↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/354

パーティーは波乱3

「ご忠告、どうもありがとうございます。それでは失礼」


その場を離れようとした瞬間、ぐっと腕を掴まれた。


「まだ話は終わっていませんよ。

あなたがどうしてもと言うのであれば、私が婚約者になってあげてもいいのですよ」


下品な笑い方。生理的に無理だ。


――というか、腕を掴むな。

本気ではっ倒すぞ。


(……もう放り投げてもいいかな)


そう思った、その時。


「あら、女性の口説き方がなってないわね」


「いだだだだっ!」


腕を掴んでいた力が、一気に抜けた。


そこに立っていたのは、

ミルクティー色の髪をオールバックにし、質の良いスーツに身を包んだ人物。


「ルイ!」


思わず声が出る。


「あんたみたいな男が、ティアナちゃんに触れていいわけないでしょ。

さっさと失せな」


最後の一言は、低くドスの効いた声。


それに完全に怯えたカイロスが、腰を抜かしそうになりながら去っていった。


「なんなのよ! あの男は!

ティアナちゃんに触れるなんて、信じられないわ!」


「ありがとう、ルイ。助かったよ。

もう少しで床に叩き伏せるところだった」


「いいのよ! それはそれで興味あるけどね!」


「それより、ルイはどうしてここに?」


ブティック・グロウを経営しているルイが、こうしたパーティに顔を出すのは珍しい。


「私が作ったドレスを、主催者の方が気に入ってくれてね。

それで招待してくれたのよ」


今やブティック・グロウは大人気の店。

ルイも、すっかり売れっ子デザイナーだ。


「そうなんだ。ルイも忙しそうだね」


「忙しいわよ。ありがたいことにね」


そう言いながら、ルイは私のドレスに視線を落とした。


「……それにしても」


「?」


「今日のドレス、すごくいい選択してるじゃない」


「ほんと?」


「ええ。色もラインも完璧。

ちゃんと“見せ方”分かってきたわね」


素直に褒められると、少し照れる。


「アリスのおかげよ」


「でしょうね。あの子、腕いいもの」


そう言ってから、ルイはふっと表情を引き締めた。



「それよりも、エマのこと……本当にありがとう。

感謝してもしきれないわ」


そう言って、ルイは深く頭を下げた。


「気にしないで。無事でよかった、それだけよ」


「ティアナちゃんには、本当に頭が上がらないわ。

エマがあんなに悩んでいたなんて、全然気づかなかった」


ルイは唇を噛みしめ、悔しそうに視線を落とす。


「兄失格ね……」



「そんなことない」


私ははっきりと言った。


「気づかなかったんじゃない。

エマが、言えなかっただけよ」


ルイは驚いたように顔を上げる。


「家族だからこそ、弱さを見せられないこともある。

それに、あなたはずっとエマを守ってきたでしょう?」


「……でも」


「もし本当に兄失格だったら、エマは今、あんなに落ち着いてない」


その言葉に、ルイの肩からふっと力が抜けた。


「……あの子、少しずつ笑うようになって、前より自分の気持ちを言えるようになったの」


「でしょう?」


私は微笑む。


「だから、これからは一緒に悩めばいい。

一人で背負わなくていいんだよ」


ルイはしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。


「敵わないわね、ほんと」


「褒め言葉?」


「もちろん。というか…それは貴女もよ!

何かあったら言いなさいよ。助けになるから」


ルイのその言葉に胸があたたかくなる。

ほんと心強い。


「ありがとう」



「ほんと可愛いんだから。

じゃあ私は主催者の方に挨拶して帰るからね」


「うん、またね」


「あ、そうだ!何か殿下がすごーく見ているから気をつけてね」

ウィンクして去っていくルイ。

まじか…。




「お嬢様、戻りました」


ルイと入れ替わるように、ユウリが戻ってきた。


「おかえり」


「ルイさんの姿が見えましたが、いらっしゃっていたのですね。

クラリス夫人もブティック・グロウの常連のようでしたから」


さすがユウリ。よく把握している。


「それより、どうだった?」


「はい。お嬢様の予想通りです」


「はぁぁ……早く帰りたいのに」


「まあ、さっさと処理して帰りましょう」


そう言って歩き出すユウリの後についていく。


殿下と他の令嬢たちが話している。


「お嬢様、いらっしゃいました」


「ええ」


ある令嬢の胸に光る宝石から黒いモヤが見える。

例の怪しい宝石に違いない。


そのとき、ウェイターが令嬢たちと接触し、飲み物をこぼしてしまったようだ。


「申し訳ございません、殿下のズボンの裾が汚れてしまいました」

頭を下げるウェイター。


「これは由々しき事態だ!ニーナ、殿下をゲストルームへご案内しなさい」


あれはデホラ男爵とその娘、ニーナ令嬢。殿下と一緒に移動していく。


「ユウリ、デホラ男爵から目を離さないで。私は殿下のもとへ向かう」


「はい。お気をつけください。セナが外で控えておりますので、すぐ向かわせます」


私は殿下と令嬢たちの後を、こっそり追う。

……まあ、あの腹黒王子が簡単にやられるとは思えないけれど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。