

男の声は焦りに満ちていた。


「殺すつもりはなかった! ただ脅すだけのつもりだったんだ!」


「……それで?」


ディラン殿下の声がさらに冷え込む。


「ローゼ嬢。

 君は彼に、それを頼んだのか」


「ち、違いますわ!」


ローゼの声は震えていた。


「ご誤解ですの! わたくしはそんな……この方が勝手にやったことですわ!」


怯えたように首を振るローゼ。その瞬間――。


「確かに、この女からは依頼されてない。

 そっちの女の方だ」


刺客が指し示した先で、もう一人の令嬢が顔を伏せた。そして刺客は、はっきりと言い切る。


「そこのスーザって女で間違いない」


「――は?」


頭の中で何かが弾けた。


(なんだってぇぇぇ!?)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。