表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/92

第七章 第十三話 紫黒の魔狼


side:イース

 

守「イース!!また後で会おう!武運を祈る!!」

イース「はい!また後で会いましょう!お気を付けて!!」

 


 僕は守さんと再会の約束を交わし、守さんはスコットさんと対峙した。

 僕はハンスさんの分身さんに乗り、ケニーさんを追跡しようとするが、スコットさんは火炎攻撃による妨害を謀る。しかし守さんがそれを食い止め、僕はそのままオーズ村へ向かったケニーさんの追跡を図る。




イース「……(ケニーさんは速かった……でもハンスさんの分身さんはもっと速い……必ず追い付ける!

 …………どうか間に合います様に……!)」




 焦りが募る。

 刻一刻とケニーさんは村に向かって進んでいる。

 もし間に合わなかったら……そんな最悪の事態が頭の中を()ぎる。



イース「…………」

 

 間に合わなかったら村の人達全員が……

 最悪の事態に陥った惨状を一瞬思い浮かべてしまう。


イース「そんな事は……あってはならない!!

 必ずケニーさんを止める!!

 ハンスさんの分身さん……御願いします!!」

 


 僕はハンスさんの分身さんに思いを託し、願いを馳せる。ケニーさんの速度も尋常ではなかったが、ハンスさんの分身さんはそれ以上の速度で駆けていく。




 

 そしてオーズ村の直前で、ようやく全速力で駆けていく黒紫色の狼型の魔物……ケニーさんの姿を捉えた。



イース「遂に……捉えた!!」


 村の入口には村長のアレクさんと、村長の娘さんであるクレアさんがいた。


イース「……!!」

アレク「……あれは……イースさんと……狼!?」

ケニー「ニンゲン…………我…………スベテ……喰ライツクス!!」


 ケニーさんはアレクさんやクレアさん、そしてオーズ村の村民さん達を全員食べるつもりだ。


イース「そんな事は……させません!!」

ケニー「!!」


 僕はハンスさんの分身さんごと先回りをして、オーズ村の入口前でケニーさんの前に立ちはだかる。


ケニー「我ノ…………ジャマヲシヨウトイウノカ……

 …………チイサキリュウ…………我ノ捕食ノ…………

 ……ジャマヲスルナアアアアアアァァァッッッ!!!」


 

 ケニーさんは怒り狂い(おびただ)しい大声を上げる。

 


アレク「くっ……!」

クレア「あっ……!」


 その(おびただ)しい声は、アレクさんとクレアさんの身体を硬直させる。二人に対して僕はすかさず声を掛ける。

 

イース「……!!……アレクさん!!クレアさん!!入口付近は危険です!……なるべく村の中の方へ避難して下さい!!」


アレク「イースさん!!(助太刀したいが、私では足手纏いか……)……分かりました!……どうかご無事で!!」



 アレクさんの横でクレアさんが涙ぐみながら、僕の方を見つめている。

 

クレア「イースさん……!!」

アレク「クレアも早く中の方へ!!」

イース「僕は大丈夫です!!必ず食い止めます!!」


 その間にケニーさんはクレアさんに視線を向ける。


ケニー「ニンゲン……!!…………美味シソウ!!

 ジュゥゥッッルリィィッ……トクニ…………アノメスガ……トクニ…………

 …………我………………喰ライタイ!!!」


イース「……!!」


 ケニーさんは大量の涎を垂らしながらクレアさんに照準を合わせると、僕を避ける様に迂回し全速力でクレアさんの方へ駆け出した。


クレア「…………!!」

アレク「クレアぁぁっ!!」

イース「クレアさぁぁんっ!!」


 僕とハンスさんの分身さんは、クレアさんへの進路を遮る為にケニーさんの行き先へと走る。


イース「くっ……!(このままだと間に合わない!……なら……これに賭ける!!)

 ……ハアアアァァッッ!!」


 僕はケニーさんの方へ白銀の息を吐き出した。


ケニー「……!……我ノ食欲ハコンナモノデハ……トメラレヌゾオオッッ!!」


 ケニーさんは白銀の息を寸前の所で躱したかに見えた。

 しかし前脚先の方に僅かであるが、白銀の息がかかり、ケニーさんの速度が落ちる。

 すかさずハンスさんの分身さんの内一体が、ケニーさんの頭へ苦無による攻撃を繰り出す。


ケニー「ジャマヲスルナアアアアァァァッッ!!」


 ザシュゥゥッッ!!


 ケニーさんが右脚の爪による攻撃を繰り出し、ハンスさんの分身さんは消滅してしまった。

 しかし……


 

 ドシュュッッ!!

 


ケニー「ギャャァァッ!!」

 


 もう一体の分身さんがケニーさんの体に苦無を刺し込んだ。攻撃は致命傷までとはならなかったが、ケニーさんの体は確実に損傷し、更に動きが鈍くなった。

 


ケニー「……コシャクナアァァッッ!!シネエエエエェェェェッッッ!!!」

 

 ガブウウゥゥゥゥゥッッ!!


 ケニーさんは身体を回転させながら、もう一体の分身さんを噛み砕き、分身さんは消滅した。


イース「……(ハンスさんの分身さん達が…………

 ……だけどこれで……追い着いた!!)

 ……ハアアアァァァッッ!!」


 すかさず僕は右腕による打撃を、ケニーさんの頭部へ叩き込んだ。



 ドゴオオオオオオオォォォォッッッ!!!

