酔い方
光が顔に当たる。
「……ま、まぶしい」
どうやら朝が来たらしいと目を覚ます。起き抜けの頭にちゅんちゅんと言う雀のさえずりが聞こえてくる。
カーテンを閉めていなかったらしく、朝の柔らかな日差しが部屋を明るく照らしている。
これが朝ちゅんか……と、まだハッキリと動いていない頭で考える。別にベッドには裸の女の人などいない。
寝ぼけ眼をこすりながら時計を見ると、いつも朝のランニングの為に起きている時間よりも大分遅かった。と言うよりも学校に行く時間にも遅れている……。
その事を認識すると寝ぼけていた頭がハッキリしてくる。
「やっば……!」
ベッドから跳ね起き、急いで用意をしようと動き出す。……が少し考え動きを止める。
どっちみち遅刻なんだからゆっくりと用意しようと。
アレである、もう遅刻が確定していると逆に落ち着くというヤツである。
「うーん、昨日はよく寝たなー」
俺はのびをしながら呟く。
でもおかしいな、遅刻するぐらい寝過ごしたらマリアが起こしてくれるはずなのに……。家のメイドはできる女なんだけどと思いながら、なんとはなしにスマホを見ると、理由がわかった。今日は休日だったのだ。
ああ、それは起こしこないな……。俺はそう思いながら立ち上がり窓を開けると、もう一度”う~ん”とのびをする。そしてようやく気づく。
「なんで俺制服なんだ……?」
制服で寝ていたことに。
それに加えいつもなら寝る時に必ずカーテンを閉めてから寝るはずなのに何故か開けっ放しで寝ていた。
んんっ……、と昨日のことを思い出そうとする。
………………膝から崩れ落ちる。
せめてキスにしておけよ! 顔舐めってマニアックすぎる!
俺は昨日、みのりさんにした事を思い出して打ちひしがれた。
傷ついた顔を優しく撫でるのは良い!
キスの安売りをするつもりは無いが、あの時の頑張ったみのりさんには勝利のご褒美としてキスをしても良かった……、にも拘わらず! なぜぺろぺろと顔を舐めるのか!
……みのりさんの勝利が決まったときに、追加でお米ジュースを飲んだからか? 三杯ぐらい。
うーん前世ではこんな酔い方しなかったはずなのにな……。いや違う、ジュースだから酔うはずは無いな。
まぁ、やってしまった事は仕方が無い。思い出す限りみのりさんの反応は悪くなかったからな、オッケーだろう。……オッケーなはずだ。
しかし結構飲んだはずなのに全然残って無いな、この身体は肝臓機能も良いらしい。とても喜ばしい事である。
俺はとりあえず服を着替えて、リビングに降りることにする。
「マリアお早う」
キッチンで洗い物をしていたマリアに挨拶をする。
その瞬間、ガシャン! とマリアは洗っていたお皿を落とした。
「大丈夫!?」
「は、はい……、大丈夫です。割れていませんし。その、お早うございます琥珀様……」
「う、うん」
マリアはどこか様子がおかしい。いつもならキビキビと動き、冷静冷徹と言う雰囲気で仕事をこなしているのに、今はどこかおどおどしていると言うか落ち着きが無いように感じられる。
「えっと、どうかした?」
様子がおかしいマリアに俺は質問をした。少し顔を赤くしたマリアは逆にこちらに質問をしてくる。
「こ、琥珀様は昨日の事を覚えておられないのですか……?」
「昨日……?」
昨日、家に帰ってからの事を思い出す。
……そしてまた崩れ落ちる。
「昨日、琥珀様はわた……」
「言わなくて良い、思い出したから」
「私のお尻を揉みしだきました」
「言わなくて良いって言ったのに!」
そうなのだ、昨日良い気分で学校から帰った俺は、いつもの如くマリアに迎えられたのだ。
いつもならそのまま帰宅の挨拶をして鞄を置きに自分の部屋に向かうのだが、この時は非常に気分が良かった! 俺が帰った事を知り玄関まで迎えに出てきたマリアに感謝を示したくなったのだ。
そして俺は感謝を示す為にマリアに抱きついた。
当然の事ながら、いきなり抱きつかれたマリアは固まった。
俺はマリアが固まって抵抗しないことを良いことに、背中に回した手を段々と下におろしていきお尻を揉みしだいた。
マリアはビクリと身体を震わすが何も言わない。それを良いことに俺はその後、数分間マリアのお尻を堪能するとマリアを解放し部屋に向かい、そのまま寝たのである。
今だから言える! これ感謝では無く只のセクハラだと!
「……」
何を言って良いのかわからない……、謝ればいいんだろうか?
俺がどうしようかと悩んでいたらマリアが口を開く。
「そ、その……、どうでしたか?」
「どう、とは?」
「私のお尻です……、その今までの仕事柄、固かったんじゃないかと……」
えっ? 感想言わないと駄目なの? マリアを見るとどことなく期待しているような感じがする。
朝から羞恥プレイか……、難易度高いな。しかし自分が招いたことである、自分でケリをつけなくてはいけない。
「ほ」
「ほ?」
「ほどよい感触でとても良かった……、と思うよ」
俺の感想を聞くと瞬時にマリアの顔が赤く染まり、下を向いてしまう。
……その反応は可愛いけど、アンタが聞いてきたんだからな!
しかし、お米じゅ……、いやもう良いや。お酒飲んで酔うと俺はセクハラするみたいである。気をつける様にしなければ。
「あれ、琥珀君お早う。今日は遅かったね」
俺とマリアがそんなやり取りをしていると母親が現れる。
「うん。ちょっと寝過ごしちゃっ……」
「ん? どうかした?」
急に言葉を止めた俺に不思議そうに母親は聞いてくる。
「いや、ちょっと不思議に思っていたことが解明できたと言うか」
「え、何々?」
「俺ってお母さんの子供だったんだなぁと」
俺の言葉を聞き、母親はクエスチョンマークを浮かべているが俺は理解した。
あの悪酔いの仕方は遺伝だと……。




