続・同窓会3
「あっ、秦野君ポテト食べる? はい、アーン」
膝から降りた三島さんがトリップから戻って来たと思ったら、前頭に対する栗田さんの様に、俺に対して甲斐甲斐しく世話を焼いてくる。今もフライドポテトを取り、ケチャップにさっと付けアーンをしてくる。見事な手際である。せっかくなので俺は寄せられたポテトを食べる。
「今度は飲み物飲むかな?」
そう言ってコップを口元に持ってくる。
……とても甲斐甲斐しく三島さんも可愛らしいのだが、うん、大変遺憾では有るのだが……、若干めんどくさい。いや本当に申し訳ないのだけれど……。
前頭は当然の如く栗田さんの行動を受け入れているが、何も思っていないのだろうか? まぁ何も思っていない所かして当然だと思っていそうだけど……、こっちの男の横柄さは凄い物があると改めて思った……。
「ふ~ん、みんなつまらない歌を歌うから冷めて来ちゃったよ」
前頭がそう言いながらリモコンを操作しだした。
まさか行くのか! そろそろ俺の出番かなと思っていたのに先を越されてしまった!
「おおっ! 遂に来た男の子の歌声!」
「やっぱり同窓会に来て良かった……」
周りの女子達も大喜びである。
……オノレ、俺が先に賞賛を受けるはずだったのに。
しかし、前頭の歌が上手いかどうかはまだわからない、お手並み拝見と行こうじゃないか。
曲の入力が終わったらしい前頭がマイクを手に取り立ち上がった。
その時にチラリとこちらを見、フッと笑顔を浮かべてステージに向かって行った。
……なんだコラァ! まるで俺の美声を聞かせたやるから有り難く聞けみたいな態度しやがって!
俺だって自信あるんだからな!
そんな俺の心境を他所に曲が始まった。
「ふと横を~見~る~と~いつも君が~横~にいた〜」
何だと……、あの前頭がしっとりとしたバラードを歌っている……?
前頭のイメージからしてネットで見たあの男性アイドルみたいな罵倒し放題やり、やりたい放題しそうな歌を歌いそうな気がしていたのに、何真面目に歌ッてんだこの野郎!
しかも、上手い! なんて事だ! このままだと普段の横柄な態度とのギャップで前頭の株がうなぎ登りだ! ……いや、別にいいんだけどね。
女子達はみんな前頭の歌声に聞き入っている。
隣の三島さんも"すごい上手い"と呟きながら聞いている。
なんて事だ! この後歌うことになったらハードルが上がるじゃないか! 負けられない。
そして前頭の曲が終わった。
部屋中から万雷の拍手が鳴り響く、女子達は大変喜んでおり口々に”上手かった”や”最高だった”と口にしている。前頭はそれらの賞賛を当然だという顔で受け取っており、俺はコイツの自信て凄いなと心中で驚愕していた事は内緒である。
「秦野君どうだった?」
前頭が俺に感想を求めてきた。その顔は何故かウキウキしているように見える。
とは言え、ここで嘘をつく理由も無いので素直に感想を述べる。
「いや、驚いた。上手かった事もだけど、前頭がしっとりとしたバラードを歌うとは思ってもみなかった」
「良かったよそう言って貰えて! 最近こういった曲練習してるんだよねー」
「そうなんだ、前はどんなの歌ってたんだ?」
「うーん、色々だね。最近は今歌ったやつ以外にアイドルが歌ってる激しい感じのヤツも練習してるね、知ってる?」
「……ああ、アレね。うんお前には似合ってる気がするよ」
本当にな!
「そ、それで……」
ん? 何か前頭がもじもじしている。自分ノーマルだから男がそんな態度とったからってときめかないよ。
「上手かったからって事は……、その……僕も膝座って良いよね?」
その言葉を聞いた女子達がざわつきだした。
「まさか……、そんな……」
「黄金にも勝る絵が見れるの?」
「いや、本当に今日と言う日にありがとう……」
「しゃ、写真……、写真は撮って良いの!」
……こいつら全員腐っているのか? まぁ女子達の事情を考えたらわからなくも無いけど。
しかし残念! 俺は前頭に答えを返した。
「ダメに決まってんじゃん」
”え……”
俺の返答を聞いて前頭と女子の声が重なった。
俺としては、なんで男も座って良いと考えになるのかわからないが……。
静まり返った部屋を気にせずに、テーブルにのっている皿から唐揚げを一つ取り食べる。うん、美味しい。
もぐもぐと食べている俺に前頭がなおも言いつのって来る。
「そ、そんな! なんで三島は良くて僕はダメなの」
「いや、お前男だし」
「なおさら良いじゃん!」
「良くないよ!」
何を理由に良いんだよ! 俺は男の尻の感触なんか知りたくないよ!
「男の子同士の絡みは見れなかったけど、秦野君は女性の物って事だよね?」
「つまり、男の子に走らない?」
「私にも希望があると言うことか!」
「いや、アンタには無い。私こそにある」
俺の返答で女子達は別の事で盛り上がっていた。
この子達どっちにしろ喜ぶな……。なんてポジティブな子達だろう。
前頭は座れないとわかってがっくりと肩を落とし、栗田さんに慰められている。
「つ、つまり秦野君の膝に座った私は今のところ特別と言うこと……?」
等と呟いていた三島さんは、スリスリと身体を寄せてきた。
腕に三島さんの身体の柔らかさがダイレクトに伝わり、少し気恥ずかしい気がするが、まぁ許そうじゃないか!
とは言え、その柔らかさを堪能するのも終わりだ! 次は俺が歌おうじゃないか!




