二十八話:風が話している
風が止み、また吹き始めていた。
セラフィナは窓辺にずっと座っていた。
これは夢の中にいる感覚でもなければ、ただぼんやりしている感覚でもなかった。
それは――魂だけが体から抜け出し、ようやく戻ってきたような感覚だった。
彼女は自分の手を見た。指は冷たく、目の前の色も変わって見えた。
風の音がやっと止まり、そのあとに聞こえたのは――誰かの話し声だった。
少女が試しにしばらく息を止めると、すべてが静かになった。
しばらくして、セラフィナは立ち上がり、部屋へ戻ろうと一歩を踏み出した。
しかし、足元はふらつき、目の前が暗くなった。
もう一度目を開けた時にはセラフィナはアスイェの書斎にいた。
少女は書斎のカーペットの上に座っていた。
アスイェは片手でセラフィナの耳を塞ぎ、もう片方の手で彼女の目を軽く覆っていた。
彼の掌は冷たかったが、その手はセラフィナを暗闇から救い上げていた。
「セラ……セラフィナ……」
アスイェが彼女を呼ぶと、少女のぼんやりしていた意識は、ようやく戻ってきた。
「セラは……ずっとアスイェの机の前に立っていた?」
「うん。ゆっくり歩いて、入ってきた」
セラフィナは顔を下げ、自分の足を見た。
「アスイェの呼び声が聞こえなかった」
「……そうか」
「風の音がうるさくて……誰かの声が聞こえたの……」
「もしまた聞こえたら、目を閉じて、耳を塞いでいい。落ち着いたら帰ってこい」
「……セラ、自分で帰ってこられるかな……」
アスイェはすぐに答えていない。
「帰り道がわからなくなったら、こっちから探しに行く」
セラフィナが屋敷の中をぶらぶらするのは初めてではなかった。
彼女はよく、自分が何をしていたのか忘れてしまう。
例えば、水を流したまま――
顔を洗うのを忘れたり、鳥の鳴き声を聞いているうちに、あっという間に時間が過ぎていた。
「言ったはずだ。これはお前の成長だ」
「いつ良くなるの?」
「そのうち治る」
セラフィナにはまた声が聞こえた――
でも、アスイェの声じゃない。
アスイェは近くにいるのに、声は遠くから聞こえるようだった。
セラフィナの意識はすぐに戻ってきた。
「セラには……まだ何か聞こえた……」
「そうか……気持ち悪いか?」
「……ううん」
「ならいい」
「……セラはまた夢を見たの?」
「そうだな」
アスイェは少女の顔を撫でた。そのひんやりとした温もりが心地よいと、少女は思った。
セラフィナはしばらく黙り込んでいた。
自分が大きくなっても、この居心地の良い場所にいてもいいのだろうか。
疲れの溜まった体と心がセラフィナの思考をとまさせた。
今はただ、この静けさの中に眠りをつく。




