第七章 第十三話 紫黒の魔狼
side:イース
守「イース!!また後で会おう!武運を祈る!!」
イース「はい!また後で会いましょう!お気を付けて!!」
僕は守さんと再会の約束を交わし、守さんはスコットさんと対峙した。
僕はハンスさんの分身さんに乗り、ケニーさんを追跡しようとするが、スコットさんは火炎攻撃による妨害を謀る。しかし守さんがそれを食い止め、僕はそのままオーズ村へ向かったケニーさんの追跡を図る。
イース「……(ケニーさんは速かった……でもハンスさんの分身さんはもっと速い……必ず追い付ける!
…………どうか間に合います様に……!)」
焦りが募る。
刻一刻とケニーさんは村に向かって進んでいる。
もし間に合わなかったら……そんな最悪の事態が頭の中を過ぎる。
イース「…………」
間に合わなかったら村の人達全員が……
最悪の事態に陥った惨状を一瞬思い浮かべてしまう。
イース「そんな事は……あってはならない!!
必ずケニーさんを止める!!
ハンスさんの分身さん……御願いします!!」
僕はハンスさんの分身さんに思いを託し、願いを馳せる。ケニーさんの速度も尋常ではなかったが、ハンスさんの分身さんはそれ以上の速度で駆けていく。
そしてオーズ村の直前で、ようやく全速力で駆けていく黒紫色の狼型の魔物……ケニーさんの姿を捉えた。
イース「遂に……捉えた!!」
村の入口には村長のアレクさんと、村長の娘さんであるクレアさんがいた。
イース「……!!」
アレク「……あれは……イースさんと……狼!?」
ケニー「ニンゲン…………我…………スベテ……喰ライツクス!!」
ケニーさんはアレクさんやクレアさん、そしてオーズ村の村民さん達を全員食べるつもりだ。
イース「そんな事は……させません!!」
ケニー「!!」
僕はハンスさんの分身さんごと先回りをして、オーズ村の入口前でケニーさんの前に立ちはだかる。
ケニー「我ノ…………ジャマヲシヨウトイウノカ……
…………チイサキリュウ…………我ノ捕食ノ…………
……ジャマヲスルナアアアアアアァァァッッッ!!!」
ケニーさんは怒り狂い夥しい大声を上げる。
アレク「くっ……!」
クレア「あっ……!」
その夥しい声は、アレクさんとクレアさんの身体を硬直させる。二人に対して僕はすかさず声を掛ける。
イース「……!!……アレクさん!!クレアさん!!入口付近は危険です!……なるべく村の中の方へ避難して下さい!!」
アレク「イースさん!!(助太刀したいが、私では足手纏いか……)……分かりました!……どうかご無事で!!」
アレクさんの横でクレアさんが涙ぐみながら、僕の方を見つめている。
クレア「イースさん……!!」
アレク「クレアも早く中の方へ!!」
イース「僕は大丈夫です!!必ず食い止めます!!」
その間にケニーさんはクレアさんに視線を向ける。
ケニー「ニンゲン……!!…………美味シソウ!!
ジュゥゥッッルリィィッ……トクニ…………アノメスガ……トクニ…………
…………我………………喰ライタイ!!!」
イース「……!!」
ケニーさんは大量の涎を垂らしながらクレアさんに照準を合わせると、僕を避ける様に迂回し全速力でクレアさんの方へ駆け出した。
クレア「…………!!」
アレク「クレアぁぁっ!!」
イース「クレアさぁぁんっ!!」
僕とハンスさんの分身さんは、クレアさんへの進路を遮る為にケニーさんの行き先へと走る。
イース「くっ……!(このままだと間に合わない!……なら……これに賭ける!!)
……ハアアアァァッッ!!」
僕はケニーさんの方へ白銀の息を吐き出した。
ケニー「……!……我ノ食欲ハコンナモノデハ……トメラレヌゾオオッッ!!」
ケニーさんは白銀の息を寸前の所で躱したかに見えた。
しかし前脚先の方に僅かであるが、白銀の息がかかり、ケニーさんの速度が落ちる。
すかさずハンスさんの分身さんの内一体が、ケニーさんの頭へ苦無による攻撃を繰り出す。
ケニー「ジャマヲスルナアアアアァァァッッ!!」
ザシュゥゥッッ!!
ケニーさんが右脚の爪による攻撃を繰り出し、ハンスさんの分身さんは消滅してしまった。
しかし……
ドシュュッッ!!
ケニー「ギャャァァッ!!」
もう一体の分身さんがケニーさんの体に苦無を刺し込んだ。攻撃は致命傷までとはならなかったが、ケニーさんの体は確実に損傷し、更に動きが鈍くなった。
ケニー「……コシャクナアァァッッ!!シネエエエエェェェェッッッ!!!」
ガブウウゥゥゥゥゥッッ!!
ケニーさんは身体を回転させながら、もう一体の分身さんを噛み砕き、分身さんは消滅した。
イース「……(ハンスさんの分身さん達が…………
……だけどこれで……追い着いた!!)
……ハアアアァァァッッ!!」
すかさず僕は右腕による打撃を、ケニーさんの頭部へ叩き込んだ。
ドゴオオオオオオオォォォォッッッ!!!
