二十七話:午後の光
午後の光は、薄い布のようにすべてを覆っていた。
花の形すら、セラフィナの目にはうまく映らなかった。
少女はゆっくりと歩いていた。
彼女は、なぜ散歩しているのかもわからなかった。ただ、ゆっくりと歩いていた。
夜の蟲にいくらか食われたにもかかわらず、アスイェの薔薇はまだ多く、最近までつぼみだった花も一気に咲いていた。
その香りは強く、セラフィナはくらくらと眩暈を覚えた。
彼女はいつのまにか庭の中で立ち止まり、耳のそばで風の音が鳴り続けていた。
まるで水の下にいるように、視界もぼやけていた。
セラフィナは頭を振り、足取りもふらふらとしていた。
セラフィナはうつむき、自分のドレスが目に入った。――彼女は自分がいつのまにか座っていると気づいた。
日の光が強くなった。
少女の気分はどんどん悪くなっていった。
目を開けるのが怖く、吐き気はあるのに、胃の中は空だった。
やがて立っているすら難しくなった。
誰かがセラフィナの背中を軽く支え、日の光を手で遮った。
アスイェだ。
セラフィナはかろうじて立ち、アスイェの声が後ろから聞こえた。彼女は不安で手を少し伸ばしたが、何も掴めなかった。
「耳が鳴ったか?」
セラフィナはもう目を開けられず、軽く頷いた。
「熱中症か……」
セラフィナは頭の中の何かを追い払いたいように混乱し、しばらくアスイェの呼びかけに答えなかった。
アスイェはセラフィナを抱き上げ、部屋の中へ運んだ。
「……セラは、散歩しているだけ……」
セラフィナはアスイェの腕の中で、弱々しくそう言った。
「知っている」
アスイェの声は低く静かだったが、ぼやけた意識の中でも、その声だけははっきりと届いた。
その声を聞くだけで、体が少し軽くなる気がした。
「……セラは、ゆっくりと大きくなったらいいのに……」
「これが、成長だ」
このあと、セラフィナはしばらく眠りに落ちた。
目を覚ましたとき、最初に見えたのは見慣れた天井だった。
熱は下がったが、まだだるさが残っていた。
アスイェはいつも、ちょうどいいタイミングで現れた。
「起きたか……少し食えばいい」
それはセラフィナがしばらく食べていないもの――スープだった。
「セラ、おなかすいてない……」
アスイェは何も言わず、スープを置いた。
「わがままじゃないよ!」
「わかっている。まだ気持ち悪いのか?」
「……時々、花が揺れて見える……」
「そうか……次に気持ちが悪くなったら、その場で俺を待つんだ」
「わかった……でも、セラはずっと気持ち悪いままなの?」
「心配しなくていい。そのうち良くなる。成長するのは良いことだ」
風が吹いた。
セラフィナがアスイェを見る目は少し潤んでいたが、その言葉には、目とは違うかたい意志があった。
「セラ、もう泣けない!」
「わかった」
何度も同じ言葉をかけて安心させ、勇気を与え、その成長を見守る――それは、アスイェがセラフィナにだけしていることだった。
その感覚は、決して嫌いではなかった。




