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アスイェ•Asyeh  作者: 新城凪
その四:有能の者は生きる
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第三十六話:共感

セラフィナは、自分はもう成長したのだと思っていた。そのせいか、以前ほどアスイェの部屋を訪れなくなっていた。

夜,彼と一緒に散歩に行くことがあっても、

奇妙なことが起きた時や、血が騒いで助けを求める時でさえ、セラフィナはアスイェと距離を取った。

セラフィナは他の吸血鬼と会ったことがないし、アスイェの居場所を奪うつもりもなかった。

だが、なんとなくわかる。

アスイェが自分をこの屋敷に置いていること自体、普通ならありえない。

吸血鬼はなんとなくわかることが多い。例えば今日、一度もアスイェに会っていないことに違和感を覚えた。

そして、少女の調子もよくなかった。

最初はただの立ちくらみだと思った。

はっきりと感じたのはそのすぐあとだった。少女は歩くことすら難しい状態に陥った。

壁に手をつき、せめてこの状況をアスイェに伝えようと思い、重い足を引きずるように進んだ。

屋敷の中に、一つだけ鍵がかかっていない部屋があった。

アスイェが彼女を一人にする時のために用意した部屋で、普段なら、セラフィナが立ち寄るべきではない場所だったが、今日、セラフィナは初めてそこを訪れた。

彼女はノックせず、少しだけ部屋の扉を開けた。

カーテンは閉めきられておらず、部屋の中にはワインの香りが漂っていた。

この時だった。

この目眩も疲れも自分のものではなく、アスイェのものだと、ふと気づいた。

アスイェは疲れて、髪が頬ににかかり、その顔は普段よりも白く見えた。

アスイェがこんなにも静かな姿を見せたことは、セラフィナは扉の外に立ち止まり、入っていいかと躊躇っていた。

セラフィナは近づくたび、確信したことがあった。

これは、逆らえない血の繋がりだった。

別に血の繋がりに逆らうつもりはないが、アスイェが寝込んだ姿を見ると、どこか痛々しく感じた。

その時だった。

椅子の上に横になっていたアスイェは目を開け、躊躇している少女を見つめた。

「……来たか……どうした?」

「ごめんなさい……アスイェが疲れているって感じたから……」

「感じた……共感したのか?」

「「そうだと思う。さっきセラ、目眩したから……でも、アスイェがつらいって、さっきわかった」

「今もキツイか?」

「うん……」

「なら、横になって少し寝れば治る」

アスイェは手を広げて、隣にあけた。

「アスイェも、寝たら治る?」

「うん」

少女は一歩進めたが、まだ止まった。

「俺と一緒にいるのが嫌なら、自分の部屋で休んでいい。そのうち治る」

「そんな!一緒がいい!」

「ならこっちに来い。親と子が一緒に昼寝するのは、別におかしなことじゃない」

セラフィナの心は読まれていた。

それは恥ずかしいが、セラフィナにとって安心する一言だった。

彼女はやっと、ゆっくりとアスイェに近づいた。

椅子のそばまで行き、そっとアスイェの手に触れ、ゆっくりと彼の隣に横になった。

「病人扱いはしなくていい……」

「アスイェは病人じゃないの?」

「今、お前の目眩を治すのは俺だ」

日の光は窓から差し込み、床に落ちて、まるで金色の小さな花のようだった。

目眩が徐々に引き、セラフィナはやっと落ち着いた。

「練習するよ……」

「なにを?」

「共感。アスイェがつらい時、すぐにわかるように」

アスイェは答えなかった。まるで眠りについたようだったが、少女は、少しだけ力の入ったアスイェの手から、「火の熱」以外のものを感じた。


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