ケニー「ギャアアアァァァッッ!!!」
人型の魔物であれば防がれていた可能性があったが、四足歩行の狼型の魔物であった為、頭部への攻撃をケニーさんは防ぐ事が出来なかった。
打撃が当たる瞬間、ケニーさんは若干後方へ飛んではいたが、僕の攻撃も確実にケニーさんに効いていた。
ケニー「グルルルルルッッッ……
……チイサキリュウ…………キサマ……我ノジャマヲシタナ…………イイダロウ…………マズハ…………
……キサマカラ喰ラッテヤルウウゥゥゥッッ!!!」
イース「……!!(正直言うとまだ……怖い……でもこれで……僕に照準が向いた!)
……アレクさん!クレアさん!今の内に中へ!!」
アレク「イースさん!どうかご無事で!!」
クレア「イースさん……お気を付けて!!」
イース「はい!!」
アレクさんとクレアさんは村の中の方へと避難していった。
ケニー「ガアアアアアアァァァッッ!!」
イース「……!……はぁっ!」
ケニーさんは一直線に僕の方へ駆け込んでいき、すかさず牙による攻撃を繰り出す。
僕は両腕を中心に剛体術を発動し、ガードを試みる。
ガキイイイイイイィィィンンンッッッ!!
ケニー「ガッ……(カタイ……シカシ……我ノ捕食ノジャマヲサレタウラミ…………ハラサセテモラウ!!
……グルウウゥゥゥゥゥッッ!!」
メキメキメキィィッッ!!
イース「ぐっ……!!」
剛体術を発動した状態にも関わらず、僕の両腕は音を立てて損傷しかけていった。
イース「ぐっ……(痛い……このままじゃ……腕が……)」
ケニー「グルウウウゥゥッッ!!(カタクテ不味ソウダガ……マズハコノママウデヲ……喰ラッテヤロウゾオォッ!!)」
両腕を塞がれている為、僕の主要攻撃手段である腕の打撃が繰り出せない。
イース「ぐぅ……(こうなったら……)
……ハアアアアァァァッッ!!」
僕は自らの両腕ごとケニーさんに目掛けて、白銀の息を吐き出した。
ケニー「……グルゥゥッッ!?(……ナニ……!?……ミズカラノウデマデ……!?)」
ケニーさんは口を離し、バックステップで距離を空けた。しかし白銀の息を直接浴びた身体の動きは、かなり鈍くなっていた。
イース「(腕が冷えて力が出ない……だけど……)
……ハアアアアァァァッッ!!」
ケニー「……!!」
僕はすかさず右腕による打撃を、ケニーさんの頭目掛けて繰り出した。
ケニー「(ソウナンドモオナジテハ……喰ラワン!!)」
イース「……!!」
白銀の息は自らの攻撃も鈍くしていた。ケニーさんのサイドステップにより、僕の攻撃は紙一重という所で空を切った。
直後、ケニーさんは左前脚の爪による攻撃を繰り出す。
ガシュッッ!!
イース「ぐっ!!」
幸い剛体術を発動したお陰で傷は殆どなかったが、僕はケニーさんの左爪攻撃を顔に受けてしまう。
その攻撃が起点となり、ケニーさんの怒涛の連続攻撃が僕に見舞われる。
ガシュッ!ガシュッ!ガシュゥゥッッ!!
イース「ぐうぅぅっっ!!」
ケニー「ギャハハハハアッッッ!!
我ガ食欲ノウラミヲ……オモイシレエエェェッッッ!!」
剛体術を発動していたが、僕の顔や身体は徐々に傷付いていく。それ程ケニーさんの爪は速く、強力だった。
イース「……(何とか……この状況を打開しないと……)
……ハァァァッッ!!」
僕は攻撃を受ける最中、強引に右腕による打撃を繰り出す。
ケニー「(……イリョクハスサマジイガ……ナンテコトハナイタダノオソイコウゲキダ。……アノイキニフレナケレバ、我ニアタルコトハナイシロモノヨ!!)」
ケニーさんは僕の攻撃を避け、爪による連続攻撃を続ける。僕は強引に攻撃を繰り出すが、何度も避けられては僕だけが連続攻撃を受けてしまう形となる。
ガシュッッ!ザシュッ!ザシュゥゥッッ!!
イース「ぐうぅっっ!!」
強力な爪の連続攻撃により、剛体術が徐々に弱まっていき、僕の周りには次第に鮮血が飛び散っていった。
度重なる爪攻撃により、僕の身体に灼熱の痛みが次々と刻み込まれていく。
ケニー「グハハハハァ……!(ダンダントヤワラカクナッテキテルナ……モットツメデヨワラセタラ……我ノキバデ……喰ラッテヤル!!)」
イース「ぐううぅっっ!!(痛い……痛い……
……どうしよう……このままじゃ…………)」
分身さん達のおかげで初撃こそ攻撃が当たったものの、ケニーさんと僕とじゃ速度差は明白だった。
なす術がないまま僕の体は確実に損傷し、剛体術も弱まっていき、僕は徐々に窮地に陥っていくのであった……
…… 第七章 第十四話へ続く