 


ケニー「ギャアアアァァァッッ!!!」

 


 人型の魔物であれば防がれていた可能性があったが、四足歩行の狼型の魔物であった為、頭部への攻撃をケニーさんは防ぐ事が出来なかった。

 打撃が当たる瞬間、ケニーさんは若干後方へ飛んではいたが、僕の攻撃も確実にケニーさんに効いていた。




ケニー「グルルルルルッッッ……

 ……チイサキリュウ…………キサマ……我ノジャマヲシタナ…………イイダロウ…………マズハ…………

 ……キサマカラ喰ラッテヤルウウゥゥゥッッ!!!」


イース「……!!(正直言うとまだ……怖い……でもこれで……僕に照準が向いた!)

 ……アレクさん!クレアさん!今の内に中へ!!」


アレク「イースさん!どうかご無事で!!」

クレア「イースさん……お気を付けて!!」

イース「はい!!」


 アレクさんとクレアさんは村の中の方へと避難していった。


ケニー「ガアアアアアアァァァッッ!!」


イース「……!……はぁっ!」


 ケニーさんは一直線に僕の方へ駆け込んでいき、すかさず牙による攻撃を繰り出す。

 僕は両腕を中心に剛体術を発動し、ガードを試みる。


 

 ガキイイイイイイィィィンンンッッッ!!



ケニー「ガッ……(カタイ……シカシ……我ノ捕食ノジャマヲサレタウラミ…………ハラサセテモラウ!!

 ……グルウウゥゥゥゥゥッッ!!」



 メキメキメキィィッッ!!

 


イース「ぐっ……!!」

 


 剛体術を発動した状態にも関わらず、僕の両腕は音を立てて損傷しかけていった。


イース「ぐっ……(痛い……このままじゃ……腕が……)」

 

ケニー「グルウウウゥゥッッ!!(カタクテ不味ソウダガ……マズハコノママウデヲ……喰ラッテヤロウゾオォッ!!)」


 両腕を塞がれている為、僕の主要攻撃手段である腕の打撃が繰り出せない。


イース「ぐぅ……(こうなったら……)

 ……ハアアアアァァァッッ!!」


 僕は自らの両腕ごとケニーさんに目掛けて、白銀の息を吐き出した。


ケニー「……グルゥゥッッ!?(……ナニ……!?……ミズカラノウデマデ……!?)」


 ケニーさんは口を離し、バックステップで距離を空けた。しかし白銀の息を直接浴びた身体の動きは、かなり鈍くなっていた。


イース「(腕が冷えて力が出ない……だけど……)

 ……ハアアアアァァァッッ!!」


ケニー「……!!」

 

 僕はすかさず右腕による打撃を、ケニーさんの頭目掛けて繰り出した。


ケニー「(ソウナンドモオナジテハ……喰ラワン!!)」


イース「……!!」


 白銀の息は自らの攻撃も鈍くしていた。ケニーさんのサイドステップにより、僕の攻撃は紙一重という所で空を切った。

 直後、ケニーさんは左前脚の爪による攻撃を繰り出す。


 ガシュッッ!!


イース「ぐっ!!」


 幸い剛体術を発動したお陰で傷は殆どなかったが、僕はケニーさんの左爪攻撃を顔に受けてしまう。

 その攻撃が起点となり、ケニーさんの怒涛の連続攻撃が僕に見舞われる。


 ガシュッ!ガシュッ!ガシュゥゥッッ!!


イース「ぐうぅぅっっ!!」


ケニー「ギャハハハハアッッッ!!

 我ガ食欲ノウラミヲ……オモイシレエエェェッッッ!!」


 剛体術を発動していたが、僕の顔や身体は徐々に傷付いていく。それ程ケニーさんの爪は速く、強力だった。


イース「……(何とか……この状況を打開しないと……)

 ……ハァァァッッ!!」


 僕は攻撃を受ける最中、強引に右腕による打撃を繰り出す。


ケニー「(……イリョクハスサマジイガ……ナンテコトハナイタダノオソイコウゲキダ。……アノイキニフレナケレバ、我ニアタルコトハナイシロモノヨ!!)」


 ケニーさんは僕の攻撃を避け、爪による連続攻撃を続ける。僕は強引に攻撃を繰り出すが、何度も避けられては僕だけが連続攻撃を受けてしまう形となる。


 ガシュッッ!ザシュッ!ザシュゥゥッッ!!


イース「ぐうぅっっ!!」


 強力な爪の連続攻撃により、剛体術が徐々に弱まっていき、僕の周りには次第に鮮血が飛び散っていった。

 度重なる爪攻撃により、僕の身体に灼熱の痛みが次々と刻み込まれていく。


ケニー「グハハハハァ……!(ダンダントヤワラカクナッテキテルナ……モットツメデヨワラセタラ……我ノキバデ……喰ラッテヤル!!)」

 

イース「ぐううぅっっ!!(痛い……痛い……

 ……どうしよう……このままじゃ…………)」




 


 分身さん達のおかげで初撃こそ攻撃が当たったものの、ケニーさんと僕とじゃ速度差は明白だった。

 なす術がないまま僕の体は確実に損傷し、剛体術も弱まっていき、僕は徐々に窮地に陥っていくのであった……









 


            …… 第七章 第十四話へ続く




 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