続・同窓会2
三島さんの後に違う子が今歌っているのだが……、
「フヘ、フヘへ、フヘへヘヘ……」
俺の膝に座っている三島さんが、不気味な笑いを浮かべているので歌よりもこっちが気になってしまう……。
膝に座っているので顔を見ることは出来ないが、相当に弛んだ顔をしているのだろうと容易に想像ができる。とは言え膝に座るぐらいでそんなに幸せを感じて貰えるならそれはそれで悪く無いのかも、と思ったのだが恋人では無い人の膝に座ると言うことは、今世でも前世でも恐ろしい難易度だと思い考え直した。
三島さんには是非、大きな感謝を捧げて欲しい物である。
横にいる前頭は俺の膝に座っている三島さんを気持ち悪い変態を見る目で見ている。
眼は口ほどに物を言うとの言葉があるが、今の前頭の眼はそれを見事に体現していると言えるだろう。
その前頭だが隣に座っている女子に自分の世話をさせている。
「ポテト食べたい」
おっと、前頭君がポテトを所望しているぞ。
その言葉を聞いた前頭の隣に座っている少女、栗田さんはいそいそとポテトを摘み前頭の口へ運んでいく。
そのポテトが運ばれてきたら前頭は口を開けポテトを入れられるのを待っている。
……俗に言うアーンである。こいつ女子には興味ありません、見たいな態度を取っていながらリア充の様な事をしやがって!
「おいしい?」
「フツー」
「そうだよね! カラオケのポテトが美味しいわけ無いよね! 普通だよね普通」
「コーラ飲みたい」
「えと、……はいどうぞ」
栗田さんは前頭の要求通り今度はコーラのコップを口元まで持って行くストローの位置を吸いやすい様に整えていた。
驚くほど会話が弾んでいないにも関わらず、栗田さんは嬉しそうに前頭の世話を焼く。
この甲斐甲斐しさ末恐ろしい物がある。前世基準で考えると女の子にわがままを言われて、しょうがないなぁと言いつつ、そのわがままを聞いてしまう男の様な物か……、そして捨てられる。
何時の世も業が深いな……。
そんな隣の二人を見物していると、部屋中から電子音が鳴り響いた。
「なにこれ!」
思わず声を出してしまった。
大音量……、と言うよりも多くの音が重なって結果として騒音になっている感じである。
「ああ大丈夫秦野君。ただのアラームだから」
俺が驚いていると一人の女の子が教えてくれる。
「アラーム? アラームってなんの?」
「えっ? そんなの当然一分経過した事を知らせるアラームだけど」
コテンと小首を傾げる女の子は不思議そうな顔をこちらに向ける。
この人何言っているんだろう、とでも言いたそうな顔である。
しかし一分? ってなんだろう?
その疑問は直ぐに解決された。
「三島、一分過ぎたから早くおりなさいな」
「そうだ、そうだー」
「私も座りたいのにー」
あぁ、一分ってそれか。って言うかみんなして時間を計っていたのか……。
なんて言うか一人だけ幸せになるのを許しはしない! と言う気迫を感じる。コイツ等地獄で蜘蛛の糸を見つけたら、醜く争いそうだな……。
指摘された三島さんは、にやけ顔を浮かべたまま膝の上から降り、そのままポスンと隣の自分の席に腰を下ろした。
「フヘへヘヘへ……」
膝から降りた三島さんだが余韻を楽しんでいるのか、まだまだ嬉しそうである。
「なんて幸せそうな顔だ……」
「それはそうだよー、男の子の膝なんて漫画の世界の出来事だよー」
「……あり得ない出来事」
「くそぅ、三島のヤツめ学校じゃクラスも同じ癖に……」
三島さんを羨む声が聞こえてくる。
「貴方も同じ学校通ってるじゃないですか」
おっ、そこに三枝さんが参戦してきた。三枝さんも同じクラスだしね。下手したら自分にも飛び火するもんね! と言うかさっきの子そう言えば学校だったな、見かけないから忘れてた。
「三枝の言うとおり、同じ学校なんだから会うことぐらい有るでしょう? こっちは学校違うから見ることすら出来ないのよ……」
「アハッ! アハハ!」
「な、なによ……、どうしたの?」
「私もね、同じ学校に通っていれば接点を持つことが出来る! とか思ってました!」
「お、おう……」
「でもそんな事なかったです! って言うか同じ学年で校舎違うってどういう事よ! 休み時間に顔を見に行くこともできやしない!」
「こ、校舎が違う……?」
女の子達が説明を求める様に三枝さんへ顔を向ける。
「あー、そうですね。うちの学校は大きいですから、クラスが離れると校舎自体が違う事もあるんですよ」
「なにそれ凄い……」
「凄い美少年が一組にいるって言う噂は聞こえてくれど、姿を拝むことすら出来ず! 知らなかったらまだ我慢できる、学校が違ったら諦められる、でもなまじ同じテリトリーでそして私は秦野君の事を知ってるから、欠乏症に掛かったわよ! 琥珀欠乏症よ!」
勝手に病気を作らないで欲しい……。
「三枝、見てなさいよクラス替えのテストで一組の座を頂くから!」
「あらあら、勇ましいですね。でも一組の生徒は絶対に今の環境を手放しませんよ」
フフフッとお互いに不敵な笑顔を浮かべている。
そう言えばクラス替えのテストって有るんだったな、まぁ結構先だったな俺は関係無いし忘れてた。
『秦野君どうだったかな!!』
俺がテストの事を考えていたら突然マイクで呼びかけられた。
見ると今までステージで歌っていた子が歌い終えたらしい。
「えっ?」
『いや、私の曲! 心に響いた? 結構自信があったんだけど』
どうやら俺の膝を狙っているらしくマイクを通してアピールをしてくるが……。
いや、うん……、何というか。
「ごめん聞いてなかった……」
『Noーーーーーー!!!』
あっ、今のは良いシャウトだった。




