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アスイェ•Asyeh  作者: 新城凪
その三:成長は痛みを伴う
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三十一話:触覚と心音



少女の体調はまだ優れなかった。

カーテンがしっかり閉じられていなかった。

セラフィナはそのわけを考えた。

なぜなら、アスイェはいつもカーテンをしっかり閉めていた。

セラフィナは日の光がわりと好きで、少なくとも怖くなかったが、今回は違った。

日の光がカーテンを通って、彼女の手の甲に当たり、焼けつくような感覚を残した。

最初,その感覚はそれほど強くなかった。

セラフィナは無視した。

少女はゆっくりと手を日の光から離し、自分の後ろに隠した。

これでその小さな痛みは少しだけ和らいだ。

セラフィナはいつものように庭へ散歩に出た。

何かに耐えるように唇を固く締め、足取りはいつもより少し早かった。

部屋の扉を開け、彼女はアスイェの姿を見てホッとした。

アスイェは本のページをめくった。少し間を置いて、セラフィナは聞いた。

「セラ、アスイェの隣に行っていい?」

本を読んでいたアスイェは少女を見て、「おいで」と言った。

セラフィナはアスイェの側へ行ったが、座るとき、手をしっかりと膝の上に置いた。

「どうした?」

「風がセラの顔をひっかくみたいだった……」

セラフィナの声は冷静だった。

「そうか……顔が痛いのか?」

アスイェはセラフィナを見て、顔にかかっていた髪を、そっと耳の後ろにかけた。

「うん、針に刺されたみたいだった……」

彼は少女をやさしくあやした。

「これが、覚醒?」

アスイェはセラフィナの髪を撫でた。

「……セラ、心の音も聞こえた。ドン、ドンって、ゆっくりだった……誰のだろう?」

「それは、セラのものだ」

「セラはアスイェと同じで、心がないもん……」

実は「心がない」ということが、セラフィナにとって一番嬉しいことだった。

これはアスイェと一緒だからだ。

「心音じゃない。体の鼓動だ……お前の体が準備している」

彼女は何も言わなかった。やっと安心して、そのままアスイェの胸に体を預けた。

少女がまだ緊張していると、アスイェは気づいた。

彼はそっとセラフィナの首の後ろに手を触れた。


「ゆっくり呼吸すればいい」

「アスイェ以外に触られるの、嫌……」

「わかる。よく耐えた」

セラフィナはきゅっとアスイェのマントを掴み、しばらく静かにしていた。

やがて、セラフィナはこっそり言った。

「もう少し、このまま……」

彼女は眠りに落ちた。

セラフィナの呼吸が落ち着くと、彼はそのままソファに寝かせた。

まだ朝だが、ここはアスイェの屋敷だ。

そのまま日の光を全て遮るのは容易いことだ。

アスイェは確か、そうした。

屋敷のすべてが闇に包まれ、夜のように静かだった。

せめて自分の子だけは、ゆっくり眠らせてやりたい――アスイェは一瞬そう思った。

それは、しばらく感じていなかった親の感情だった。

子は安心して眠っているが、アスイェは知っていた。

覚醒はそろそろ終わると……

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