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続・同窓会4

 さて、歌うと決めたものの何を歌うか……。

 前頭がしっとりとしたバラードを歌ったから、出来るだけ被らないジャンルにしたい、そして尚且つ受けが良さそうなものをチョイスしたい。


 まぁ、ここの女の子は何を歌っても喜びそうな気がするけどな!

 俺はタッチパネルリモコンを操作し歌う曲を選んで行く。そしてその中から一つの曲を選び入力する。


 さて、皆の衆お待たせしました。真打ちの登場です。ステージに向かう途中で既に女子達がキャーキャー騒いでいる。何て言えばよいのか悩む所だが、うんまぁ、なんだ……、大変に気分が良いとだけ言っておこうか。


 ステージに上がると皆は期待感で一杯になった視線をこちらに向けている。そして曲が始まる。

 軽やかな音楽が流れウキウキとした気分にさせてくれる。

 そしてその音楽は段々とテンポアップしていき軽快なメロディを紡いでいく。

 そう、俺が選んだ曲と言うのはアイドルが歌う曲だ!

 それもネットで見た男性アイドルのぶっ飛んだ様な歌では無く、前世の女性アイドルが歌う様なポップな歌である。まぁ今世では前世の女性アイドルみたいなのは全部普通の歌手扱いに成っているが……。


 今から歌う愛想を振り撒く様な曲はさぞや受けが良いだろう、心して聴くが良い!


「春に桜が~綺麗に咲いてる~、その時あな~たを見たときに~」


 この曲は桜が綺麗に咲いている入学式に一目惚れをした女の子の気持ちを歌った物らしい……、が!


「私の心はキュンキュン! ドキドキ! しちゃったの」


 この通り随所に変な擬音が入って来る曲なのだ。何故こんな曲を選んだのか自分でもわからないが今更退くわけにも行かない。


「ドキドキキュンキュンふわっ! ふわっ!」


 ”ドキドキキュンキュンふわっ! ふわっ!”


 おおっ! 部屋中から声が返って来た。これがコールアンドレスポンスってやつか。

 しかし、このクラスの子達はみんなノリノリだな……。



 そして歌も順調に進んでいき終わりを迎える。

 最後のポーズをキチンと決める! 俺は盛り上がる部屋のおかしな空気に感化されたのか最後まで気を抜くなと自分に言い聞かせていた。そして最後、歌い終えると伴奏に合わせるようにくるっと回ってビシッ! とウインクしながら横ピースを決めた。そうしてそこまでしてから思ったのだ。俺の羞恥心ってどこに行ったのだろうと……。


 そんな俺の苦悩を余所に部屋は大盛り上がりしているのを見ると、まぁ良いかと思ってしまう。

 なんせ可愛い女の子達がキャアキャアと黄色い声援を送ってくれるのだ少しは良い気分に成ってしまう。

 これは前世の記憶故だろう、しかしそれに流されずに冷静な部分が有るのは今世の記憶のおかげだろうな。

 そうして歌い終わったのでステージから降りようとしたら微かに声が聞こえてきた。


 ”……コー……”


 その声を聞き俺はピタリと足が止まってしまった。

 そして微かに聞こえていた声は次第に大きくなって行く。


 ”ア……コール”

 ”アンコール”

 ”アンコール!”

 ”アンコール!!”


 ……まさかのアンコールである。

 くそコイツ等調子にのってやがる。……のってやがるが部屋にいる誰もが期待に満ちた眼を向け来るのを見てしまうと


 ”歌ってやっても良いけど!” 


 と言う気持ちが湧いてくる。

 しょうがないのでアンコールに応えて三曲ほど連続で歌ってあげた。

 ……うん、本当にしょうがなく。


 そして俺が歌い終わってからも熱気が冷めやらず時間いっぱいまでみんなで盛り上がった。


「いやー、今日の同窓会は盛り上がったなぁ」

「うんうん、秦野君や前頭君の歌とか一杯聞けて良かったぁ」

「こんな豪華な同窓会ってそうそう無いよね!」

「私、秦野君にサイン貰っちゃった! てへっ」

「なん……、だと……」

「……私も貰ってこよう」


 何故か同窓会が終わってからサインを求められた。

 まるで自分がアイドルとかの芸能人の気分である。

 その後、みんなで写真を撮ったりして解散となり中学校の同窓会はお開きとなった。



「じゃあ秦野君また今度遊ぼうね」

「ああ」


 俺は前頭と途中まで一緒に帰った。

 そして家に戻るとやはり同窓会の出来事が思い起こされてくる。

 歌を歌って、それを聴いた人が熱狂する。なんと言うか言いようの無い昂揚感が湧き上がってきたものだ。

 もしかしてアイドルとかになっても良いのかもしれないな……。

 そう思ってしまうほどの盛り上がりだった……。




 ……って良いわけあるかぁ! なんでわざわざアイドルなんて過酷な職業に就く必要があんだよ!

 あぶないあぶない……、変な気分に乗せられて危うく過酷な労働に従事するところだった……。

 もし俺がアイドルなんかになったしまったら、朝から晩までスケジュールが一杯になってしまうだろう。

 そしてプライベートの時間など無く、ストーカーと週刊誌の記者に追われる毎日が待っている事だろう。

 なんて恐ろしい日常だ! 癒しが全く無い!

 どっちかと言うと俺は海外セレブみたいに成りたいのだ……。

 でも前世でもアイドルは社長とかと結婚していたからセレブへの第一歩みたいなものなのか?

 いや、でも、うーん。職業選択というものは大変に難しいものである……。

 そんな事を考えながら俺の同窓会の一日は過ぎ去っていった。

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