パーティーは波乱4
ニーナside
――ああ、なんて麗しいの。ディラン殿下。
私は、あなたのそばに在りたい。
そして、あなたにも私を見てほしい。
あの澄んだ瞳、柔らかな声、仕草のひとつひとつ。
手の届かない場所にいる人だと分かっているのに、想いだけが募っていく。
胸に光る宝石。これをローブの男から貰ってからだ。
殿下への想いがどんどん増していく。
身分が違う。立つ世界が違う。
近づく方法など、正攻法では存在しない。
手の中の小瓶を、そっと揺らす。
中で揺れる透明な液体。
これをくれたのも、ローブの男だった。
怪しいと分かっていた。それでも――他に縋るものがなかった。
はやく、はやく私のモノにする。
「殿下、こちらへどうぞ」
――作戦通り。
ゲストルームには、殿下と私の二人きり。
父の協力も得て、殿下の心を掴み、既成事実を作ることができれば、私は殿下のそばにいられる。
そう信じて、ソファへと案内した。
「こちらをお使いください」
殿下のズボンの裾についた飲み物を拭くため、ハンカチを差し出す。
「ありがとう」
穏やかな微笑みとともに、殿下はそれを受け取った。
――ああ、なんて美しい人なのだろう。
「よろしければ、おいしい紅茶がございますの。ご用意いたしますわ」
「それは実に楽しみだ」
殿下に背を向け、紅茶の準備に取りかかる。
手元には、小さな小瓶が二つ。
殿下用の紅茶には赤い小瓶のもの、私用のは青い小瓶。
ローブの男から相手をトリコにするためには、両方が媚薬を摂取する必要があるとのこと。
赤い小瓶は作用が強いが青い小瓶は弱いように作られているとのことだ。
これを渡したローブの男の言葉が、脳裏をよぎる。
二人で同じ時間を共有すること――それが“距離を縮める鍵”だと。
(……本当に、これでいいの?)
一瞬、迷いが胸をかすめる。
けれど、もうここまで来てしまった。
――もうすぐ。
もうすぐで、すべてが変わるはず。
私は静かに、カップを手に取った。




